2005年2月号
連載  - 実録・産学官連携
独立行政法人産業技術総合研究所の技術移転(1)
顔写真

石丸 公生 Profile
(いしまる・きみお)

産総研イノベーションズ代表




はじめに

2001年4月1日、独立行政法人産業技術総合研究所*1(産総研)は、日本全国に配置されている旧通産省工業技術院傘下の15の国立研究所および計量教習所*2を統合して、日本で最も大きな研究機関として発足した。 この産総研のミッションとして、「研究開発の実施」とともに、「成果の普及」が明示されている(表1)独立行政法人産業技術総合研究所の基本方針)。したがって、「産学官連携」によって、「質の高い研究開発を実施」し、その「成果を普及」させ、「技術移転」と「ベンチャー創出」を成功させることにより、産業技術の向上を図って経済と産業の発展に寄与することが、新しい産総研に特に求められているわけである。

このため、産総研内に産学官連携部門を設置し、共同研究をはじめとする産学官の連携を強化している。また、産学官連携部門内に、知的財産部を設置し(2004年7月に、産学官連携部門から独立し、知的財産部門となる)、研究開発の成果を特許などの知的財産(知財)として戦略的に取得する体制を整備した。

同時に、産総研の知財を広く積極的に技術移転するため、(財)日本産業技術振興協会内に、2001年4月1日、独立部隊の「産総研イノベーションズ」が設立され、2001年4月13日に、日本で初めて技術移転機関(TLO)の認定を取得した。

以上のような、産学官連携部門、知的財産部門の強化と産総研イノベーションズの設立により、企業との共同研究件数は、工業技術院最後の2000年の972件に対し、2001年1,131件、2002年1,577件、2003年1,829件と大幅に増加している。

特許出願件数も、2000年の1,022件から、2001年1,070件、2002年1,406件、2003年1,526件と増加している。

また、技術移転の成果である技術料収入と契約件数は大幅に増加し、2000年の4800万円(149件)から、2001年は対前年3倍の1億4400万円(187件)、2002年は3億700万円(296件)、2003年は4億100万円(394件)となっている。

本稿では、まず、産総研の概要を述べ、次に、工業技術院時代と独法化後の産総研の産学官連携と知財管理の仕組みの相違点を述べる。

さらに、次稿では、産総研のTLOである産総研イノベーションズの概要を述べるとともに、技術移転の仕組みについて述べる。

産総研の概要と産学官連携部門、知的財産部門

表2(人員、予算、施設)に、産総研の概要を示す。総人員5,400名、年間予算900億円の研究機関であり、分野ごとに約60の研究ユニットからなっている。

研究員の分野別の構成は、表3(研究分野別の職員構成)に示す。ライフサイエンス、情報通信、環境・エネルギー分野の研究員も、材料出身が多く、材料関連の研究者は70%を占めている。

工業技術院時代の1985~2001年の公開特許約8,000件の分野別の内訳を表4(1985年~2001年の産総研出願の分野別公開特許)に示す。エネルギー分野が最も多く、23%を占めている。産総研になった2001年以降の約4,000件の出願特許の内訳を表5(2001年度以降の産総研特許の分野別出願件数)に示す。ナノテク・材料・製造関連が32%と最も多く、最近の研究の傾向を反映している。

表6  産総研における産学官連携の組織と運営

表6

表7

表8

産学官連携については、つくばセンター内に産学官連携部門を設置し(人員70名)、産学官連携コーディネータを中心として、共同研究をはじめとする産学官の連携を強化している。また、北海道から九州までの各地域センターにも、産学官連携センターとコーディネータを配置し、地域の大学・工業技術センターや企業との連携を密にしている(人員110名)。表6(産総研における産学官連携の組織と運営)に、産総研における産学官連携の組織と運営を示し、表7(産学官連携コーディネータ)に、産学官連携コーディネータの業務内容を示す。

知的財産部門については、2001年4月、産学官連携部門内に知的財産部として発足した。工業技術院時代は、10数名の特許管理課であったが、産総研の知的財産部は、内部弁理士15名を含めて50名に増強され、さらに、2004年7月、産学官連携部門から独立して知的財産部門に昇格し、企画室、管理室に加えて、高度化支援室が新設され、戦略的特許出願のための研究ユニットとの連携が強化されている。

また、知的財産部門内に2名のコーディネータ(将来は分野ごとに増強する予定)と3名の総括主幹を置いて、TLOと各研究ユニット間の連携業務を行って、「売れる特許」や「新技術の発掘」を行っている。

各研究ユニットには、副ユニット長クラスの知財・技術移転担当者を置き(約60名)、研究ユニット内の知財と技術移転の管理とサポート業務を行っている。

産学官連携と知的財産関連の新しい施策
表9


表1 0  独立行政法人化に伴う制度の主な変更点

表10

2001年6月27日、産総研は「パテントポリシー(特許戦略)」(表8)と「技術移転ポリシー」(表9)を発表した。

そして、表10(独立行政法人化に伴う制度の主な変更点)に示すように、制度の大幅な変更を行った。その基本的考え方は、

[1] 知的財産の機関帰属
[2] 発明者への補償の充実
[3] ベンチャー支援
[4] 共同研究の推進と成果の活用拡大
[5] 技術移転の促進
[6] 受託研究の拡大

である。

特に、産総研の研究から生まれた知的財産をすべて機関所有としたのは、産総研として特許取得を戦略的に行うためであり、技術移転を希望する企業にとっても、特許出願人に複数の研究者が入るよりも産総研一本の方が望ましいからである。


以下、次稿で、産総研の技術移転について述べる。

*1(独)産業技術総合研究所
http://www.aist.go.jp/

*2計量教習所
現在の産総研計量研修センター。昭和27年に設立され度量衡技術者講習の制定による計量に関する知識と技術を教える日本唯一の専門機関。http://www.nmij.jp/metroltrain/