2006年2月号
産学官コラム
どっち向いてんのよ!

昨今、産学官連携の仲介役が花盛りである。大学やTLO(技術移転機関)、公的研究機関、自治体にコーディネータやアドバイザーなどと呼ばれる人材が多数配置されている。金融機関の職員が企業と大学の仲介をすることも珍しくない。いずれも研究や事業自体を担うのではなく、研究成果と事業化を円滑に結びつけるための支援人材である。

こうした支援人材は知財立国を目指す社会の要請に合うものだが、気掛かりなのは、支援人材が誰の立場に立って活動しているかが不明確になり、しばしば誤解やもめ事を生み出していることである。

公的なコーディネータが産学連携の打ち合わせに同席したら、敵か味方か分からず、対応に苦慮した―。こんな経験はないだろうか。中立と言えば聞こえはいいが、実際に中立な立場を線引きするのは本当に難しい。「私は国のために働いている」と大見得を切るコーディネータを大学が受け入れると、組織の利益相反にもつながりかねず、心配は尽きない。大学と連携しようとする企業にとっても当事者なのか助言者なのかが曖昧な相手先では戸惑うばかりである。

TLOの支援人材も組織によって行動原理が大きく異なる。大学や研究者の利益を最重視するTLOなら行動原理は分かりやすいが、地方自治体が財政支援をしているTLOでは、地域産業の活性化を最重視して事業が進むことがある。この場合、大学の研究成果をマーケティングする際に地域外での営業活動が抑制され、最適な技術の受け入れ先企業に行き着かない可能性が考えられる。こうした事情が関係者に十分に理解されないと、せっかくの産学官連携も滞ってしまいがちである。

多くの支援人材は身銭を切らないから役割や責任の範囲について意識が弱い。往々にして誤解やもめ事は産学官連携への甘い期待と現実の格差が原因である。仲介役の専門人材は実際に身銭を切ることはできないにしても、常に身銭を切る感覚でこの格差を埋めることが大切だろう。もちろん、期待を引き下げるのではなく、現実を上向かせて格差を埋められれば素晴らしいことである。

(会社役員)