2005年4月増刊号
「JST科学技術環境シンポジウム」(2005.2.4開催)レポート
 - 法人化10ヶ月を経て -国立大学はどう変わろうとしているのか?
午前の部

パネリスト:遠山 敦子 Profile
(とおやま・あつこ)

元文部科学大臣

パネリスト:尾池 和夫 Profile
(おいけ・かずお)

京都大学総長

パネリスト:鳥居 宏次 Profile
(とりい・こうじ)

奈良先端科学技術大学院大学学長

パネリスト:宮原 秀夫 Profile
(みやはら・ひでお)

大阪大学総長

パネリスト:徳永 保 Profile
(とくなが・たもつ)

文部科学省大臣官房審議官

司 会:北澤 宏一 Profile
(きたざわ・こういち)

(独)科学技術振興機構 理事


★主催者挨拶★ (独)科学技術振興機構
理事長 沖村 憲樹

 本日は皆さまお忙しいところ、このシンポジウムにご出席いただきましてありがとうございます。今日は、私たちの評価委員長を務めて下さった熊谷先生にもお越しいただいていますが、皆さまには当機構のいろいろな事業全般にわたり、日ごろからご協力いただき、心より御礼申し上げます。また本日は元文科大臣遠山敦子先生、京都大学総長の尾池先生、奈良先端科学技術大学院大学長の鳥居先生、阪大総長の宮原先生、文科省の徳永審議官にお忙しいところをお越しいただきまして、心より御礼申しあげます。

写真2

沖村 憲樹 氏

 今年1月に新春の賀詞交換会を行いましたが、冒頭の挨拶で、IMDの評価によりますと、日本の大学の評価は問題があると私が申し上げましたところ、その後ご講演いただいた有馬先生から厳しいご叱正を受けました。IMDの評価は問題であると。それから日本の大学の評価を低く評価している「ゴーマン・レポート」というものがありますが、ゴーマン・レポートは非常にごう慢であるともおっしゃいました。有馬先生は、日本の大学は頑張っているという評価でした。

 確かにこれまで日本の大学は今日の繁栄を築いた礎でありまして、関係者の皆さまは大変なご努力だったと思います。しかし一方において、研究、教育、運営システム、あるいは産学連携、いろいろな面で多くの問題を含んでいることも多くの方が指摘しているところではないかと思います。そこで国立大学法人化に遠山元文部大臣が大変ご努力されて踏み切ったわけです。それから10ヶ月経ち、多分いろいろな面で問題が出てきて戸惑ってらっしゃるし、なかなかうまく行かない面も多くあるのではないかと思っています。

 この法人化は私たちの仕事にも大きな影響があり、昨年4月の法人化に伴いまして、私たちのビジネスモデルもまったく変更しました。産学連携の面では、私たちは年間2,000件ぐらい、大学の先生の特許を一緒になって出してきて、技術移転を図ってきましたが、それは全部取りやめにして、むしろ大学とTLOが特許を取ることをサポートするように仕事を変えています。また、その出願をサポートすると同時にその実用化につきましてもサポートをする。そのため、文科省から私たちは全国の大学の技術支援センターという位置付けをいただき、そのような面で大学、TLOをサポートしていきたいと考えています。また基礎研究につきましては、従来は直接研究をやっていたわけですが、私たちの一番大きなプログラムCRESTにつきましては大学に委託して間接経費を差し上げて、大学の運営の強化に資するという方向に踏み切っています。今後ともJSTは業務の全般にわたりまして、大学をサポートする、改革をサポートするという姿勢で仕事をやっていきたいと思っていますので、よろしくご協力をお願い致します。

 また、ご案内の通り17年度で第2次科学技術基本計画が終わります。結果としまして、24兆円の研究投資の目標は21兆円しか達成出来ませんでした。それから、大学の活性化の一番の資金である競争的資金は6,000億円の目標が4,600億円になりました。今後、大学の改革につきましては大学の関係者の方々は大変ご努力なさると思いますが、一方、政府におきましても第3次基本計画を今策定中ですが、この大学の改革をサポートするような内容をぜひ盛り込んでいただきたい。特に競争的資金につきましてはさらに一層の充実・強化を図っていただきたい。他にもいろいろあると思いますが、その充実・強化をぜひ第3次基本計画に盛り込んでいただきたいと思う次第でございます。

 本日は法案を作った遠山元文部大臣と現実に今大変ご苦労なさっている各先生方のご議論でございますので、必ず有意義なご議論が行われて、今後の大学改革の方向がさらに具体的に見えてくるのではないかと期待しています。今後ともはJSTの業務全般に渡りまして、ご指導ご鞭撻をいただきますようにお願い申し上げまして、私のご挨拶とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

★パネル討論★
国立大学法人とは何か

北澤  皆さま大勢、今日はお集まりいただきましてありがとうございます。

 国立大学が昨年4月1日に法人化されましたが、法人化10ヶ月を経て、どのように変わってきたか。あるいは今変わろうとしているか。その問題点はどこにあるのか。法人化が日本の大学のイメージをどのように変えていくのか。特にその中で国立大学はどのような大学になっていくのか。そのようなことを占うという形で、今回シンポジウムをやらせていただきたいと思います。

 早速ですが、法人化は一体どういうことを意味しているのか。皆さまの中にはまだよくご存じではない方もいらっしゃるかと思いますので、そこのところの知識を整えておきたいと思います。

 国立大学の法人化は、必ずしも前から法人化しようとする動きがステディーにあったわけではありません。紆余曲折の中で法人化が決まっていったという経緯がございます。特に今から数年前、産業界から国立大学に対していろいろな批判がございました。ここに当時、どのような批判があったのかを、特に経団連などから国立大学に浴びせられていた批判を記してみました。そして、社会の目あるいはマスメディアの目にも非常に厳しいものがあったかと思いますが、そのようなものに対して国立大学がどう応えるかが今回の法人化であったと思います。

では、国立大学法人とは何でしょうか。非常に単純明快に申し上げますと、国立大学はこれまでは教育・研究活動に対してすべて文科省に委ねて、文科省に「こうして下さい、ああして下さい」と言って、それがうまく出来ないときには文科省に文句を言っていればよかった立場にあったものが、これからは自由度を与えられて、その代わり財政的な自律性と自己責任が与えられたのだと言われています。これが最も単純な解釈ですが、後で遠山さんからお話をいただけると思いますが、実際の法人化が起こるときに、現在の国立大学法人の姿がしっかりと固まったのは、2001年6月の「遠山プラン」であったと言われています。そのような関係から本日、遠山元大臣にもご出席いただいているわけです。

実際に法律として決められた国立大学法人はどのような法人なのかを簡単にご紹介致します。

まず、法人化前の国立大学と法人化後の国立大学とは何が違うかです。設置者はいずれも国ですが、国立大学法人は国から独立した法人格を有すると規定されており、国の関与は、大学が作った中期目標の原案を文科大臣が認可するという形でなされます。それに従って、国立大学法人は経営をしていくわけですが、学長の権限と裁量を大幅に拡充して、それまでは国がほとんどすべてのことを決めていたものを、今度は国立大学の学長が決めて構わないとなったわけです。例えば人事においては、教員などの任免権、あるいは給与をいくらにするかも学長に裁量権が与えられました。それから財務におきましては、国立大学には国から渡し切りの運営費交付金が渡されて、そのお金をどのように使うかは国立大学の自由と決まったわけです。年度の繰り越しも可能になりました。ただし、そのお金の最終的な帳尻をどのようにつけられるかは大学の責任になりました。それから国立大学の内部組織も原則として各大学の裁量で決められるようになりました。つまり、学部レベル以上の変更を行うときには国の許可を必要としますが、学科レベル以下であれば、大学で決めて構わないことになりました。

