2005年10月号
連載2  - 実録・産学官連携
中小企業経営者がみたこれからの産学連携
推進(1) -ニーズとシーズのマッチング-
顔写真

高橋 貞三 Profile
(たかはし・ていぞう)

(社)ニュービジネス協議会
(NBC)産学連携推進委員会
委員長/(株)アーゼロンシステム
コンサルタント 代表取締役


ニーズとシーズのマッチングのビジネスモデルとは?

2005年より(社)ニュービジネス協議会(NBC)*1産学連携推進委員会では産学連携の実用化のため、関東地区8大学コーディネーターのご協力の下に、「ニーズとシーズのマッチングのビジネスモデル」の構築を研究している。これまで多くの機関で「シーズとニーズのマッチング」が試みられてきているが、うまくいっているという声は少ない。この原因としてシーズ側からは“ニーズ側(企業サイド)が情報をベールで包んで本当のことを言わない”という意見が聞こえる。一方、ニーズ側からは“シーズがどこにあるのかわからない”、“大学の先生はとっつきにくい”という意見が返ってくる。

これらの問題点を打破するにはどうすればよいのか?

一つにはニーズ側の中小企業経営者が本音で相談に乗ってもらえる第三者機関が必要である。この第三者機関は各大学・研究機関のコーディネーターをネットワーク化し、ニーズ側が今困っている問題点を提起して来た時、シーズ側で問題点を解決できそうな研究者・研究機関をコーディネーター経由で紹介するという機関である。加えて、紹介後もニーズ側が納得するまで確実にフォローする機関が必要である。ドイツのシュタインバイス財団はその例である。

ニーズとシーズのマッチング方法

中小企業経営者はニーズの全貌をなかなか明らかにしない。これはシーズ側を疑っているからである。したがって、第三者機関とニーズ側中小企業経営者とで「守秘義務契約」を交わす。そして、ニーズ側がビジネスの全容を説明し、今困っている問題点を箇条書きに提出する。第三者機関はニーズ側が提出した『ニーズの問題点』をシーズ側のコーディネーターに提示する。それに関心を示すシーズ側コーディネーターに集まってもらい、ニーズ側中小企業経営者に引き合わせる。そして、ニーズ側中小企業経営者とシーズ側コーディネーターの間であらためて「守秘義務契約」を結ぶ。ニーズ側中小企業経営者はビジネスの全容説明と問題点を提出して説明を行う。シーズ側コーディネーターはその内容から判断し、問題点を解決できそうな研究者・研究機関をコーディネーター経由で紹介する。紹介後もニーズ側が納得するまで確実にフォローし、その状況と結末を第三者機関に報告する。そこで、うまくマッチングできればニーズ側中小企業経営者はシーズ側研究者・研究機関の窓口であるTLOや窓口会社と契約し、共同研究費用または委託研究費や知財権の実施料(ロイヤルティー)を支払う。シーズ側は関連技術を含めた技術を供与し、技術指導をする。この時点で、第三者機関はニーズ側より紹介手数料を徴収する。

ここで重要なのは「ニーズデータベース」と「シーズデータベース」の両データベースを検索できるエンジンである。これに関しては、NBCの2001年の産学連携フォーラムで提言した「ニーズデータベース検索システム」の開発と「シーズデータベースのフォーマット(仕様書)の統一化」が必要となる。

ちなみに「ニーズデータベース検索システム」の開発と第三者機関の設立はNBCとJSIAとFAISの三者連合で準備を進めている。

また、「シーズデータベースのフォーマット(仕様書)」については、明治大学のシーズ集*2が中小企業経営者(オヤジ)に理解しやすいと評価されているようである。

産学連携推進の共同(コラボレーション)

現在、全国各地でそれぞれに産学連携推進活動が進められており、それらには「温度差」がみられる。そこで、各団体の持つ情報の共有化と各団体の共同(コラボレーション)が必要となる。

情報の共有化については(独)科学技術振興機構(JST)が「産学官連携ジャーナル」をホームページで公開している。この「産学官連携ジャーナル」を、各地、各団体の情報交換の場に育成していけばよいのではないかと考える。しかし、そこでもニーズ側の情報が少ないように思われる。

