2006年3月号
編集後記

私ごとながら、昨年末に労働経済学の専門家として著名な樋口美雄慶應義塾大学教授、阿部正浩獨協大学助教授との共編著で、東洋経済新報社から『労働市場設計の経済分析?マッチング機能の強化に向けて』を出版させていただきました。独立行政法人経済産業研究所で4年以上にわたって取り組んでいたプロジェクトです。人口減少時代に突入し人材がますます貴重になるにもかかわらず雇用のミスマッチはなかなか減りません。そこで労働市場のマッチング機能を強化するための方策を統計分析、日米欧比較、事例調査を含めて詳細に検討しました。産業クラスター研究に携わるかたわらこのような問題に取り組んだのは、日本の経済力を維持するためのあらゆる課題に人材の有効活用の視点は必ず必要と考えたからです。そこには、地域で優良な雇用機会を発掘したり、産学連携を指向する中小企業が優秀な技術人材を確保するためのヒントもあります。

(児玉委員)

日本がプロパテント時代に入ってほぼ10年が経過した。

その間、国の産学官連携施策が次々と打ち出され、外部資源を活用せざるを得なくなった企業側と研究成果の促進を図る大学側の事情が一致して、産学連携は大きな高まりを見せている。

今後の課題の一つは、連携の成果をこれまでの件数主義に加え、その「質」を測ることにあると思われる。例えば特許の場合、基本となる特許や物質特許の状況、大学発ベンチャーの場合であれば活動状況等を具体的に表示する。

確かに定性情報を扱うのは難しいが、チャート化やマップ化等による「見える化」に向けて「質」の測定手法についてのコンセンサスを得ていく必要がある。

(藤川委員)

巻頭座談会の第3弾として、本号では「産学連携この一年を振り返る」というテーマで、最近の状況を編集委員の方々に語っていただきました。特別寄稿の「産学官連携の変遷と展開」は、70年代から今に至るまでの産学官連携を一覧できます。あわせて読んでいただきたいと思います。かなり以前の大学紛争でもみられたように、産学連携そのものをよしとしなかったような時代と産学連携ムーブの現在を比べるとき、経済状況や国の施策の変化とはいえ、「昔日の感あり」の思いを深くされる方も多いのではないでしょうか。今の現実をしっかりととらえて記録して残すことも、ジャーナル出版の一つの役割であることを再認識した今回の編集作業でした。

(加藤編集長)