それから、よく世間では独立行政法人と国立大学法人が間違えられていることがありますが、簡単に申しますと、独立行政法人と国立大学法人の差は、国が何か計画をして、それを実施するときに、その実施部分を独立させて行った方がよい場合に独立行政法人が出来るわけですが、大学は教育・研究というものを抱えているということで、その教育・研究の計画の部分から大学が行うという点が独立行政法人と異なっていることがまず一番目です。その差として、独立行政法人と国立大学法人とでは、例えば長の任命・解任の仕方が違います。国立大学法人では、大学の学長選考会議の申し出によって大臣が学長を決めますし、独立行政法人の長は担当大臣が自らの裁量によって決めるといった点がまず違います。それから中期目標につきましては、独立行政法人の場合には中期目標は国から与えられますが、国立大学法人の場合には中期目標を大学が立てて、原案として提出して、それに基づいて文科大臣が決めることになっています。評価においても、国立大学法人の場合には文科省の評価委員会と総務省の評価委員会によって評価が行われます。

国立大学法人化の背景と「遠山プラン」

北澤  それでは早速ですが、すでにインターネットで質問を受け付け済みですが、遠山元文部科学大臣への質問として、遠山大臣は、国立大学の法人化が実際に成功されていく元となった「遠山プラン」を発表され、現在の国立大学法人の元の形を作られた方と言われています。そこで遠山元大臣から、当時のことも思い返していただきながら、どのような思いを法人化の中に盛り込んでおられたかという観点から、最初にお話しいただきたいと思います。それでは遠山元大臣、お願い致します。

写真3

遠山 敦子 氏

遠山  今日のシンポジウムは、国立大学法人化して10ヶ月経った今日、日本の国立大学は本当に変わりつつあるのか。またこれからどうなるのかをテーマとする大変時宜を得たものであろうかと思います。

 さて、只今いただいたご質問に答えるべきかと思いますが、私としては冒頭にあたって発言の機会を与えられましたので、具体的な法人化にかかわるさまざまな問題を論ずる前に、どのような背景で、今日このような法人化が採り上げられ、実現されたかを少しお話しておきたいと思います。3つございます。

 1つは、実は国立大学法人化は世紀の大改革と言われています。確かに帝国大学が出来てから1世紀以上が経ちましたが、設置形態の変更、改革はこれまでありませんでした。その意味で世紀の大改革と言われていると思いますが、これは国立大学法人化だけに焦点を当てたのではなくて、私としては「20世紀型の教育の在り方から21世紀型の教育へ」ということで初等・中等をはじめとして小学校から大学に至るまで大きな教育改革を念頭に置いて行いました。さまざまな教育改革の中の大きな1つの柱が国立大学の法人化だったわけです。

 当時いろいろな形で初等・中等教育あるいは大学の在り方について国民からの不満、不安なり、良く言えば期待が充満していました。他方で、構造改革内閣ということで登場した小泉内閣でしたから、例えば規制改革、行政改革、民営化、地方分権、特区などのさまざまな改革の視点から、日本の教育はかくあるべし、日本の学校はこうあるべし、国立大学は民営化すべしなどの議論が出ました。そのような中で20世紀型の日本の社会構造のままでは21世紀の日本がしっかりと地歩を固めて世界の中で存在していくのは難しいと考えていましたので、私としては出来るだけ柔軟に対応しながらも、教育・研究という単に効率や合理化では論じられない分野について改革要求には応えなければならないと考えました。そのようなことから、大学についても先程、北澤理事からご紹介があったようなさまざまな不満に対しても応えていく必要があると。そのような中で大学の本来の機能を存分に発揮していただくためにどうあったらよいかを基底に考えた上で、国立大学民営化などの議論に応えるために、民営化ではなく、国立大学法人という方向でこの問題に対応すべきだと思いました。これは「遠山プラン」などと言われておりますが、そのときに思いついてやったことではまったくございません。

 実は日本の帝国大学や国立大学は、旧文部省あるいは文部科学省という行政組織一部のような存在でした。国の機関ですから、人事も組織の在り方についても国家公務員としてのさまざまな制約、あるいは国の予算を使うことに伴うさまざまな制約がありました。そのような制約の中に大学が置かれていることは世界の中ではありませんでした。皆さん、少し世界に目を広げていただきたいと思いますが、例えば米国は私学も多いのですが、実は学生の7割が州立大学で学んでいまして、州立大学は公費を投入されているけれども、きちんと法人格を持っています。イギリスも、オックスフォード、ケンブリッジは私学とお思いかもしれませんが、イギリスの大学はほとんど、国王からのチャータリングによって設立された国立大学で、しかも国費を投入されています。そのほか、フランスは国立大学、ドイツは州立大学がほとんどですが、それぞれ法人格を持っています。やはり大学のような教育・研究を機能とする組織は行政組織の一部であるよりは独立した法人格を持って、自主性・自律性のもと、その本来の目的を追求するのが当然の行き方であり、諸外国はそうなっているわけです。日本もやっと21世紀の初めに、そのような形で国立大学を法人化出来て、法人格を持って自らの理念、意志で、その大学の機能を発揮してもらうように制度的に出来たわけです。

 従いまして、1つは初等・中等教育においても、20世紀型の画一と受け身型の教育から21世紀型の自律と創造へと教育改革を進めていますし、人材養成の最後の段階にある大学がしっかりしていただかないと日本の未来は開けないわけで、その意味でトータルとしての大きな教育の構造改革の中で進めたのが国立大学の法人化であり、その狙いは先程申したように大学が自律性・自主性をもって本来の機能を発揮していただくことなのです。

 21世紀の初めにたまたま思いがけず、2年5ヶ月にわたって文部科学大臣の職務を務めさせていただきましたが、国立大学の法人化だけではなくて、大学に関しては同時に他の改革も進めさせていただきました。

 1番目は国立大学の法人化などのシステム改革です。これは公立大学についても法人化できるような法改正もしていますし、私学についてもいろいろと内部のマネジメントについて、より透明性を図っていただけるようなシステム改革を致しました。

 2番目は、より大学が競争力を持って、優れた教育・研究をしていただくために予算も重点投資していこうという角度から、21世紀COEプログラム、特色ある教育の支援プログラム(GEP)など、一連の新たなファンド・システムを創設したことです。

 3番目は、日本の大学では、プロフェッショナル(実際に力を持った社会で役立つような人材)を養成することを目的にした大学院は十分に発達していなかったのですが、それに対して専門職大学院制度を創設して、大学の新たな機能として付加していただいたことです。

 4番目は、大学の第3の使命と言いますか、大学が社会に貢献していただくことが必要であるということで、産学官連携のさまざまな仕組みが出来るようにしました。また知的財産についても、知的財産本部を設けるなど、これまでにない取り組みが出来るようにしました。

 そして第5番目に、すべての大学について変化が生ずるとき、事前規制が強かったものを出来るだけ少なくして、その代わり第3者評価という事後評価でやっていこうとしました。

