2006年4月号
連載4  - 大学発ベンチャーの若手に聞く
明治大学の産学連携をリード -地道に一歩
一歩-
顔写真

平尾 敏 Profile
(ひらお・さとし)

野村證券(株)
公益法人サポート室 課長



写真1

   写真1 代表取締役
        半田 正浩氏

「COCO・WA・DOCO」(ココワドコ)*1は大学発ベンチャーというよりは学生発ベンチャーといったほうが正しいのかもしれない。社長の半田正浩氏(写真1)は、4年生のときに最初のベンチャーである「株式会社アイティーネットワークス」を起こしている。当時は学内にも学生のベンチャーを認定・支援する仕組みもなく、ごく身内でこぢんまりと開業したという。半田氏が起こした2つ目のベンチャーとなるCOCO・WA・DOCOは、明治大学を代表する大学発ベンチャーである。洗練されたwebサイトから会社を訪ねてみると事業内容を次のように紹介している。

(1) 通信関連のコンテンツ開発
(2) SIP*2活用のコンサルティングサービス
(3) SIPを活用するためのミドルウエア開発
(4) その他(ASP事業等)

となっている。

写真2

写真2 秋葉原クロスフィールドにて

半田社長の言葉を借りれば、「今後ますます活発化し、普及していくSIPが一段と加速するためには、さまざまなアプリケーションとSIPを連携するためのミドルウエアが必要であり、そのミドルウエアを安価で提供することと、アプリケーションを開発するための支援をしていく」ということだ。具体的にどのような事業内容なのか、という疑問には、今回お伺いした秋葉原クロスフィールドにある明治大学のサテライトキャンパスの一角(写真2)に、アプリケーションの一つがデモ機として展示してある。ご興味のある方は見学に行くことをお勧めする。私のように齢50を超え、ひたすら証券会社のなかで惰眠をむさぼってきた文系の人間には、言葉で説明されてもチンプンカンプン(半田さんごめんなさい、一生懸命説明していただいたのに、現物を見るまではほとんど理解していませんでした)だが、百聞は一見に如(し)かず。ひと目でその利便性を理解することができた。

ITのインフラは日を追うごとにコストの無料化が進んでいるが、電話も今やパソコンとつながっているものはインターネットを介してタダとなっている。現在は個人と個人が中心の通信インフラだがこれからは、企業も巻き込んだ通信事業として大きく発展していく。このときに、「こんなものがあるといいなぁ」とか「こんなことができると便利なのになぁ」というものを作ってくれるのがCOCO・WA・DOCOの主たる事業だ。現在は約50人の仲間が事業に参加しているが、コアとして働いているのは10人足らず。ここには秘密がある。

品川区戸越銀座の街作りに注力

東京都品川区にある戸越銀座商店街は半田社長が生まれ育った地域でもある。ときおりしも、当商店街は新しい都市空間の実験場として注目を浴びようとしている。それは、国土交通省が掲げる無電柱化推進計画*3のモデル地域でもあるからだ。本事業は品川区と明治大学が共同で行う商店街の近代化事業である。2011年まで5つに区切ったプロジェクトになっているが、第1期工事は2008年にも完成しITを活用した「ユビキタス商店街」が誕生する。COCO・WA・DOCOは受注者である明治大学からの下請けとして本事業のデザイン設計・プロデュース等を行っている。

電柱の地中化は特に地震からの防災に効果があるといわれているが、防災放送や地域コミュニティーのインフラを整備しなければならない。街作りに必要なアイテムとして、防災カメラ、スピーカー、無線を利用した地域の無料電話などを、街路灯に機能を持たせた新しい街作りを計画している。その中でもお年寄りや子供たちが安全で安心に暮らせる優しい街だ。

全体の設計で必要なものは、明治大学が持っているあらゆる分野の知的財産を活用している。いわば、明治大学の産学連携の一翼を、この事業でスパイラル的に発展させる実験も行っている。さらに、作業の大半は後輩である学生に担当教官を通して業務を委託している。それは、彼らの中から半田氏に続く人材を育て上げたい気持ちがあるからだ。コアメンバーが10人しかいないゆえんだ。その意味では、明治大学における産学連携の強力な推進者の一人であり、学生から見れば頼れる先輩でもある。COCO・WA・DOCOが行っている一つ一つが明治大学の産学連携の実験でもある。2008年の第1期完成に実験の成果を期待しよう。

筆者の感想

企画第一号として自信をもって紹介できる人物に会えたことを幸せに思っている。最近の傾向は、特にIT絡みの若手起業家にはどことなく地に足が着いていない危うさを感じるところであるが、半田氏には全くそれがなかった。昭和53年7月生まれというから現在27歳の大学院生である。大学卒業後は民間企業で3年間、修業もしてきた。

私は、企業をお訪ねしたときに、必ず事業計画書を見せてもらうことにしているのだが、「申し訳ありません。一度作ってはみたのですが、あまりにも現実離れしていたので、現在作り直しているところです」との答えが返ってきた。IPOの予定も聞いてみたが「この事業は2010年に大ブレイクする予感があります。その時に、現有勢力で力が足りなくなった場合は改めて検討しようと思っています」との答え。私の日ごろ考えていることをすべて言ってくれた瞬間でもあった。最後に企業理念をwebサイトに訪ねてみよう。

「明治大学の名を汚すことのないよう、常に誠意を持って応対し、安心と充実のサービスを提供することのできる会社であること。

大学のインキュベーション施設という特性を最大限生かし、コミュニケーションやサービスを通じて、地域や社会に知を還元することのできる会社であること」とあった。

【「大学発ベンチャーの若手に聞く」連載にあたって】

新年度よりこの企画を担当することになりました。

経済産業省は大学発ベンチャーを1,000社作ることから、より実績を上げるためにIPO100社実現政策を掲げています。大学発ベンチャーを作ることも、IPOをすることもそれ自体が目標なのではなく、いわゆる「大学の知」が社会にどのように役立つかが重要です。結果として大学発ベンチャーが起業されたり、発展してIPOに進む企業も出てくることになります。その意味で、大学発ベンチャーを一生懸命に応援します。お会いしたベンチャリストには、厳しいことも言わせていただきますが、可能な限りアドバイスもさせていただきますし、その後の応援もしていきたいと考えています。どのような形であれ、お会いできるご縁を大切にしていきたいと思います。本コーナーにおきましては、自薦・他薦・地域を問わず紹介していきます。また、取材をもとに記事を作成します。

*1(株)COCO・WA・DOCO
http://www.cocowadoco.co.jp/index.htm

*2SIP
Session Initiation Protocolの略で、IP電話の規格の一つ。

*3電線類地中化計画
昭和61年度から始まった同事業は「電線類地中化計画」から「新電線類地中化計画」を経て現在第5期(平成16年度~平成20年度)に入り「無電柱化推進計画」を実行中。これまでの幹線道路から歴史的街並み保存や良好な都市・住環境を形成する地区として非幹線道路も可能となった。