2005年2月号
巻頭言
顔写真

湯本 長伯 Profile
(ゆもと・ながのり)

九州大学産学連携センター教授
産学連携学会会長



このたびは、産学官連携ジャーナルの創刊おめでとうございます。特にオンラインジャーナルという新しい形で創刊されることに、大きな期待を抱きます。またジャーナルというものは、大きな情報発信をしていくものであるとともに、その背後には必ず情報収集の仕組みが存在します。読まれれば読まれるほど情報は集まりやすくなり、また集めた情報を一貫した視点と基準で選び取り、より情報集合の価値を高めて発信することでさらに読まれる、そのような関係があると思います。その視点と基準を体現する、個人の優れたジャーナリスト感覚に負うところも大きいのが普通でしょうが、オンラインであることにより、優れた個人の感覚を多数の読者の声が代替する、そうした新しいジャーナリズムのあり方さえも期待しています。これはデータベースが、かつて情報検索システムと呼ばれていましたが、Data Storage and Retrieval System であったように、情報の蓄積と活用の二面性をあらわしており、示唆的であると思っています。この創刊の意義と、役割の大きさを強調しておきたいと思います。

私たちは2003年3月に『産学連携学会』を設立しましたが、その第一のきっかけが「産学連携の(相互)連携」確立でした。産学官連携ジャーナルの創刊は、電子情報の有効性とあいまって、このカテゴリーのウェブサイトにおいて、ポータルサイト*1になってくれる可能性を感じますし、ここにさまざまな情報が電子的に蓄積されていくことで、これ自体が産学官連携に関する基幹データベースになっていく期待を持ちます。私たちの学会は先の設立以来、札幌・福岡と2回の全国大会を開催し、さまざまな情報共有を形にしました。また、第1号の論文集を発刊するとともに、第1回の学術シンポジウムにおいて学会としての学術活動を世に問いました。学会内外からのさまざまなご意見をいただきながら、より良い学会活動を維持し続け、そして産学連携の知的要として連携の連携を形にしていく決意です。

これらの活動の成果は、自ら社会に向けて発信していく責務がありますが、私たちの学会はより広い社会共有を目指し、科学技術振興機構(JST)のJ-STAGE*2という仕組みを選択しています。個別にデータベースを作るよりも、大きな社会共有が可能と信じるからです。JSTも社会的インフラ提供という役割を意識されており、この際は黒子に徹することで逆に大きな役割を果たされることと思います。このオンラインジャーナルが、編集のプロセスもさらに洗練させながら、さまざまな情報共有を広げていくことで進化すると、情報共有のプロセスデザインから実行までの、真のプラットフォームに成長していくと思え、強く期待します。

これだけの期待が空振りしたときのショックは大きいでしょうし、また日本の産学官連携にとっても同様でしょうから、是非とも成功させるよう、心からお願いし、また期待致します。

*1ポータルサイト
ユーザーがインターネットを利用する際に、入り口として利用するWebサイトのこと。検索エンジンやリンク集などの機能を備え、ユーザーが必要とする機能を無料で提供することでサイト利用者数を増やし、広告などで収入を得たりする。

*2J-STAGE
科学技術振興機構(JST)が構築した「科学技術情報発信・流通総合システム」。学会誌、論文誌の発行を電子化し、インターネット上で公開していくシステム。
http://info.jstage.jst.go.jp/