 このような5つの改革を一気に進めたわけです。従って国立大学の法人化の問題を考えるときに、そのようなことが起きていることを1つの追い風にして、ぜひともその本来の狙いを実現していただきたいと思います。

 特に最後に付け加えたいのが、先程、北澤理事からもご紹介がありましたが、独立行政法人ではなく、国立大学法人であると概念づけることについて本当に大変な努力があったことです。これは大臣ではなくて、当時の担当の文部科学省高等教育局の職員たちは本当に良くやってくれました。それによって初めて各省大臣が支配出来る独立行政法人ではなく、それぞれの実力が発揮出来る国立大学法人という新たな理念を持った概念で法人格を持っていただけたわけです。このことは忘れられやすいのですが、そのような努力の上に今日のシステムが出来上がったことを話しておきたいと思います。

 国立大学法人には、どうぞ頑張っていただきたいという気持ちでいっぱいです。

北澤  どうもありがとうございました。

国立大学法人の取り組み

北澤  それでは今日は、京阪奈ということで、京都大学、大阪大学、奈良先端科学技術大学の学長お三方に来ていただきましたが、最初に京都大学の尾池学長から、現在までの取り組み、あるいはこれから起こりそうなことなどについて自由に話題提供をいただきたいと思います。お願い致します。

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尾池 和夫 氏

尾池  先程の北澤さんの話の中に極端な行政依存という言葉が出てきたのですが、実は40年ほど前から私は遠山さんにお世話になっていまして、測地学審議会の関係で一所懸命予算をお願いしますと通っておりまして、その思いがまだ残っていて、まずいなと思いながら話を聞いていました。ただ、そのおかげで、この京阪奈の地質構造がずいぶん良く分かってきました。今日集まっている3つの大学は京都盆地、奈良盆地、大阪平野にあり、これは皆、活断層性の盆地・平野であることが見事に分かってきました。そのようなことを国立大学でもやってきたわけです。

 先程からキーワードとして、変わったか、変わろうとしているか、変えたい、本当に変わりつつあるのかと出てきました。何か変わらないと罪悪みたいに言われていますが、私の大学は今108年の歴史を持っていますが、なかなか変わらない面もあるし、変わる面もあります。それから変わらなければいけない面を持っていますし、変わってはいけない面もあります。このように「変わる」というキーワードをただ一つ取っただけでも、大学はいろいろな面を持っていて、それぞれの面からしっかり見ながら立体的につかんでいく。これが私たち学長としての仕事であろうと思うわけです。

 とりあえず話のきっかけをという北澤さんのご要望でしたので、私は、まず京都大学の紹介をしようと思います。

 京都大学は今、京都盆地、山城盆地に3つのキャンパスを持っています。それぞれ伝統を守ってきたキャンパス、あるいは先端で産学連携の窓口になっているキャンパス、あるいは先端研究を一所懸命やっているキャンパスなどがあります。吉田の昔からあるキャンパスでは、まず図書館がありますが、その利用の仕方は、ものすごく学生にとって利用しやすくし、最近の視聴覚機器を揃えて見やすいようにしていく一方、古い書物をしっかりと守っていく。このようなことを一緒にやっています。それから、例えば生命科学・医学の本部が、この吉田のキャンパスにありますが、そこでは先端研究をやって、先端医療で社会貢献をする。これも一つの大学の非常に大きな役割であろうと思います。このような活動をいかに経済的に支えていくかも大学の経営の一番のポイントであります。

 それから、やはり一番意識させられているのは教育でして、総長としてもいかに学生の声を聞くかに神経を使い、学生とは出来るだけ会うように心がけています。それからもう1つ、社会貢献もあります。地域との連携を深めていくということで、市民との触れ合いの場を積極的につくっていますが、これは今までなかなか京都大学が出来ていなかった点であろうかと思います。

 それから宇治の研究所ですが、研究所群の将来計画を今非常に考えていまして、人類が生存する可能性、これを主眼に研究を進めていこうとしています。この1つの大きなキーワードの元に、活動を全面的に見守っていこうということで、1つの研究所群の役割として考えています。

 それから桂のキャンパスは今皆さまのご支援で着々と進んでいますが、そこは産学連携の窓口として、先端のいろいろな研究、特に情報工学の面からのアプローチを中心にしていこうというものです。

 それから私たちの大学はフィールドワークを大いにやっていますが、全国各地に展開したさまざまな研究をしっかりと守っていくことも、私たちの大学の一つの特徴だろうと思います。昨年は自然災害が多く、台風が日本列島を縦走しました。そのようなときにこの法人化の影響は表れてきました。何千万円という被害を出しましたが、その被害をどのようにして補うのか。それを考えていて、法人化の仕組みがやっとだいぶ分かって来たのですが、中期目標、中期計画の書き直しをやるのです。そして文科省にお願いして認めていただけたら、お金が付くのです。それとも、お金が付いたから書き直すのか。どちらが先かは分かりませんが、とにかく計画を書き直しながら、災害復旧のお金をいただくわけです。そして保険で足りない部分を補うわけです。そのようなことが一つ、この大学の特徴なのですが、フィールドワークをやっていると、もろに経営が大変だと。そのような経験もしました。

 先程、「世紀の」と遠山さんがおっしゃいましたが、京都大学の歴史は1897年、京都帝国大学として始まりました。産学連携という一つの目で見たら、私が面白いなと思ったのは、このスタートの時に、京都帝国大学の先生と島津製作所のエンジニアとが一所懸命協力して、初めて国内でレントゲン(X線)装置を売り出したことです。つまり、個人的にですが、最初から産学連携を一所懸命にやっていたわけです。

 そして、大正時代になると、農学部などを設置して、どんどん学生が増え始めましたが、最初の卒業生は26人でした。木下広次総長の式辞を読んでいますと、文部大臣が出席した第1回卒業式の式辞の中に、盛んに経営という言葉が出てくるのです。大学の経営は大変だと。学生を卒業させるために教授はいかに苦労したかという話を一所懸命、式辞で述べています。だから、初めから大学は経営を一所懸命やってきているのだとよくわかるわけです。何も法人化して初めて経営がどうのこうのという問題ではなかったわけです。

 昭和22年、これは日本で第1号と言って良いと思いますが、理学部4回生だった堀場雅夫さんがベンチャービジネスを始めました。ちゃんと大学はそのようなことを前からやっているわけです。そして国立大学法人京都大学がどのように変わったかは後で述べますが、法人化後は、この産学連携のやり方が大きく進展したと私は言えると思います。

 もちろん京都大学の歴史の中には、オリンピックで金メダル、銀メダルを分け合ったとか、このほかにもいろいろな歴史が登場するわけですが、あまり詳しいことを言っている時間もないので、今の大学の規模を紹介しますと、10の学部、16の大学院があります。後で言われる宮原先生の大阪大学とどこが違うか。例えば農学部は多分、大阪大学にはなかったと思います。教育学部も確かありません。もちろん奈良先端科学技術大学院大学では、この大学院の中の幾つかがあるわけでありますが、地域の隣同士の大学が、そのようにして住み分けをしながら、今までずっと教育をやってきたこともよく分かると思います。

 大学の規模ですが、今、先生たちが3,000人ぐらい、常勤職員が2,300人ぐらい、学生が2万2,000人ぐらいおりますが、この規模をこの前、University of Californiaの副学長さんと一所懸命比べて見たら、向こうはキャンパスが10あり、学生が22万人と大体10倍、先生も10倍、職員も10倍、予算も10倍と大体全部、倍率定数が合っていました。ただ、中には例えばカウンセリングセンターは向こうの方がはるかに多いなどのちょっとした違いがあるのですが、規模はよく比較出来ているのではないかなと確信しました。

