2005年3月号
連載  - 実録・産学官連携
独立行政法人産業技術総合研究所の技術移転(2)
顔写真

石丸 公生 Profile
(いしまる・きみお)

産総研イノベーションズ代表




1. 産総研イノベーションズの組織

産総研イノベーションズは、2001年4月1日に、(財)日本産業技術振興協会内に、独立部隊として設立され、2001年4月13日に、産業技術総合研究所(産総研)の技術移転機関として日本で初めて技術移転機関(TLO)の認定を取得した(現在、活動している大学等のTLOは承認TLOという)。

表1に、産総研イノベーションズの組織図を示す。

開発部門、ライセンス部門、業務部門からなっており、要員は、民間企業への技術移転を促進するため、民間企業出身者を主体としている。

初年度の2001年度は、11名で発足した。内訳は、日本テクノマート(現、発明協会)から派遣された特許流通アドバイザー(産総研出身者)1名、民間企業出身のライセンス部門とマーケティング担当の開発部門に6名、業務部門に4名となっている。

また、産総研の研究者と産総研イノベーションズとの連絡を密にするために、産総研知的財産部門内に、TLO担当の総括主幹を3名配置した。

ライセンス部門には、民間企業で知的財産業務を30年以上経験した専門家を採用しており、マーケティング業務を行う開発部門には、民間企業の研究企画部門の経験者、新規事業部門の経験者、事業部門の開発経験者を採用している(研究所のみの経験者は採用していない)。

産総研の外部に、TLOである産総研イノベーションズを設置したのは、このように、民間から広く専門家を登用するためであり、また、1年契約、年俸制という成果主義のシビアな人事制度を採用するためである。

現在の産総研イノベーションズの陣容は、ライセンス部門4名、開発部門11名、業務部門5名の総勢20名となっている。また、2004年7月、産総研の知的財産部門内に、知的財産高度化支援室が設置され(15名)、戦略的特許出願のための研究ユニットとの連携が強化されるとともに、産総研イノベーションズとの連携も強化されている。

ドイツのMax Planck研究所の技術移転機関も15名程度であり、Max Planck研究所出身者と民間企業出身者の混合部隊となっている。

また、Fraunhofer研究所の技術移転機関は60名であるが、法律専門家も内部に抱えており、ビジネス出身者が主体となっている。

2. 産総研イノベーションズの事業内容

図1に、産総研と産総研イノベーションズにおける技術移転の流れを示すが、関連したものを含め、次の業務を行っている。

(1)技術移転事業

産総研イノベーションズは、産総研とエクスクルーシブの委託契約を締結し、特許権等の知的財産権について専用実施権の設定を受け、または、譲渡を受けて、マーケティングにより、ライセンス業務を行う。

(2)特許・ノウハウ等の有償開放事業

産総研が保有するすべての知的財産権について、試料提供契約、情報開示契約等の有償開放業務を行う。

(3)共同研究・受託研究等のサポートと技術移転のための追加研究

産総研イノベーションズは、産総研の産学官連携部門、知的財産部門や約60ある分野ごとの研究ユニットとの情報交換を緊密に行って、共同研究・受託研究等のサポートと仲介を行う。

特に、最大の特徴は、後述するように、技術移転のための追加研究の予算を確保したことである。国の研究機関が開発した技術が、そのまま企業に売れることはまれであり、通常、企業のニーズにあった追加研究を行って、企業が評価するに必要なデータやサンプルを取得する必要がある。このような追加研究予算を呼び水として、企業との共同研究により、さらなる応用研究を行うことが、技術移転を成功に導く鍵である。

(4)特許調査、市場調査及びコンサルティング業務

産総研の研究者が行う先行特許調査、特許マップ作成等の特許調査業務のサポートを行うと同時に、市場調査業務を行う。

また、これらの業務のコンサルティングサービスを行う。

3. 産総研と産総研イノベーションズの関係

(1)産総研イノベーションズは、産総研との間に技術移転業務の委託契約を結び、産総研からの実施指示書により、委託業務を行っている。

特許取得、共同研究から技術移転のライセンス業務までの産総研と産総研イノベーションズの業務分担は次の通りである。

特許取得業務、共同研究契約業務→産総研
秘密保持契約業務→産総研、産総研イノベーションズ
試料提供契約業務→産総研イノベーションズ(条件交渉は、産総研)
情報開示契約業務→産総研イノベーションズ
オプション契約業務→産総研イノベーションズ
ライセンス契約業務→産総研イノベーションズ

研究開発や特許取得に関する業務は、産総研の役割であり、技術移転に関連した業務は、産総研イノベーションズの役割である。

(2)産総研と密接な関係を維持するため、産総研イノベーションズの代表は産総研参与、副代表は産総研顧問を兼務している。

(3)産総研の約60のすべての研究ユニットに、副ユニット長クラスの特許・技術移転担当者を置いている。

また、知的財産部門に、15名の知財高度化支援室を設置して、研究ユニット(研究者)、知的財産部門、産総研イノベーションズ間の連携をはかっている。

4. 産総研の技術移転関連予算

産総研イノベーションズが関与する産総研の技術移転関連予算制度として「特許実用化共同研究制度」がある。これは産総研の特許(出願中の特許を含む)の実用化に当たり、企業のニーズにあったデータやサンプルの取得、パイロットプラントによる開発研究に対して企業と折半で共同研究を行う制度で、研究費総額は、700百万円/年、件数は20~25件/年。そのうち産総研は、人件費を除いて350百万円/年を負担し、企業は人件費込みで350百万円/年の負担となっている。

同じような技術移転のための企業との共同研究制度として、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「大学発事業創出実用化研究開発事業」がある。これは、大学や国研の技術をもとに、新規事業を創出することを目的とした企業との共同研究を3年間補助する制度である。全研究費のうち、1/3が企業の負担で、NEDOから2/3の補助金が出る。2003年度、産総研イノベーションズは、3件採択され、研究費総額249百万円、うち企業負担は84百万円となっている。2004年度は1件終了して2件となり、研究費総額98百万円、うち企業負担は33百万円となっている。

以上のほか、産総研と中小企業の共同研究を奨励する制度として、「地域中小企業支援型研究開発制度」があり、共同研究型と技術シーズ持込み評価型の2種類がある。2004年度は、両方で40件、研究費総額569百万円となっている。

5. おわりに

2回にわたって述べてきたように、産総研では、「成果の普及」をより推進するため、産学官連携部門の強化、知的財産部門の拡充、認定TLOである産総研イノベーションズの設立とともに、「パテントポリシー」と「技術移転ポリシー」を策定した。

また、予算面でも、「特許実用化共同研究制度」等の助成制度を設けて、技術移転を推進し、新事業・新製品の創造に繋げる施策を実行している。

企業の方々へのお願いであるが、研究開発の効率化のために、是非とも、産総研の研究開発成果を積極的に活用していただきたい。

お問い合わせ先:産総研イノベーションズ
〒305-8568 茨城県つくば市梅園1-1-1
産総研つくば中央第2事務所情報技術共同研究棟7F
産総研イノベーションズ業務部門
TEL 029-861-9232 FAX 029-862-6159
E-mail aist-innovations@m.aist.go.jp
URL http://unit.aist.go.jp/intelprop/tlo/index.htm