2005年9月号
産学官連携事例報告
NTTアドバンステクノロジ(株)が展開するメキキズ・ビジネス
顔写真

印牧 直文 Profile
(かねまき・なおぶみ)

NTTアドバンステクノロジ(株)
知的財産事業本部・メキキビジ
ネス部 部長/メキキズ・ビジネ
スチームリーダ兼務


はじめに

技術目利きとビジネス展開とを連携させて調査・分析するユニークなメキキビジネス*1という組織の活動を紹介します。同組織は、NTT研究所が開発した最新技術を広くあまねく世の中に普及するために1976年に技術移転会社として設立されたNTTアドバンステクノロジ(株)に属しています。技術移転においては、特許関連の戦略管理業務が重要であることから、知的財産事業本部の中で活動しています。1985年~1990年頃(当時の社名「NTT技術移転(株)」)からNTT技術を世の中に出す方向の業務とともに、逆に世の中にある最新技術をNTTへ取り込む方向の業務も重要視され、双方向の技術情報流通が切望されはじめました。このような状況の下で、1998年にメキキビジネスの組織が設立されました。

組織名称は、技術目利きを意味する「メキキ」と、事業化に向けた具体的な「ビジネス」提言を行えることを目指したコンセプトに由来しています。技術目利きが、技術の進展に伴って技術の細分化や分業化が進行したことから、ひとりですべての細分化技術を評価することはできません。このため技術の専門家集団の連携が重要になることから、メキキの複数表現であるメキキズ(MeKiKiesR:登録商標第4601671号)というロゴのもとに調査分析サービスを提供しています。

メキキズ(MeKiKiesR)サービスの提供*2

通常、目利きとは、絵画・骨董品・器物・刀剣・書画等の良否や真贋を見分ける鑑定人を言うことが多いのですが、元来、目利きプロセスは、真贋を判定する「鑑定プロセス」と価値を判定する「評価プロセス」に大別されます。通常の鑑定人の目利きでは前者の「鑑定プロセス」が重要視されます。これは、真贋が決まれば、カタログなどによって作製時期からほぼ自動的に評価値が決められるからです。その評価値は原品の一品に対しての値です。

図1

図1 技術目利きの要求条件

ところが、技術目利きでは、後者の「評価プロセス」が重要視されます。技術目利きの要求条件を図1に示します。目利きする技術そのものは技術資料(著作権)や特許になります。これらに対して「鑑定プロセス」でその真贋が判定されますが、その価値は「評価プロセス」ではすぐに決まりません。これは、原品の価値だけでなく該当技術を使った複製品(レプリカ商品)の売れ行きを推定した価値も加える必要があるからです。言い換えれば、技術目利きには市場性評価の能力が要求されます。例えば、絵画の原画の真贋を判定する目利きが鑑定人でありますが、技術目利きは原画の真贋による価値と原画のプリントコピー(ポスター、レプリカ絵画など)がどれだけ売れるかの価値(市場波及効果)をあわせて評価することになります。MeKiKiesRサービスでは複製品(レプリカ商品)の市場評価に力点を置いた調査・分析を基本としています。

市場評価に際しての留意点は、技術の生みの親よりも技術の育ての親に注視した分析が重要になります。技術の生みの親は技術的に実現できるか否かにこだわり、育ての親は市場導入に適した価格に抑え込み、導入タイミングにこだわります。例えば、技術の生みの親が新製品の販売価格を1万円に設定したとします。この新価格は、試作品を参考にして製品として実現するための部材・部品の価格を上積みし、研究投資回収費を加味して算出されます。さて、この新製品と類似している競合製品の価格が6,000円として市場で売られているとしましょう。生みの親は、最先端の技術が入っているので1万円で売れるはずであると主張する傾向があります。ところが、買い手や消費者から見て、4,000円分の価格差の効果効用を感じることができるでしょうか。感じないと思います。新製品の価格を1万円ではなく6,000円の低価格に勘定して、同額価格の競合製品と競争して初めてその効果効用を買い手や消費者に感じてもらえます。1万円から6,000円に低価格化するための技術開発を行う人物が技術の育ての親です。言い換えれば育ての親は、市場価格と市場動向を把握しながら技術を開発します。MeKiKiesRサービスでは、技術の育ての親の視点から調査・分析を行っています。