 そのような中で法人化を迎えて、今何をやっているかを、今日は産学連携のキーワードにして議論をしたいと北澤さんもおっしゃっているので、京都大学がどのように変わっていくのかを紹介したいと思います。

 先程、変わらない面、変わる面、いろいろあると言いましたが、国が強制的にこのようにしろと言うと、わりあい京都大学は昔から抵抗してきた大学であります。そのため、法人化して自分たちで決められると言われると、コロッと変えられるものはあるわけです。そのような面白いと言ってはいけませんが、良いところはあるなと私は思います。

 例えば知的財産の原則、機関、帰属を決めようと呼びかけたところが、わりあいすんなりと皆さん認めて下さって、走り出しました。それから新しい産学連携のスタイルを進めて行こうというわけで、先程言った島津製作所はお付き合い型に入るでしょうが、現在は包括的融合アライアンス型と私たちは呼んでいるのですが、複数の企業、複数の大学に入っていただいて、そして私たちが音頭を取って一緒に1つの契約の元に目的を置いて開発に取り組む。すると非常に効率の良い開発が出来る。そのような原理は以前から分かっていたのですが、これが法人化と前後して実現することになりました。実際に有機、半導体、発光ダイオードなどの特許を取って発表するという成果を生み出しています。特許の数が今目覚ましく伸びていまして、もう500件を今年は超えそうですが、そのような効果がこのような考えを導入することによって生まれてきました。そのような変化もあるでしょう。そして、アイちゃんで皆さんご存じでしょうが、霊長類研究所。ここは産学連携の一番基本的なところを行っています。つまり今、生命科学では日本中で動物を使うわけですが、そのための猿をここが供給する。そのような大型のプロジェクトを、ここの研究成果を元に進めていくわけです。

 いろいろな研究所がいろいろなことで地道に社会を支えている。このようなことをもっと私たちは広報して、知っていただかないといけないなと思います。その一環でもありますが、東京にもリエゾンオフィスを持っていて、帝国ホテル5階に皆さんもお使いいただける部屋があります。

 それからもう一つ大事なことは学生、留学生です。産学連携の一つの一番大きな、大学にとって大事なところは、留学生を産業界と一緒に大学が育てることだと思います。彼らが将来、日本のため、外国との橋渡しをしてくれるのですから、非常に大事にしないといけないと思っています。

 この左上の写真の見事なアパート群ですが、これは中国の清華大学の学生寮です。中国、香港、シンガポールは今、外国の学生を呼ぼうとして、ものすごい熱意を燃やしています。このまま行くと優秀な人材がすべて留学生という形で外国に取られる可能性があると私は思っています。そのような周辺国の状況も見渡しながら、日本も留学生の問題、日本の学生の問題を考えていかないといけないというのも今日の一つの論点だと私は思います。京都大学は上海にもセンターを置いていますが、そのようなところを通じてアジアの諸外国との交流を進めたいと思うわけです。左下の写真は、同じく清華大学の写真です。500年前の皇帝の別荘の池の前の古い木造の家の中に清華大学の学長さんは執務室を置いて仕事をしておられますが、そのように歴史と最先端の考え方が非常にうまく融合していると思います。

 経団連の話が先程出てきましたが、今年1月18日に経団連からの政府に対する提言の中に、高等教育にかける費用がGDPの0.5%ではいけないとあります。先進諸国を見習って、教育費に国はもっと金をつぎ込めと経団連が書いています。これを今日の論点にして欲しいのです。というのは、公費の負担率が非常に低いことによって、3つの危惧を私は抱いているからです。

 また授業料を上げようという話もありますが、そのような中で教育に対する公費負担率が低いことは、まずは少子化を招きます。これは家計の負担が非常にきついですから、子供を少なくして精鋭で育てようとするからです。

 もう一つは外国に優秀な人材を、まず18歳人口から取られてしまうという可能性があります。

 そして最後に、その結果としてではありますが、日本語が痩せてくる。国語を大事にしなければ国は滅びます。国語を大事にして、日本の大学で日本語によるいろいろな分野の教育をちゃんと進めていく。それに国がお金をかける。これは、これからの一つの日本の国策であるべきだろうと思います。

 この3つは論点としてぜひ皆さんに議論していただきたいと思っています。

 少し長くなったかもしれませんが、以上です。

北澤  どうもありがとうございました。それでは大阪大学の学長である宮原先生からお願いしたいと思います。

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宮原 秀夫 氏

宮原  先程、北澤さんが示したスライドには、国立大学に対する外部からの批判ということで、「教育に十分力が注がれていない」「社会に対して閉鎖的」「旧態依然として変化出来ない」「決断力が遅い」「経営理念の不在」「社会性の欠如」とありました。これだけよくボロクソに言われたものだなと思うわけですが。それからもう1つ、北澤さんの資料では、大学人がこの批判に応えられなかった、だから法人化なのだと取れるのですが、私は本当にそうかなと思います。

 ここまで言われることはないのではないでしょうか。というのは、日本の今日までの発展、特に産業発展を支えてきた中で、私学も含めて、国立大学の学生が大きな貢献をしてきたことは間違いないことだと思います。そうは言っても、このような批判を受けているわけですから、私たちとしては改良していかないといけません。そこで法人化について考えてみますと、私は法人化の中で、規制緩和、総長のリーダーシップ、それから目標設定における間接的な評価の3つがポイントだと思いますが、特に今日は規制緩和について話をさせていただきたいと思います。

 法人化になって何が大きく変わったかと言われますが、まだ1年未満です。先程も尾池先生が言われたように、そんなに「これが変わりました。これも変わりました」と、たくさん出てきたら苦労はしないわけです。今はその問題を見つけて、どのように変えていこうかという段階にあると思います。

 しかし、その中でも一番大きく変わったと私が思うのは、教職員の意識改革が起こってきたことだと思います。つまり規制緩和により、自分たちで大学改革をやっていけると思うわけです。これまで何十年、あるいは百年近い大学の歴史の中でいろいろな規制が出来てきました。それなりに意味があったのかもしれませんが、中には現在の社会にはそぐわない部分が結構たくさんあります。簡単に言いますと、いろいろな改革をしようとしても、これまでの規制が障害となってほとんど出来なかった。けれども、法人化によって、そういう規制が取り払われたので自由裁量でいろいろなことができるのではないかと教職員が皆、期待を持っていると思います。

その中に、例えば産学連携をどうしていくかという問題があります。産学連携を一般に推奨すると言いましても、それを実行していくためには、まだもろもろの細かな問題があります。そのことについてはもし時間があったら後でお話させていただきたいと思いますが、一つ大きな規制になっているのは、私は公務員倫理規定法だと思います。産学連携と表裏一体になることかもしれませんが、我々が非公務員になったとしても、やはり公務員倫理規定法が準用されるということです。自由度が増えて、これから我々がどのようなことをしようかということですが、法人化によって大学全体の中期目標、理念を決めて、どういう評価を受けるかと。そういう大きなことはいいのですが、法人化の一番のメリットは、構成員一人一人が、法人化して、こういうふうに良くなった、こういう自由を得たのだというふうになって欲しいと思っています。そして、いつもそう説明しているのですが、自由度を得た反面、自己責任とリスクは増えるのです。自由度が増えたからいろいろなことをやってくださいと言っても、今まではどうもなかなか責任体制が明確でなかったということで、最終的には総長あるいは役員会が責任を持つから、すべて自由で考えられる範囲でやってくださいと言っています。

