2005年10月号
連載1  - 地域産学官連携「強さ」を探る
イーハトーブ、岩手での集まり
-INS(岩手ネットワークシステム)の活動を
中心に-
顔写真

清水 健司 Profile
(しみず・けんじ)

岩手大学工学部応用化学科教授
兼地域連携推進センターセンタ
ー長/INS(岩手ネットワーク
システム)事務局


銀河の夢を大切にしながら、岩手にある“産学官民の連携”を紹介したいと思う。

まず、岩手ネットワークシステム(INS)は、科学技術および研究開発に関する人および情報の交流を活発化し、共同研究を推進し、もって科学技術および産業の振興に資することを目的とした、自由に、どなたでも、個人的に加入できる、産学官民の有志による、ネットワークシステムである。

始まりは、“学”と“官”を中心とする数人の若い“生意気な”人たちの飲み会であった。“自由な雰囲気”があったように思う。次第に仲間(飲み友達)が増え、産学官の講演会を始めました。交流会もその都度行い、よく飲み、語り合った。7、8年続いた。そして、平成4年、正式に会として発足した。人とのつながりを主目的として、総会をはじめ、夏と秋には公開講座や公開講演会を行った。夏の公開講演会は、“地球を愛するために”と題し、環境問題を取り上げ、今年度で14回目を迎える。参加者は小学生からお年寄りの方々まで幅広く、最近では、同じく環境に取り組んでいるNPOの方々にも参加していただいている。さらに、トライボロジー研究会をはじめ知的財産活用研究会など38の研究会が活動している。これら研究会は、岩手大学、岩手県立大学および岩手県庁の方々が会長をされている。広い範囲にわたる研究促進の運営により、地元企業の方々と技術交流や共同研究を通し、科学技術の推進に寄与している。その中から、大型研究開発プロジェクトとして、科学技術庁の地域先導研究にスーパーファインポリマー研究会を中心として「トリアジンチオールのスーパーファイン化に関する総合的研究」や、材料プロセス研究会を中心とする「次世代高機能鋳鉄の創製と複合化に関する基礎的研究」が、また、ニューマテリアル研究会を中心とする地域結集型共同研究事業「生活地域への磁気活用技術の開発」の採択をはじめとして、最近では、コンソーシアムなど各種大型プロジェクトから中小企業との共同研究が行われ、新産業への取り組みを積極的に実施している。

岩手大学地域連携推進センターも、岩手大学の地域連携の窓口として、INSと共同で業務を展開している。地元企業をはじめとする共同研究の多くは、このINSをよりどころとしたものである。さらに特徴的なことは、17にもおよぶ市町村との共同研究の取り組みです。いずれも、おそらく“人と人”のつながりが、成し得たところが多いかと思う。岩手大学との相互友好協定も9市村となっている。また、岩手大学地域連携推進センターでは、岩手県産学連携連絡会を開催、県内20あまりの支援組織の方々による集会を隔月で開催し、支援から催し物等々の情報交換を行っている。非常に有意義である。

岩手県の協力もあり、近県、他県との研究交流会も実施している。数年前には、日本貿易振興機構(JETRO:ジェトロ)の支援でドイツにも交流団を派遣した。それが、先の地域結集型共同研究につながった次第である。最近では信州に出向いたが、その成果の1つが、盛岡市による研究センターの建設である。

国際化を目指した国際シンポジウムの開催や、高校生に科学への関心をもたせるための“大学は面白い!!!”シンポジウムも継続している。高校の先生方とも懇意になり、その結果、全国高校理科大会を共同で開催できた。大学が全国高校理科大会の会場になったのは岩手大学が初めてであろう。

また、大人(?)のためのINSゴルフコンペも始め、好評だ(BMのスコアーが140前後というのが気になるところだが…)。さらに、家族の方々にも、日頃からお付き合いしている方々をご紹介するために、「INSクリスマスファミリーパーティー」も開催している。小さなお子様からご婦人方がそろい(何やら怖い(?)ファミリーのように感じているのは私だけだろうか?)集合写真を撮るのが恒例だ。また、文部科学省や東北経済産業局、および岩手県知事夫妻の参加も得た。

岩手県は全国でもユニークな“産官学民”の活動がされていると思う。沖縄から北海道まで、各地に招待されたり、さまざまな団体や研究機関の方々が調査に岩手県を訪れる。過年、文部科学省の産学連携手法のモデル事業として「21世紀に向けたINSの新たな展開に関する研究」を実施し、また中小企業事業団の「コーディネート活動支援事業」も行なった。一昨年は、産学連携推進功労者として経済産業大臣賞もいただいた。今後も、地域に密着した産業振興に役立つことができればと願っている。

これらの行事は、県内だけでなく多くの他県の方々の参加を得ている。INSもどきの会が、北海道、山形県、茨城県、山梨県、関西地区、岡山県、この11月には鳥取県に設立される。四国、九州地域にも生まれそうと聞いている。ありがたいことである。

最近の岩手では、新事業の促進を図る計画や、その支援を民間企業やNPOに委ねることも考えられているようである。産業分野は、報道でも周知の自動車産業から、岩手県の特徴を生かした木質バイオマス、水産資源および食産業が挙げられると思う。産学官連携事業として、大いに期待するところである。そのなかにあって、身近にある、これまで活用されていないものを産業に結びつけることを目的とする、INS未利用資源活用研究会の取り組みも、地域と密着して面白い展開が期待されよう。

成果が問われる、慌ただしい昨今であるが、INSを中心とした岩手での産学官民の連携は、広く多くの人の和と、そこからの創造を生みだす。さらに今は、INSも“次世代”が運営している。これらこそが、大きな成果と言えるものと、最近では確信を持ち始めた。

“イーハトーブ”かもしれない。楽しみな、今日このごろである。


●連絡先
 岩手大学工学部応用化学科 清水健司
 〒020-8551 盛岡市上田4-3-5
 TEL&FAX:019-621-6341
 E-mail :kshimizu@iwate-u.ac.jp