2005年3月号
読者の声
産学官連携人の可能性
顔写真

宇都宮 雅人 Profile
(うつのみや・まさと)

(株)伊藤喜三郎建築研究所
設計部 係長 一級建築士



「産学官連携ジャーナル」ご創刊おめでとうございます。

産学官連携が大きな社会的な価値観となりつつある昨今、連携により実現させるさまざまなテーマの可能性とその大きさを、日々感じています。連携という言葉の響きも新鮮です。技術と知識と政策をもって世の中に新しい旋風を巻き起こすでしょう。連携をすればなしえたものごとに気づかずに、世の中が閉塞状態に陥っている可能性があります。今、連携は自然発生的に必要とされており、契約関係を超えて知恵を出し合い、新たな課題を提示、発見し解決を図るというコミュニケーションの新しい形です。連携の方法を模索する前に、ひとりで考える能率の悪さを「産学官連携」でブレイクスルーする機運が現在の状況と考えれば、それぞれの思考の中で解決策が実行不可能な空想に至ったときに、連携が問題解決の突破口になります。諦めずにいた夢を連携により実現する機が熟しています。課題として認知しながら解決されずにいることがらの中にも、連携の哲学で突破できるものがあります。

写真1

青梅市立総合病院の屋上庭園「癒しのこみち」
     です。訪れる人たちの五感に働きかけ、自然治
     癒力を呼び起こすセンサリーガーデンです。奥
     多摩の山々を借景とし、多摩川の渓流の水面が
     重なる曲線をデザインしました。リハビリテー
     ションの歩行ができるように、柔らかい青梅杉
     の間伐材の木片チップを敷き詰めています。

また「向こう三軒両隣」と産学官をみたててみて、隣人として住まう地域や分野によって多少の環境の違いはあるとしても、連携をしてやってみたらよいことなどいくつもありました。隣人としての結びつきをネットワーク化し広げ、「産学官連携」として行うニーズに応えるプラットフォームの思考を広く設定するのが重要だと感じています。

個人のレベルは自然人のレベルとして捉え、知識や技術、政策の実現のために新たに産学官連携人として活躍できる可能性があります。「向こう三軒両隣」の人が何処に住んでいるのかは定かではありません。しかし、市民とは何かという問いの明確な答えは未だ見つけられずにいる中で、市役所の仕事をすると「市民」の思考になり、県政の仕事では「県民」、国政の仕事では「国民」、国際協力の仕事では「国際人」であるのを自ら肌で感じ、それぞれの思考や方針と調和して仕事をしたり生活したりしています。したがって連携の場に集う人達は「産学官連携人」の可能性が十分にあります。それは同時に市民であり県民、国民、国際人ですし、自由人です。

写真2

草花には心を癒される色のとりあい、香り、風に
     なびき音を感じるもの、味覚として結実のあるも
     の、触覚を感じる形などを集め、ヒーリング効果
     を醸し出しています。椰子の実繊維でつくったミ
     ニビオトープやバラ園もあり、自然環境との共生
     が病院に漲ります。人工軽量土壌、灌水設備技
     術等とも連携をしています。

私は建築の研究と設計を生業としています。専門は医療福祉施設ですが、病院建築の設計をしています。市民病院、県立病院、国立病院、国際協力による病院があり、また民間病院もありますが、これらがすべて地域医療連携を構築し21世紀の健康な医療福祉施設を目標としています。

目的は健康な社会の実現となります。すなわち疾病管理(シックケア)だけではなく健康管理(ヘルスケア)を取り込み、病気になる前に健康でありつづける生活、つまり予病を視野に取り入れだしています。

ところで、予病の分野は東洋医学では日常であり、日本では生活のゆとりの部分として選択され続けています。したがって目標と目的を定めて、新たな連携を探求し続けることも重要だと感じています。

現在、大学病院の医療改革の最前線にいる方々による医療チームと設計チームの連携により、新しい健康によい医療施設の設計に取り組んでいます。連携による医療倫理と看護倫理、さらに建築倫理の融合で、ソフトとしての医療と経営の両立に加えて、ハードとしての病院建築を調和させる設計をしています。医療情報システム技術の開発と実践で結びつきは縦横無尽にできる可能性があります。また長期間に及ぶ病院建設プロジェクトが、健康への意志と病の人を救おうという意欲により、自然発生による連携を生み、次のステージである建設工事の大勢のコミュニケーションを通じて、完成後の病院運営にバトンタッチされてゆきます。

契約関係や仕事の流れを超えて、偶然にでも出会った人々が、新しい健康社会へとその絆をより強く結束させたいと思索するのは、地域の医療連携にも欠かせないものです。「向こう三軒両隣」の井戸端会議を発端として知識や技術、政策の連携がさまざまな場の議論を活性化させ、実りあるものになり、ブレイクスルーを数多く実現し、連携というコミュニケーションがさまざまなレベルで新しい価値として定着するのを目標としたいと思います。

また、健康に良い病院建築の試みが、周辺環境に影響しますので、病院内外にわたり環境倫理のある豊かな都市、農村を創りだすようになります。地球環境と健康管理の視点を取り入れ、自然との共生を身近なものに感じさせる持続可能な社会とその連携を、新しい活力として発展させる試みを始めています。