それともう一つ、いろいろ自由になったのですが、産学連携で一番大きな問題になっているのは、産学連携で得た研究費等を大学、大学院の学生に使えないことです。先程遠山さんが大学院を重点化していくという話をされましたが、国立大学、例えば我々のところでは、ドクターの学生に関しては定員があるのですが、なかなか定員を充足していないのが現実です。そして、学生をエンカレッジすることをやろうとしても、なかなか資金的な問題でいかないことがあります。私の専門の分野で言いますと、2000年にIT戦略会議が開かれまして、そこで2005年、つまり今年までに、博士号、修士号の取得者数を米国の水準を上回るようにしたいという答申が出ています。では、それが実現されているかというと、私は達成していないと思います。2年ほど前に調べましたら、現実的に修士で今の3.2倍、博士課程に至ってはIT分野では6.2倍の人材を出していかないと米国並みになりません。

では、なぜ学生は修士課程、博士課程に行かないかというと、やはり一番の問題は学費にあると思います。そこで、うちの研究室の学生に「給料を20万、30万円、月に渡せるなら行きますか」と聞くと「喜んで行きます」と言うのですけれども、実際にその20万なり30万なりを出せない。出せないのはお金がないから出せないのではないのです。仕組みが悪いのです。要するに企業から教授がもらってきたファンドを学生に対して給料で出す仕組みがないのです。そういうことを実現しようと思ったら、学生はいつ勉強するのですかと。要するにアルバイトというような感触としてはとられないのです。これは今の制度の問題です。

ちなみに米国の大学では、ドクターの学生は、我々の分野ではほとんどの学生が月2,000ドル、3,000ドルの給料をもらって、なおかつ授業料も教授に払ってもらっているという状況です。それはどこから出ているかというと、教授が産学連携で得た研究費を学生に投入しているわけです。そういう意味で、そのように仕組みを変えていって、学生があまり生活費等を気にしないで、どんどん大学に進学していく仕組みをつくっていきたい。そのようなところで産学連携を活かしていきたいと思っています。

それで、ご存じのように最近、授業料値上げの問題が急浮上していますが、それに関して財政諮問委員会等々は受益者負担ということもあって、学生が受益者であるから、ある程度負担すべきだという意見も世間ではあると思いますが、私はそれは違うのではないかと思います。要するに受益者は学生ではなくて、大学教育で見た場合には企業であり社会であると思います。最近、学生にはサービスを提供しなさい、「学生さん」と呼びなさいとか、学生はお客さんであるとよく言われますが、私は決してそうは思いません。学生とは「製品」であって、ユーザ、お客さんは企業、社会なのです。そういう企業、社会にどういう良い「製品」を我々がつくって出していくかということなので、良い「製品」を出すことに関して、社会なり企業なりに、もっと協力していっていただきたい。その時に、大学としても社会、ユーザが本当にどういう学生を要求しているのかを考えなければなりません。ある意味、工業製品を開発することに例えますと、本当にユーザが希望している製品はどうなのか、ユーザオリエンテッドな製品をつくっていくにはどうしたらよいかということを考えるべきだと思います。例えば私は専門がネットワークとか電気なので、そういうことを見ますと、ちまたに出ている家電にしてもいろいろなことに関しても、いわゆるシーズ指向で技術者の立場から考えたような製品で、非常に技術者エゴに基づいたような製品が開発されて、無理やりにユーザに使ってくださいとなっているような気がします。そういう意味で、教育でもユーザの意見を聞いて、我々が持っているシーズとマッチングさせて良い「製品」、すなわち学生をつくっていくことに努力して行きたいと思います。

産学連携に関して、もう少しそういう面で使っていきたいということをお話させていただきました。細かな問題点等には、また後でいろいろご質問があればお話しさせていただきたいと思います。

北澤  ありがとうございました。奈良先端科学技術大学の鳥居先生に最後にコメントしていただきたいと思いました理由は、実は奈良先端科学技術大学は規模が少し他の大学よりも小さいことがありまして、実際、法人化のいろいろなメリットを活用して、すでに一番素早くいろいろなことをやられ始めている面もあると伺っているからです。そういう観点でコメントしていただけたらと思っています。よろしくお願いします。

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鳥居 宏次 氏

鳥居  今日、京都大学と大阪大学の総長の間に挟まれて、なぜ小さい規模の大学の学長が座っているのかと思われる方もいらっしゃるかも分かりませんが、まあ、おいおい分かるとは思います。

 先程、尾池先生が規模の話をおっしゃいました。カリフォルニア大学に対して京都大学は10分の1なら、京都、大阪に対して、奈良はさらにその10分の1という程度です。先程、京大は学生数2万2,000人とおっしゃっていましたが、私たちの学生数は1,100人、教員の数も私どもは200人そこそこです。規模的にはそれだけですが、逆に言えば、だから非常に動きやすいところが多々あったかとは思います。その辺の紹介を今日お話しさせていただければと思います。

 それで、私どもの大学は歴史も実はまだ10年そこそこで、これもまた10分の1かも分かりません。大学院しかない大学として平成3年(1991年)10月につくっていただいた大学です。実は大阪大学に奈良先端大準備室ができまして、その時の総長が今そこにいらっしゃいます熊谷先生でした。今、大学は生駒の高山にありますが、当時、現地を見に行っても山ばっかりでした。ところが、「おい、鳥居、ちょっと来い」と北新地へ呼ばれまして、飯を食わせてもらって、「お前行け」と、ナントカの一声で今に至りました。今から思い出すと、あの時の総長のリーダーシップはすごいなと思います。

 最終的には阪大からスタートしたわけですが、地元ですから京都大学と大阪大学の先生方の積極的なサポートがあり、両大学に私どもの大学をつくってもらったと思っていますし、途中からは子会社が親会社を食ってかかろうというような勢いで頑張ってきたのかも分かりません。大学院の重点化という波が始まる直前の91年ですから、大学院しかない大学をつくるのは先人の大変な先取りした知恵だったと思います。ITとバイオとナノの3つの研究科しか今ありませんし、逆に言えば、実環境を入れれば、いわゆる重点4分野の3つをやっているだけです。ぜい肉はまったくない状況で我々はスタートしました。ただ規模が10分の1といっても、それぞれの人間がどれほど意識して頑張っていくかというところで、個々の能力を比較していただきますと、それなりに私の中では評価されるような数値が出てくるかと思いますが、それはまた後ほどの話にさせていただきます。

それで法人化に絡んだ話ですが、ご案内のように私どもの大学は大変特殊な大学院大学として作られたわけですから、当初から、それなりの特殊な大学院ということでみんな意識して、いろいろやろうとしました。例えば極めて具体的な話ですが、秋入学。今はやり始めているところが多いかと思いますが、これも最初の年にできた情報科からやっています。あるいは短期修了も、積極的に自分たちの評価基準をつくって学生さんを積極的に出していきました。あるいは産学連携も、当初から、社会の中での大学の位置付けということを意識してやってきたかと思います。