また、各団体の共同(コラボレーション)については、電気通信大学のTLOである(株)キャンパスクリエイトの安田耕平氏が中心となり、産学官連携活動組織「コラボ産学官」がスタートした。全国の80大学・研究機関のコーディネーター104人が一堂に会して協力体制を構築している。これは前項で取り上げた「ニーズとシーズのマッチング」にとって必要不可欠なことである。コーディネーターの使命は「ニーズ」と「シーズ」のマッチングの「キューピッド」役であることを十分理解していただきたいと思う。

コーディネーターのネットワークづくりに関しては谷口邦彦氏が「地域広域コーディネーター」全国組織について投稿されている。

(参照:産学官連携ジャーナル8月号掲載「ヒューマンネットワークのつくり方」)

産学官連携は官から民への移管

世間でよく言われている「官の縦割り行政」には強い当惑を覚える。そこで私案であるが、内閣府に「産学連携推進委員会」を設置し、民間出身の委員長のもと、7人体制で経済産業省と文部科学省に勧告できる組織を早急につくることはいかがであるか(参考例は「食の安全委員会」*3です)。

「産学連携推進委員会」のもとに各省庁と民間の専門家から構成される「専門委員会」や「専門分科会」をつくり、問題点を討議し、討議内容をホームページ上ですぐ公開し、さらに民間からの多くの意見を聞くことである。これで縦割り行政の弊害は無くなると考える。

以上の3項目の提案が実現化すれば、以下が可能となろう。

[1] 産学官連携推進活動が民間主導の全国ネットワークで進めることができる
[2] 中小企業の「ニーズ」と全国の大学・研究機関の「シーズ」とがマッチングする第三者機関ができ、各大学・研究機関のコーディネーターが「キューピッド」となり、「目利き」をし、「ニーズ」と「シーズ」のマッチングが容易になる。
[3] 中小企業(オヤジ連)が活性化し、地方との連携が容易になり、日本経済が活性化する。

ちなみに、この「目利き」は現役をリタイアした方で、ボランティア精神の旺盛な団塊世代のOBの協力を仰ぐ必要がある。

最後に、NBCではこのたび全国14のニュービジネス協議会が連合を組み、(社)日本ニュービジネス協議会連合会*4をスタートさせた。全国3,200社の中小企業経営者の集まりである。

NBC産学連携推進委員会は、一足先に「ニーズ」と「シーズ」のマッチング活動をスタートさせたJSIA産学連携研究会(代表 下平武氏)とこれまで以上に共同を強化し、「ニーズ」側の産学連携を推進して行きたいと考える。

*1(社)ニュービジネス協議会
(New Business Conference :NBC)産学連携推進の活動は98年のTLO法の制定と同時に「産学連携・融合に関する研究会」がスタートし、今日に至っており、そのスタンスは中小企業の経営者の立場から「産学連携がどうあればよいか」をテーマとしてきた。
そして、(財)国際科学振興財団(FAIS)、(財)日本情報処理開発協会(JIPDEC)、日本科学機器団体連合会(JSIA)の3団体と連携し、2001年より2004年の4年間で『産学連携フォーラム』を明治大学、早稲田大学、慶応義塾大学、法政大学・日本ベンチャー学会と共同開催し、『ニーズとシーズのマッチング』、『資金調達』、『技術とマーケティング』、『キャリアデザイン』を提言してきた。
2002年には4団体でニーズとシーズのマッチングのための、『ニーズデータベースパイロットシステム』を試作し、NBC会員(500社)とJSIA会員(1,200社)を対象にスタートを試みたが、現在、開発運営は保留中。

*2明治大学のシーズ集
http://seeds.meiji.jp/seeds_seek/

*3食の安全委員会
2003年7月に内閣府直轄の機関としてスタートした。民間人5人と厚労・農水各省より1人の「7人の侍」で構成されている。この「食の安全委員会」のもとに民間出身の専門家で構成された小委員会や各種専門調査会がつくられ、問題を討議し、答申を出すとその権限は強く、厚労・農水各大臣に勧告する。各大臣は勧告をうけたら直ちに対応し、その結果を「食の安全委員会」に報告する。また、その討議内容はインターネットのホームページで時を待たずに一般公開される。公聴会も公示され、誰でもが参加できる仕組みである。ホームページ上で一般からの意見も聞き、質問に対して即刻回答する。

*4(社)日本ニュービジネス協議会連合会
http://www.nbc-japan.net/jnb/jnb.html