2005年1月号
特集
徳島産学官連携20年
顔写真

佐竹 弘 Profile
(さたけ・ひろむ)

徳島大学教授/
地域共同研究センター
リエゾンオフィス室長/
知的財産本部副本部長


まず徳島大学で、先生はどんな目的で、どのような組織をおつくりになったのでしょうか。

佐竹 徳島大学の産学官連携の目的は、まずは大学の研究、特に基礎研究の活性化・充実化です。それが達成されてはじめて新しい産学官連携ができるのではないかと思うわけです。そして大学の研究成果を社会に出すために研究推進、技術移転、知財の権利化・保護、インキュベーション、リエゾンという5つの機能を充実させなければいけなく、機能ごとに図にあるような組織をそれぞれつくりました。これらの体制づくりによって、大型の外部資金を獲得できたり、知的クラスター事業における学内の健康医療分野の研究を一本化し、COEにまで育てたり、昨年末には、県、銀行、地域企業の出資によるベンチャーファンド*が設立されたりと成果は上がっています。

図1

図1 徳島大学における産学官地域ネットワーク

5つの機能に優先順位をつけるとすればどうなりますか。

佐竹 これら5つの機能は知的創造サイクルの強化に必要なものであって、優先づけは難しいですね。重要なのは、各機能を充実させ連携し統合させて動かしていくというマネジメントです。

どんな人たちで組織は構成されていますか? 特にキーパーソンは?

佐竹 具体的には、大学は外部人材を登用したコーディネータや教官、官は四国経済産業局の方、民は地域でコーディネータ的役割を果たしてきたような地域の企業を紹介できる人ですね。各組織を構成する人たちのネットワークが先ほどの組織図となってあらわれています。

各組織のキーパーソンの多くは地域のことをよく知っている人です。例えば阿波銀行から来たコーディネータの方とか。ただ、最も核となるキーパーソンは、各組織のキーパーソンに動いてもらえるような体制をつくれる人でしょう。

図2

図2 徳島大学における産学連携活動者の役職と協力
     機関

今の阿波銀行とか、先ほどもファンドの話が出ましたが、最近、大学と銀行の包括協定が盛んですが、徳島大学ではもうとっくに銀行と連携していたわけですね。

佐竹 私は地域の産学官連携をずっとやってきましたから、今はやりの包括協定というのがよく飲み込めないのです。というのは、地域の銀行や県の関係機関とは、昔から、大学との連携は当然するべきものだと見ていたわけで、わざわざ何か規約をつくったりするレベルではないんですよ。むしろそんなことをしなければいけないようでは、本来の地域の発展のための連携が組めないのではないかと。私たちの活動基本方針は、日常的にフェース・ツー・フェースで作業をしましょうということで、それで信頼関係が構築されるわけです。この信頼関係こそが地域の産学官連携の基本であり、将来、連携を伸ばす必要条件ではないでしょうか? それがなければ、いくら良い組織をつくっても、お金をつぎ込んでも何にもならないと思います。

連携を伸ばしていく上で組織間のつながりの問題があると思うんです。日本では、組織は縦割りになりがちですが、先ほどの組織図を見ると、先生のところの組織はほとんど縦割りにはなってなく、各組織がシームレスにつながっていますね。

図3

徳島大学における事業化支援環境の整備状況

佐竹 別にこれは組織という箱を先につくったわけではなく、必要に応じて自然発生的にこうなりました。必要なときに必要な組織をつくり、目的のために動きやすい環境づくりをしています。特に重要視していることは、大学の中に入って来た人が自由に動ける環境をつくるということです。そのために、例えば外部の方に客員教授の肩書きを与えたりしています。どこの世界にも規定や縛りというものはありますが、そのなかで最大限に可能なものを実行し、動きやすい環境を整えて行くことが重要です。動きやすくなれば、いろいろな場所にマメに足を運べますし、その結果、密な人的ネットワークが構築されます。昔の考えに縛られず、情勢の変化に合わせて改革を積み重ねた結果、今はこうだということです。ただ、連携の根本部分、先ほどのフェース・ツー・フェースというのは公理みたいなもので変えていません。

だんだん 先生のコーディネータとしての熟練ぶりが理解できてきましたが、先生から見てコーディネータの熟練とはどんなものですか。

佐竹 熟練というか、コーディネータの人柄を何人か見てくると、その人の持つ雰囲気というか、人を引きつける魅力、求心力がどうも大きくコーディネート活動を左右しているようですね。同じことを言っても、イエスと言われる人もいるし、ノーと言われる人もいる。それとコーディネータは、やはり大学での研究経験や企業での実務経験のある方のほうがいいみたいです。また産学連携の世話役である私ども自身があまり表に出ないようにしています。というのは、産学連携の主役は研究者であり、企業です。研究成果が世の中で役立ってほしいと願っているだけですから。コーディネータ活動は地味で地道な活動こそが一番成功への近道だと思います。

最後に先生の本音を聞けたようです。貴重なお話をありがとうございました。

聞き手:本誌編集部

*ベンチャーファンド
徳島県は2004年12月24日付で中小企業を支援するベンチャーファンドを設立。ファンド名称は「とくしま市場創造1号投資事業有限責任組合」で、徳島県、中小企業基盤整備機構、阿波銀行、徳島銀行、四国電力等が出資。独立系ベンチャーキャピタルの日本テクノロジーベンチャーパートナーズがファンドの運用と投資先の決定を行う。事務所は徳島大学 地域共同研究センター内に開設。