2006年1月号
産学官コラム
遥かなる産学のギャップ

産学連携進展の指標は何か? 今、大学は「共同研究等の数」、「外部資金獲得実績」、「大学発ベンチャーの数」、そして最近は「特許出願件数・実施料収入」が官からチェックされている。それぞれ指標としての意味は大きい。しかし、これらの数値を増やすことが大学にとっての産学官連携の「目的」になっては真の産学連携発展方向を見誤るのではないか。

同じ問いを産の側から見れば、最終的には利益の向上であろうが、それに至る「研究段階→開発段階→試作品作成→生産」の各フェーズにおける成功確率がどれだけ上がったかと見ることもできる。さらに細かく、開発の前段階として「アイディア創出・探索」、「アイディア評価」、「製品コンセプトの明確化」、「製品開発の計画立案」を置き、どのプロセスに対して産学連携が有効かをアンケート調査により検討した例がある。東北大学、長平彰夫氏の研究によるもので、設問は「産学連携により、当初予想利益に対し利益が向上したか」である。結果は「アイディア創出・探索」のみに効果があり、その後のフェーズでは効果が認められないというものであった。

アイディア創出・探索は大学が担い、アイディア評価以降は企業が担当するというスキームは二昔前のリニアモデル以外の何物でもない。

大学が産学連携に関して、冒頭に掲げた指標の向上のみに力を注いでいてはこの状況を変えることはできない。企業イノベーションの実態を知り、経営の観点から技術を議論できるプロ集団を持つ必要がある。さらにこのプロ集団は、大学の本来の使命「教育と研究」にも理解が無くてはならない。ある大学では鳴り物入りで大企業の企画部長レベルの人材を教授として迎えた。しかし彼は大学を企業の基礎研究所の亜種と考え、モノになりそうなアイディアを知財化して大企業に売ることしか提案していない。相変わらずのリニアモデルである。これでは大学の中に産学連携の機運を醸成することはできない。量子力学→半導体→コンピューター→情報科学→画像処理→脳科学へと、基礎科学と産業、工学と医学のような異分野間を網の目のように広がっていく現代の産学連携を進展させる上で、我が国の産と学はまだまだ遠く隔たっている。

ブレークスルーの一つは人材の育成から来るに違いない。理系の学部あるいは修士を卒業しさらにMBAを持つ、そのような科学技術への理解とグローバルな経営感覚をもつ人材の育成と、彼ら彼女らが社会的に尊敬されるポジションを作り存分に活躍できる環境を作ることが我が国の産学連携、さらには経済発展のために急務であろう。

(大学教授)