人文系専門家と理工系専門家の連携がメキキビジネスの決め手
図2

図2 サーチャと技術アナリストのペア調査体制

MeKiKiesRサービスでは、市場における競合製品(類似製品)の動きを正確に把握することが要求されます。正確に市場状況を把握するためには、販売価格の市場感覚と販売タイミングの時間感覚を持つ人材を登用し、情報収集の感度を上げる必要があります。この観点から人文系の情報収集の専門家(サーチャ)を採用しています。また、販売価格と販売タイミングを考慮した技術開発の実現可能性の評価分析が重要となります。技術の育ての親の視点から調査・分析を行えるベテランの理工系の専門家(技術アナリスト)を採用しています。これら両者の専門家を効率的に連携させるために、調査案件ごとに「サーチャと技術アナリストをペアで連携させる調査体制」をつくっており、これがメキキビジネスの決め手と言われています。このペア連携によって調査の責任体制と品質保持体制が明確になり、お客様のご要望に沿った調査結果を出し続けています。サーチャと技術アナリストのペア調査体制を図2に示します。

情報収集の専門家であるサーチャは、「技術評価(プロダクト)は市場(マーケット)に連動した時価相場である」という観点から、類似(関連)技術・代替技術の成果発表、保有特許(PCT)の公開、新製品の発表、研究開発の投資発表、技術の買収発表(M&A)、技術キーパーソンの移籍発表などに着目した情報を収集し、3カ月(Quarter)の周期で技術評価値が変動する市場状況に留意します。

他方、技術アナリストは、仕入れ値が安い商品開発に着目します。これは「利益=収入-支出」の観点から仕入れ値の支出を低減化すれば利益が増すからです。ハイテクプロダクトはハイテクとローテクが含有された製品であり、ローテクの含有率を上げることが利益向上と信頼性向上につながりビジネス展開がしやすくなります。ハイテクプロダクトのビジネスはローテクが決め手になります。

MeKiKiesRサービスの調査結果に関するユニークな点は、調査分析が偏見と独断に陥らないように公開情報を引用して根拠を述べる点にあります。お客様が満足される調査結果は第三者が議論できる情報でなくてはなりません。特に最近、投資案件の経営会議などに社外取締役が参加することが多くなっており、水面下の秘密情報は個人的な認識情報としては適していますが、第三者との議論情報としては不正行為になりやすく、不適切になる場合が多いのです。このことが公開情報の引用の重要性を高めているのです。

図3

図3 目標達成機関によって変わる市場規模

市場の動きに関する技術調査・分析においては、市場規模の推定が重要視されます。商品の市場における目標シェア達成期間を何年に設定するかによって、市場規模が変動します。目標達成期間によって変わる市場規模を図3に示します。市場規模はその達成期間を1年から5年に設定する場合と5年から10年に設定する場合によって大きく変化します。前者では「市場で何が困っているかという発想から(市場タイプ1、2)」、後者は「市場においてあったらいいなという発想から(市場タイプ3)」市場規模を推定するからです。前者に関しては、さらに細分化し、1.5年までの場合(市場タイプ1)と1.5年から5年までの場合(市場タイプ2)に分けられます。目標シェア達成期間を1.5年までに設定した場合特許調査は効果がなくなり、価格に裁判費用と弁護士料を上乗せする対策でビジネスが展開されます。この種の市場は出願特許の非公開期間に拘束されるので商品寿命が短いものに適しており、ソフトウェア類に多い傾向があります。目標達成期間が1.5年以上になる場合には、特許調査は重要になります。

むすび

メキキビジネスは、ITを支える242技術の各技術項目に関する技術ロードマップを調査分析した実績があり、また「2015年の情報通信技術」(前NTTドコモ社長立川氏監修)*3の調査支援を行っており、IT全体像を把握しているチームのひとつとして知られています。さらに、金を動かす米国ITベンチャーのトレンドについて5年間評価し、具体的な製品をウォッチしているチームであり*4、米国ベンチャーに精通しています*5。このような蓄積ノウハウや経験を使って、日本の産学連携に役立てていきたいと考えております。


●お問合せ先
NTTアドバンステクノロジ(株)
知的財産事業本部 メキキビジネス部 メキキズ・ビジネスチーム
Tel:0422-36-5465
http://www.mekikies.com

*1メキキズ・ビジネス・オフィス
http://www.mekikies.com/

*2メキキズ・サービスのメニュー
http://www.mekikies.com/japanese/service/h17mkk-menu_s.pdf

*3立川敬二監修“2015年の情報通信技術”
NTT出版、2001年
http://www.mekikies.com/japanese/information/book.htm

*4「The Mekikies Business(メキキズ・ビジネス)」ニュース【米国ITベンチャーのトレンドについて5年間の評価記事】
(米ハイテクベンチャーの全体傾向)
http://www.mekikies.com/japanese/news/tech_assess-3_s.pdf
(2004年米ハイテクベンチャー評価)
http://www.mekikies.com/japanese/news/tech_assess-2_s.pdf
(2003年米ハイテクベンチャー評価)
http://www.mekikies.com/japanese/news/tech_assess-5_s.pdf

*5印牧直文著“シリコンバレー・パワー~~フロンティア産業を生む風土~”
日本経済新聞社、1995年
http://www.mekikies.com/japanese/mekikies/spmokuji.htm