それはともかくとして、このような考え方でやってきた中で、今回、法人法という法律をつくっていただき、大変やりやすくなったというのが正直な、個人的な考えというか、思いです。最終的には「こういう法律があるのだからね」と言えば皆さん方は納得してくれたと思います。ただ、それはその場では納得しても、もちろん具体的にはいろいろな問題があるのかも分かりません。しかし、それはそれで人間ですから、少し話し合って、あるいはきちん考えていただければお互いに理解できると思います。それも、やはりこの規模がうまく作用したのかも分からないと思っています。

教授が60名弱、50幾つでしょうか。助教授が同数くらいで、今は60名ずつです。それから助手が80名くらいでしょうか。大体1講座1、1、2でスタートしていたわけですから。そういうものをこの法人化のおかげでやりました。さらにこれを加速化していただいたのが法人法だと思っています。

例えば委員会は、安全関係の委員会とか、学生生活委員会とか、法律上最低限つくらなくてはいけない委員会は当然どこの大学でもあるのですが、私たちは約30くらいあったのを10個に減らしました。では減らした20個分の仕事はどこでやっているかというと、役員会でやるわけです。役員会はご案内のように唯一の大学の議決機関ですから、権限を持ちかつ責任を持っている人間が決めていくというわけです。当然のことながら、そこのメンバーとしての理事の責任は大きくなります。あるいはもっと極端に言えば学長の責任になるのですが。しかし、逆に言えば権限が大きくなっていったかも分かりません。しかし、それに対しても学内からの意見をうまく吸い上げて反映していったので、今日の実態があるのではないかと思っています。例えば経営方針や予算案についても役員会で方針を決めていって、学内に提示していくと。

大学レベルでは役員会ですが、先程申しました3つの研究科では、それぞれの研究科長さんの人事に関しては、一応、研究科長選考会議という形をつくりますが、学長の意向でほぼそれを決めさせていただきます。それから教授会。よく大学の先生は教授会、その他学内の委員会で忙しくてねとおっしゃいますが、教授会そのものも研究科ごとに配置しました。これは本来の教育と研究に関して他の無駄な時間は割いていただかなくて結構ですということです。研究科の運営に関しても時間的な効率は上がったかと思います。これは逆に言えば、雑用も減らすけれども権限とか責任は上の方で取らせていただくと。これはまさに法人化の趣旨だと思っています。例えば人事権も、先程の研究科長選考会議、最終的にはその会議で決めますが、学長の意向を受けていただきますし、教員人事は、教員選考会議を経て、最終的には学長が専決で決めさせていただく。学長、学長と先程から言っていますが、教授の人たちが教授の人事を決めた時に、それなりの決めたことに関しては責任を取らされるという立場にあることを皆さん方は時々誤解なさいます。責任を取れない人がやってみたって仕方のないことです。だから責任を取れる人間が決めざるを得ない。これは人事の根幹だと思います。ということから、教員人事にしろ、大学の主導でやらせてもらいました。あるいは、もっと柔軟な人事制度として、先程、北澤理事から給与を決定する上での裁量権その他の話も上がっていましたが、こういったことは来年度になるかと思います。

実はこの春で学長の任期が来まして、私は退きます。安田先生という今の副学長がやる予定ですが、ある程度やっていただくような宿題も残ったままですが、これは多分、かなりのレベルまで具体化していくと思います。

それで、柔軟な教員人事という話になりますと、例えば教務職員というものがあります。大学には教授、助教授、助手、それから教務職員とありますが、教務職員は大変中途半端な職種なのですね。ですから、教務職員はもう最終的にはなくしていきたいという方向で、今、積極的に助手に切り替えています。あるいは助教授ポストを教授に上げていくと。これは運営費交付金の予算の枠、これは15年度の法人化直前に決まってきた額ですが、それの10%という上限はありますが、ぜひ必要な人だったら急遽その範囲内で上げていく。さらには、それぞれの教授、助教授、助手のその職種ごとに5%の枠内で、大学が人件費のエキストラなマネーを準備するから、これをつくったらどうだというような極めて具体的なことですが、人事に関しても極めて柔軟な体制で今まで望んでまいりました。

リーダーシップといいますと、これは人事、財務、もう一つスペースもありますが、2つ目の予算に関しても、学長の裁量経費を大幅に増やしていますし、さらには研究科長の特別経費という格好で二段構えで、大学の方針に従っていただこうというようなことで考えています。

幾つか代表的な今やっていること、やってきたことをまずはご紹介させていただきました。念のために、今さら宣伝めいたことで恐縮ですが、例えば先程の遠山元大臣からCOEとありましたが、私どもも率先して、2つの拠点を最初から頑張ったとか、知的クラスタをやったとか、それから外部資金とかあります。あと一つ産学連携に関しては、産官学連携を標榜し、知的財産本部をかなり大きな組織として独立させ、それに関して、私どもの大学の将来の財務のこと、収入のことも積極的に考えていきたいと長い目で考えております。

時間が参りましたので、また詳細は後程にさせていただきます。

北澤  ありがとうございました。それでは、文科省から本日来ていただきました徳永審議官にお願いしたいと思います。徳永審議官は特に大学の法人化、財務の問題をこれまでずっと見てきておられますので、そういう観点からコメントをいただけるのではないかと思いますが、お願いいたします。

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徳永 保 氏

徳永  どうも、文科省の徳永でございます。先程も遠山元大臣から法人化の意義等についてはご発言がございましたので、重複は避けたいと思いますが、私ども日本の国が今後とも世界の中で、いわば活力ある社会を維持してさらに発展をしていくためには、やはり大学を中心にして、より知的な活動を増進していかなければならないと思っています。そういう意味では、大学の改革を推進する、教育研究をより進展させることが大きな目標です。基本的に国立大学の法人化はそういう教育改革、大学改革を、各大学の自律性をより高める中でやりやすく、円滑に進めていくための方策だと思っていますので、基本的には各大学のマネジメント改革とそれを活かしたそれぞれの大学における教育研究の発展という形で結果を出さない限りは法人化の効果は真に出ないと思っています。

 そういう意味では、まず私ども文部科学省自体、法人化に関して、従来の国立大学と文部科学省との関係を考える上で、自分自身の意識改革を進めて、距離感をもう一回つかみ直さなければいけないと思っています。基本的には文部科学省、特に高等教育局としては、大学の特性あるいは本質を維持しながら、国立大学法人システムをきちんと社会の方々に理解をいただいて、これを温かく見守っていただきますようお願いをしていくとともに、各大学に法人化の意義を活かして、具体的なメリットをどんどん出していただいて、その上で教育改革を進めていただくことをお願いしていくものだと思っています。

また先程、尾池総長あるいは宮原総長からもお話がありましたように、まずは国からの財政支援が大学運営の基本です。このことについては私どもとしてはデュアルサポートをしていこうと思います。基盤的経費、国立大学で言えば運営費交付金、私立大学では私学助成、そういったものを基盤にして、その上に、先程、遠山元大臣からご発言ありましたように、21世紀COEとか特色GP(特色ある大学教育支援プログラム)、さらに科学研究費補助金など、きめ細かな新しいさまざまなファンディングシステムを用意して大学を支援していくことが私どもの責務だと思っています。

