2005年1月号
産学官連携事例報告
大学においてリエゾンオフィスが果たす役割

三並 高志 Profile
(みなみ・たかし)

立命館大学BKCリエゾンオフィス課長


リエゾンオフィス10年の歴史

立命館大学リエゾンオフィス*1が誕生してから、まもなく10年が経過しようとしている。びわこ・くさつキャンパス(BKC)開設を機に、1995年1月、産官学連携の窓口として「リエゾンオフィス」を設置した。リエゾンオフィスは、学部教授会から切り離した研究組織「総合理工学研究機構*2」の設置とともに、当時としては先進的な産官学連携体制の構築として社会的に注目された。教員と職員が一緒に企業などを訪問し、企業の研究ニーズに応えて研究交流に取り組んだ結果、受託研究・共同研究件数はBKC開設前と比べると10倍以上に増加した。さらに、1998年の関西TLO株式会社設立(出資)、2003年の知的財産本部設置、2004年のBKCインキュベータ*3開館など、その産官学連携活動は質・量とも大きく前進している。

しかし、大学の研究と産官学連携を取り巻く激動の環境の中で感じることは、圧倒的なパワーを持つ国立大学の躍動に対する焦りであり、私学立命館の置かれた厳しい状況に対する危機感である。ただし、その詳細は本稿の主旨から勘案して割愛し、本稿では、その環境下でリエゾンオフィスがどのような特色を出し、どのような役割を果たそうとしているかについて述べたい。

「ワンストップサービス」・「56名」・「営業スタッフ」

立命館大学リエゾンオフィスが掲げている特長の一つは「産官学連携のワンストップサービス」である。これは、シーズの発掘から権利化や広報活動、そのシーズを活かした共同研究や技術移転、また研究プロジェクトの企画・申請から採択後の運営、さらに大学発ベンチャー支援まで、どの種類の要望に対しても応える体制を整えつつあるということである。科学研究費補助金(科研費*4)の申請や21世紀COEプログラムの事務局までリエゾンオフィスでやっているというと、驚かれる大学関係者は結構多い。例えば「琵琶湖のブルーギル*5、ブラックバス*6を微生物で分解し、植物活性剤を作る」プロジェクトは、地元企業との共同研究から、特許出願と技術移転、インキュベータ入居などを通じ、リエゾンオフィスで一貫した支援を実施し事業化にこぎつけた一例であり、ワンストップサービスの効果であると思う。

こうした体制を構築するためには、スタッフを充実させる必要がある。2001年度にスタッフ10名程度だったBKCリエゾンオフィスは、現在アルバイトまで入れた常勤スタッフで44名の大所帯となっている。衣笠キャンパスと合わせると「56名」という、おそらく日本でも最大規模のリエゾンオフィスであろう。

さらに、BKCリエゾンオフィス44名のうち25名が広い意味での「営業スタッフ」である。毎週1回の「営業会議」でおのおのの活動状況を確認し合い、月1回はスタッフ個人別の実績を棒グラフにし、良い意味で励みにしている(「営業」という言葉は正確とは考えていないが、実態を表現する上でしっくりくるので使用している)。

産官学連携にかかわる人材育成について全国的に取り組みが活発であるが、優れたスタッフには「頭」と「心」と「足」がバランスよく必要であると思う。ただし、もし順番を付けるなら、[1]心、[2]足、[3]頭だと思う。産官学連携の現場の仕事は決してカッコイイものではなく、人と人、組織と組織の間に入って、苦しみと失敗の連続である。自分の仕事の社会的意義を認識し、大いに「やりがい」を感じ、強いモチベーションを抱いて仕事に取り組むことが、何より大事である。さらに、まず動いてみることが大事である。動いてみて初めて得られる情報や知識こそが力になり、会ってみて初めてお客様や教員と信頼関係を築くことができる。もちろん知識を体系的に学ぶことも重要であるが、実際の事例にぶつかってこそ学んだことが力になる。まだまだ教員などからスタッフの力不足を指摘されており、成長途上ではあるが、総体として着実に力を付けつつあると確信している。

大学においてリエゾンオフィスが果たす役割

大学の第3の使命として、直接的な「社会貢献」が期待されている。そういう意味でリエゾンオフィスが果たす役割は、「大学の知を社会へ移転し、社会へ貢献する」ことにほかならない。実用化された製品などの数、その経済効果や雇用効果といったことを明確にしていくことが、大学、およびリエゾンオフィスに対し、社会から期待されている。

しかし、大学においてリエゾンオフィスが果たす役割として、もう一つ重要なことがある。それはリエゾンオフィスの活動が、大学の知の質と量を向上させ、研究・教育の高度化に寄与することである。社会貢献からの適切な還元をもとに、例えばポスドクやドクターなどの若手研究者を増やすなど、効果的に研究室のパワーアップに結び付けていくことが、知的創造サイクルを実現することにつながる。産官学連携と研究・教育の高度化を円滑に連動させる要の役割を果たしていくことは、貴重な資源をリエゾンオフィスに投下している大学に対する責務である。また、そのことが、モデルケースとして他大学のお役に立つことになると信じている。

*1リエゾンオフィス
産学官連携、地域連携などを行う組織や部門のこと。

*2立命館大学総合理工学研究機構
産官学の共同研究の推進を通して科学技術の発展と地域社会に貢献することを目的として理工学部の拡充移転にあわせ1994年4月に設置。
http://www.ritsumei.ac.jp/jimu/rose/rose1.html

*3立命館大学BKCインキュベータ
(独)中小企業基盤整備機構がキャンパス内に整備した大学連携型起業家育成施設。

*4科研費(科学研究費補助金)
学術を振興するため、人文・社会科学から自然科学まであらゆる分野で、独創的・先駆的な研究を発展させることを目的とする研究助成費。

*5ブルーギル
スズキ目の淡水魚。全長25cmほどで背は緑褐色で腹部は淡い。北アメリカ原産。近年、湖沼に移入され、釣りの対象魚として知られる。

*6ブラックバス
スズキ目サンフィッシュ科の淡水魚。全長50cmほどで体に暗色斑がある。北アメリカの原産で、1925年に箱根芦ノ湖に釣り魚として移入された。在来の魚などを貪食し害魚とされる。