2005年9月号
巻頭言
顔写真

北城 恪太郎 Profile
(きたしろ・かくたろう)

(社)経済同友会代表幹事/
日本アイ・ビー・エム(株)
代表取締役会長


将来におけるわが国の国際競争力を展望すると、国内では少子高齢化の進展と人口減少社会の到来による活力の低下、グローバルに目を転じるとBRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)に代表される新興諸国の台頭といったように、さまざまな懸念材料が存在している。

スイスの国際経営研究所(IMD)が毎年公表している世界競争力ランキングにおいて、わが国は60カ国・地域の中で21位と中位レベルにとどまっているが、政策レベルで強い危機感は聞こえてこない。しかし、トップを走る米国でも、将来的な国際競争力低下に大きな危機感を抱き、着々と将来に向けた布石を打ち始めている。その一例が、昨年12月に企業経営者や専門家から成る競争力評議会の検討チームがとりまとめた“Innovate America”と題する報告書であり、イノベーションに向けた人的資源、投資、インフラの強化をブッシュ大統領に提言している。

わが国で進められてきた構造改革は、これまで過去の清算に主眼が置かれ、将来の新たな飛躍に向けた視点は乏しかった。私が経済同友会代表幹事として「新事業創造立国」「イノベーション立国」をテーマに掲げてきた問題意識もこの点にある。

わが国の将来を築くキーワードは「イノベーション」である。わが国の国際競争力を強化するためには、既存の技術や仕組みを「カイゼン」することだけでは不十分であり、これまでの積み重ねとは「非連続」であり、社会に大きな変化をもたらすようなイノベーションが不可欠なのである。そのプラットフォームとして、産学官連携をより一層推進することが期待されている。

イノベーションを起こすためには革新的な発明やアイデアが必要であり、そのシーズは大学に数多く存在している。しかし、大学にはシーズを事業化して付加価値創造に結び付ける力が十分ではなく、社会を大きく変えるイノベーションにはつながりにくい。その意味で、優れたノウハウや経験を有しているのが企業である。また、国家レベルの巨大プロジェクトのように、企業としての事業化が難しい分野では、政府の政策的な方向付けや研究開発資金の果たす役割は欠かせない。

このように、産学官がそれぞれの強みを生かし、有機的に連携することによって、イノベーションの可能性は飛躍的に高まるのである。それが「ネットワークの時代」「コラボレーションの時代」と呼ばれる今日において、我々が目指すべき方向性であり、それに向けて多様な組織が積極的に自らの役割を果たすことが求められている。