そういう中で、特に国立大学法人の具体的な運営とか、財政といった問題になりますと、これは正直申しまして各大学、大変ご努力いただいていると思っています。大学によって取り組み状況はさまざまに異なっていますが、多くの場合、まず国立大学法人制度の形を整え、それに沿った運営システムをつくるところで現在一所懸命頑張っていらっしゃる段階で、具体的にそれを財政運営なり、人事制度なり、規制緩和につなげていくところまで行っているかどうかは、まだ途中経過にあると思っています。それでも国大協のアンケートによれば、55%の大学が学長裁量枠での人件費や定員枠を設定して、大学独自の教育研究戦略に従った形で、学内の資源、例えば教職員の定員、人件費、予算、スペースとか、そういうものを再配分していらっしゃいますし、あるいはまた兼業兼職は、もうすでに32%の大学では大幅に弾力化をされたと聞いています。正直申し上げて、最初の北澤理事のイントロダクションにもありましたように、例えば費目別の予算統制があり、謝金が余ってもそれが旅費に使えないと。国立大学のがんじがらめの仕組みは困ったものだと言われる中では、そういう費目統制自体を大学で独自の規則をつくって緩和をしていくことが必要ですが、まだまだそこまで行っているわけではございません。しかし、そういったことについて各大学は努力をしていますし、私どもも、そういったいろいろな大学の取り組みに対して情報提供して、応援していきたいと思っています。

まだいろいろ、授業料その他のご批判、ご意見もございましたが、議論の焦点が定まった段階でまた改めて詳しくお答えしたいと思いますが、文部科学省の基本的な立場としては、まず大学を財政的な面で応援をしていく。その上で大学改革をさまざまな方針を示してリードしていくと申し上げたいと思います。

北澤  ありがとうございました。

財務管理の変革

北澤  今いろいろなお話がありましたが、10ヶ月経ったとはいっても、まだこれから変わっていく段階であると。それで、どうも規模の小さな大学の方が変わり身は早い。あるいはこれは学長の個人的な努力かもしれませんが。やはり変わっていくことに関しては、いろいろ問題があるかと思いますが、そういう中で最初に財務のことが出てまいりました。

 運営費交付金が渡しきりになった。あとは学長が自由に使えといった形で法律が改正されたわけですが、実態として自由に使えるのでしょうか。この辺に関して、特に尾池学長、宮原学長の大きな大学ではいかがでしょうか。あるいは鳥居学長、大学院大学という大学ではいかがでしょうか。この表に、大学の収入の何割が運営費交付金で、授業料がどのくらいかと書いてありますが、運営費交付金に関しましては毎年約1%減らされていくといった状況もあるわけで、その中で裁量を与えられて、学長はどう判断されているのかをお伺いしたいと思います。お願いします。

尾池  法人化によっていろいろなものが変わっているのですが、今の渡しきりになったというように仕組みが変わったと。これは文部科学省から見ると変わったわけですが、大学側からすると、お金が減ったという変わりようなのですね。渡しきりになって自由裁量でと、規則は確かにそうなっていますが、何かやりたいなと思うけれども、お金が足りないのです。この1年、何をやってきたかというと、とにかく足りない、削られた所をどうやって補うか。もう四苦八苦して、そのことばっかり考えているものですから、なかなか自由裁量とか、そんな良い言葉が浮かんできません。国立大学89人の学長さんで誰も喜んでいないのがその証拠だと思うのですが。みんな顔をしかめて「困った、困った」と言うのですね。渡しきりで自由裁量と、非常に良くなったように聞こえるかもしれませんが、どうもみんな困っているのは事実なので、そこのところ、どうも話のバランスが取れないなといつも思っているのですが。

 まあ、実感としてはとにかく減りました。それは間違いないと思います。それでまだまだこれから減っていきますよというのが、この効率化係数です。何が効率化か。国にとって、財務省にとっては予算支出を効率化していくのだろうと思います。国の財政状態が非常に逼迫しているのは私たちもよく分かるわけで、国は大変困っているので、みんなで努力したいので国立大学も頑張ってくれと言わればよく分かるのですが、そうは言わないのですね。自由にお使い下さい。良い制度にしたからとしか言わない。それで頑張れと言われるのはどうも心外です。こういう話しをしていると、いくらでも悪口になるので止めます。

 私は自分が俳句をやりますから、俳句で人の心を読もうという妙な悪い癖があります。遠山さんが辞表にサインされた後で読まれた俳句を覚えています。「走りきて くゆる事なき 秋の空」というものでしたが、一所懸命やってこられたことがよく分かります。しかし、「秋の空」という季語が問題で、秋の空はわりあいころころと変わりやすいですよね。その頃に何を言われていたかと言うと、大学の統廃合とか、そういうことが非常に話題になっていた時でありまして、飯田隆太という非常に有名な俳人の有名な秋の空を詠んだ句、「去る者は 去りまた満ちて 秋の空」という俳句をその時にふっと思い浮かべてしまいました。有馬さんと議論していたせいもあるのですが、どうもその辺が絡んできて、統廃合のことがずっと頭に残ったのですが。

 それはともかくとして、いろいろ財政当局もご苦労なさっているのはよく分かるので、それを素直に定量的に出していただいて、国立大学もこれだけは頑張れ、これだけは節約してくれと、こう言って欲しいといまだに思います。とにかく変わった、変わったけどお金は減ったと。これが実感でして、今その始末にきゅうきゅうしているというのが本当のところです。

北澤  この段階で、減ったということに関する事実関係は、徳永審議官、どうなのでしょうか。

徳永  正直申し上げまして、ちょっと尾池先生には申し訳ないのですが、確かに今年の予算で効率化減97億円とありますが、実は他の分で逆に増額をしていまして、実数は、教育研究分で言いますと6億円の減です。病院の経営改善は当然、これは毎年毎年改善していくという前提ですので、そんなに減っていないわけです。

 むしろ今までの国立学校特別会計当時は毎年毎年教職員定員を平均で1%減、あるいはもっと減らしていました。人件費の総額は実はずっと減ってきていました。もちろん文部科学省はさまざまな所でいろいろな形で増額にも工夫、努力をしてまいりましたが、国立学校特別会計当時は、国がやりくりしながら、毎年毎年減っていく予算をあまり国立大学の先生方に減ったと思わせないように、我々が一所懸命努力をしてきたのが正直なところでして、むしろ当時からすれば、効率化減1%と申しますが、これは設置基準上必要な教員の給与費にはかかっていませんので、実質的な効率化部分は実は0.6%相当しかございませんので、むしろ法人化以前よりは、マクロ的には国立大学に当然求められる圧縮はずっと減っている状況です。

 そういう意味では今回、特別教育研究経費が45億円増額ということもございました。いろいろ、授業料等の標準額の改定でご意見はあろうかと思いますし、また病院の改善分、毎年2%改善をしていくことはスキームとして決まっておりますので、それを除けば6億円の減です。遠山元大臣にご努力いただきまして、ずっと今まで微減、あるいは若干の減を続けてきた中で、16年はまったく何の増減もなく、また17年もほとんど減っていないという意味では、私どもからすれば、ここ2年間はかなり財政的には安定していたと思っています。

北澤  宮原先生、ご意見ありますか。

宮原  今のような説明を私は何回も、はっきり言って耳にタコができるくらい伺っているわけですが、要するに減ったことは事実です。その代わり裁量が増えたので、その減った中でどうやっていくかと非常に大変な思いでやっているわけです。例えば今まではいろいろなところに決まった手当がついていたのですが、もう少しその手当をインセンティブになるような付け方にしていきましょうとか、教員を雇うのに任期制を導入したり、あるいは寄付講座なりに特任教授を雇ったりする時に、今までは学卒何年ということで給料が決まっていたので、優秀な教授を呼ぶことができなかったのを、年俸制でもっともっと上げて、高い給料で優秀な教授を外国から呼んでこようとか、そういう決まった枠の中で、さっき言った規制緩和によって自由度を増やして、やりくりしているのが現状です。

