2006年3月号
特集  - 地域クラスター<大阪府・バイオ編>
バイオビジネス・スクールによるバイオベンチャーの人材支援
顔写真

灘本 正博 Profile
(なだもと・まさひろ)

NPO法人 バイオビジネス・
ステーション 理事長/
大阪商工会議所 専務理事


背景

関西には、大阪大学、京都大学、国立循環器病センターなどバイオ分野において優れた研究開発を行っている大学や研究機関、研究者が多く、また道修町(どしょうまち)に代表されるように、歴史のある製薬産業や医療関連産業の集積も存在する。

大阪商工会議所では、こうした研究と産業の集積を生かし、北大阪に世界レベルのバイオクラスターを形成するため、「バイオ情報ハイウェイ第II期構想*1」を平成16年3月にとりまとめた。本構想では、具体的に、創薬、医療機器開発、機能性食品開発、バイオベンチャー支援、海外からの研究機関や企業誘致など、25のプロジェクトを推進している。

こうしたバイオクラスター形成において、バイオベンチャーが果たす役割は大きい。大阪では、大阪府、大阪商工会議所、国際文化公園都市(株)などが中心となり、2000年より「バイオビジネスコンペJAPAN*2」を実施している。本コンペは、全国の大学、研究機関等からバイオ分野のビジネスプランを募集し、バイオベンチャーの起業や技術移転を促進することを目的としている。今年で6回目の開催となるが、これまでの応募案件からは28社のバイオベンチャーが設立されている。

昨今、産学連携の動きが活発化する中で、多くのバイオベンチャーが設立されているが、バイオビジネスコンペJAPAN開催の経験からも、優れた技術がありながらも、経営人材がいなくてベンチャーの起業に至らなかったり、ベンチャー企業は設立されたものの、その後の成長に苦労している例が多数ある。

そこで、創業間もないバイオベンチャーを主に人材面で支援するため、大阪大学や京都大学、製薬企業の研究者など、関西の産学官の有志が中心となって、NPO法人バイオビジネス・ステーション*3を設立、事務局を大阪商工会議所内に設置している。本法人の主たる事業が、「バイオビジネス・スクール」である。

人材育成「バイオビジネス・スクール」

バイオベンチャーの成長のためには、バイオ技術と経営の両面を理解できる人材が必要であるが、このような人材は圧倒的に不足している。

こうした人材の育成を目的として、本スクールのカリキュラムは、「バイオビジネスの基礎」「経営学の基礎」「バイオベンチャーマネジメント」で構成され、最新バイオ技術と経営の基礎知識がコンパクトに学べるようになっている。

「バイオビジネスの基礎」では、第一線で活躍中の専門家から最新のバイオ技術動向を学ぶことができ、「経営学の基礎」では、神戸大学経営学研究科の全面的な協力を得ている。また、「バイオベンチャーマネジメント」は、慶應義塾大学大学院ビジネス・スクールの協力を得て、国内・海外のバイオベンチャーのケースを学ぶとともに、バイオビジネスコンペJAPANの入賞技術を題材に、受講生自ら、バイオベンチャーのビジネスプランを作成する実践的な講座となっている。

写真1

第4期バイオビジネス・スクール講義風景

2003年2月に第1期が開講し、現在は4期目、合計131名の受講生にこのスクールで学んでいただいた。受講生は、個人で受講料を負担して自主的に参加される方と、法人が社員の研修に派遣する形で受講される方が同数くらいである。こうしたスクールは全国的にも例がないことから、毎期関西以外からの参加者もある。

卒業生の中からは、バイオベンチャーの経営者に転身した方が7名誕生したほか、バイオベンチャー支援業務で活躍中の方、受講生ネットワークを生かして社内のバイオ関連事業の成果を生みつつある方などもいる。卒業生は自主的に「卒業生交流会」を運営し、年に4回程度の勉強と交流の場を設けることで、期を超えたネットワークが形成されている。このネットワークが、次代のわが国のバイオビジネスを担うものと期待している。

人々の健康にかかわるバイオ産業が今後も成長が期待される産業分野であることは間違いない。バイオ技術をビジネスとして開花させるために、今後ますます人材の重要性は高まっていく。「日本には経営者の市場がない」と言われる。ましてバイオベンチャーの経営者候補の層が形成されるのには時間がかかる。バイオビジネス・スクールでは、バイオ技術に強い人、経営に強い人がおのおのの得意分野を生かした強固なネットワークを形成することで、一人ですべてがカバーできなくても、チームとしてバイオビジネスを支えることにも期待している。

バイオ分野において、人材教育、人材マッチング、人的ネットワーク形成という「人」を主体とした支援事業は、ユニークで例が少ないが、バイオビジネス・スクールは、講師、受講生、事務局が立場を超えて、「日本のバイオビジネスの発展を担いたい」という、同じ夢や志を共有する魅力と強みがあり、地道に成果を挙げてきている。同事業を通じて、質の高い人材の層が厚みを増してきており、バイオ産業を育成する最も重要な「人」のネットワークが着実に構築されてきている。

おわりに

今後も、このネットワークがさらに広がり、継続していくことを願い、関西のバイオ産業振興のために努力していきたい。

〈例:第4期バイオビジネス・スクール 概要*4
ねらい: バイオビジネスと経営の基礎知識を習得する。
主 催: NPO法人バイオビジネス・ステーション
後 援: Biotechnology Japan、ベンチャー人材研究会
期 間: 平成17年10月~平成18年3月 土曜日開催
場 所: 大阪商工会議所
校 長: 京都大学 経済学部 教授 吉田 和男
副校長: 神戸大学 経営学部 教授 加登 豊
大阪大学大学院医学系研究科 客員教授 森下 竜一
慶応義塾大学大学院ビジネス・スクール 教授 中村 洋

*1バイオ情報ハイウェイ第II期構想
http://www.osaka.cci.or.jp/Jigyou/bio_business/highway2/

*2バイオビジネスコンペJAPAN
http://mic.e-osaka.ne.jp/biocompe/

*3NPO法人バイオビジネス・ステーション
http://www.bbstation.net/

*4
第4期のカリキュラムについてはこちらを参照 http://www.bbstation.net/school-curriculum4.html(参照 2006-02-13)