 ただし、もっと大きいことは、先程、国の高等教育費に対するGDP比の話がありましたが、欧米先進国は1%で、日本は0.5%だと。こういうことを一般の国民の方はあまり認識されていないのではないかと。防衛費が1%を超えると、マスコミはやいのやいの言うわけですが、高等教育費に関して先進国に比べて半分しかないことはあまり言わないわけですね。根本はそういうところにあって、国全体がもう少し高等教育に対してどういう方向に持っていこうとしているかを考えていただきたい。だから、その場その場で増えたとか、減っているけれども実は増えていますよと。それは確かに授業料を上げたからそれだけ増えていることになるわけで、私は小手先のことではなくて、もう少しグランドビジョンの元に問題を考えていくべきだろうと思います。

北澤  今、科学技術振興機構の「スキームからの大学の研究活動に関する財源構成の日米比較」の図を見ますと、共通して言えることは、まず日本の政府支援の高等教育に対する全体の支出として、他のOECD諸国に対して比べると低いことは、どなたも異論のないところで、これは文科省としても増やそうと努力しておられるのだと私は理解しています。

 それで今度は、運営費交付金が1%近くずつ毎年減っていくことが現在行われているわけですが、これに関しましては競争的研究資金から3割の間接経費が大学に付くということで、それを計算してみますと、それと見合うか、うまくいけば間接経費が少し上回るスピードで大学に行くように出来る可能性もあるかなという感じで、かなりバランスよくしていると思えます。その意味で今回のこの運営費交付金と大学に対する間接経費のような措置をトータルして考えてみますと、競争性のないお金に関してはやや減っている一方、競争的研究資金という形で、そのときそのときの各大学から出されるプロポーザルに基づく予算請求でコンペンセイトされて、トータルとしてはやや増加する状況にあるかなと見えるのですが、その辺りは徳永審議官、何かありますか。

徳永  実は、先程の図(参考資料 P.4参照)自体が誤解を呼んでいると思います。これは実は右の方が若干間違っていまして、研究費だけの比較です。これはいろいろなところで言っていますが、私も米国国立科学財団(NSF)に派遣されて、この辺りはよく状況を知っていますが、連邦政府から補助金をもらっている大学は、全米で120大学ぐらいでございますが、この内私立大学が4割です。そのような特定の研究大学(Research University)と言われている大学の研究費だけを除いた部分ですので、教育・研究費のトータルでは日本の私学とそれほど変わらない構造になっています。そこは前提としてあります。

 ちなみに数を申しますと、先程、遠山元大臣あるいは北澤理事もおっしゃったように、基本的なスキームは同じで、政府全体として、例えば国立大学間および国公=私立大学間の競争的なものにシフトしていくということが昨年度の経済財政諮問会議の骨太方針に示されています。もちろん私たちとしては先程言いましたようにデュアルサポートで、まずは基盤的経費が必要だということはきちんと置いていますが、その上でさらに競争的な配分も増やしていきたいと思っています。ですから、今、北澤理事がおっしゃったように、もとより教員個人に関わる研究活動に対する科学研究費補助金は、例えば平成6年度はわずか824億円だったのが、今は1,765億円までなっていて、間接経費については、平成13年度に73億円だったのが現在125億円になっています。そのような形で増えているわけです。その他にさらに、遠山大臣が先程おっしゃった21世紀COE、そのような大学の新しい組織的な活動、教育あるいは研究活動に関わって、国公私を通じて競争的に配分されるお金がすでに80億円増という形で500億円を超えているわけです。

 まだまだこれで十分だとは言いません。先程のGDP比に対する高等教育の支出の割合、これは私たちがつくりまして、いろいろなところに足りない、足りないと言って出している資料ですが、ぜひ総額を上げて行きたいという思いはもちろん大学の先生方と同じです。努力もしています。そのような中で基本的には基盤的経費については若干苦しいながらも何とか維持をしつつ、より競争的な配分によるお金の増額を一所懸命やり、トータルとして大学に公財政支出が拡大していくことについては努力をしていることをぜひご認識いただければと思います。

北澤  ありがとうございました。競争性のないお金については、やはり微減傾向にある一方で、競争的研究資金、あるいは競争的に各大学が文科省に申請するお金、そのようなものと合わせれば、やや増加の傾向に現在あるとのことですが、そうなりますと全国の国立大学を見たときに結局、競争に打ち勝った大学が収入は増えていって、そうでないところは収入の上では非常に苦労するという構図になっていると思えます。その観点に関しては、どなたかご意見はありますか。尾池先生、どうぞ。

尾池  微減という言葉に少し抵抗感はありますが、それはよいとして、競争力は必要だと思います。どのような競争が一番大事かというと、21世紀に一番大事なことは日本の大学の国際競争力だと思います。これは国立大学間の競争という問題ではなくて、国公私立大学を通じて日本の大学のすべてが国際競争力を持つことが一番大事だと思います。そのために国費をもっと投入して欲しいというのが私が先程言ったことで、GDP比を示したように、もっと総額を増やして欲しい。それが大事です。

 それは国立とか公立とか私立とかの問題ではありません。受益者負担に関する宮原先生のお考え、学生が受益者ではなくて、国の将来、あるいは国の企業、日本という国そのものが受益者であると。これに私は大賛成です。それが大事な観点であって、それに対してもっと投入しましょうということなのです。

遠山  尾池総長のおっしゃったのはまさに正論で、日本の政府の原資配分は日本の将来にとって禍根を残すような状況がずっと続いています。義務教育国庫負担の制度まで崩そうとしているわけですね。名目的に崩して地方分権という形のもとにグズグズにしてしまおうとしている。高等教育についてもこういうことです。だから、尾池総長さんの意見は正論なのです。これは大きな声にしていく必要があります。

 そのためには、日本の教育はしっかりやっている。大学はしっかりやっている。国立大学だって変わったのだ。変わる必要がないのだという主張ではなく、また微減しただけと言うのではなくて、こんなに変わったのだ、良くなったのだ、もっと良くなるためにはこうなのだという主張を大学側がなさり、国民がそれをきちっと認識する。そのような循環にしていかないと駄目です。制度を改正して、そのメリットがものすごく多いのに、ちょっとしたデメリットだけを言い立てて、これは問題だという姿勢は悪循環をさらに増していくと私は思います。

 ぜひともこの機会に、私たちが本当に努力をして21世紀型に変えた仕組みを利用して、こんなに今良くなろうとしているのだということが目に見える形で各大学にやっていただきたい。そうすれば、私は、日本の大学をもっと良くして、日本はもっと良くなろうという民意が生じてくると思うのです。そこのところを間違わないでいただきたい。

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司 会:北澤 宏一 氏

北澤  今、論点が非常にはっきりと出たと思いますが、共通の問題点は、日本の高等教育費が諸外国に比べて低いことにすべての議論の大本があったかと思います。それをどう解消していくのかについて最後に遠山元大臣からご発言がありました。

 さて、議論が非常にホットになってきたところですが、ここで少し頭を冷やしていただきましょう。ここで少し休憩をとり、皆さんからのコメントを集めさせていただきまして、後半のディスカッションに入りたいと思います。