2006年4月号
編集後記

産学官連携の場を行き交う人々は、当然のことながら極めて多様です。国の政策として産学官連携を考える人もいれば、新しい観光土産を作る人もいます。目覚ましい組織改革を進めている先進的な大学、世界へ乗り出すベンチャー企業、地域企業のイノベーションを支援する公設試験研究機関……。大発展する可能性を秘めている活動は数多くあります。産学官連携ジャーナルの使命は、この巨大な産学官連携という「運動体」を、あるときは俯瞰(ふかん)的に、あるときはキーパーソンの汗を感じるほどの現場から、その姿を浮き彫りにすることでしょう。しかしこれは至難の業。読者の皆さまからの忌憚(きたん)ない御批判を糧に目標に近づきたいと願っています。

(荒磯委員)

昨年の7月号で、文部科学省の知的クラスター、経済産業省の産業クラスターの両政策担当者の対談をファシリテートした。どちらの事業も折り返し地点に来たということがあったのだが、今年に入ったら、早くも「ポストクラスター」の話に焦点が移行してきている。全国のクラスター事業が順次終了したのちに、各地域がどのようにその成果や可能性をキャッチアップし、次の地域戦略に展開していくかということが議論され始めている。クラスター事業では、期間中に出した特許件数や技術移転件数などの成果ももちろん大事だが、むしろ終わった後に「地域に何が残るのか」が成否の鍵を握るところがある。事業が終われば産学官連携プロジェクトは解散し、連携は跡形もなく消え去るなどということになったら、ほとんど意味がない。地域クラスターとしての持続性をどう担保するのかが、事業の終盤に来て問われ始めているようだ。

(田柳委員)

桜の花びらが舞う4月は、始まりの月です。今月号から、本ジャーナルでも新企画のシリーズが始まります。「MOTと産学連携」、「地域の産学連携事例」、取材をもとにした記事である「大学発ベンチャーの若手に聞く」です。また巻頭言では、ジャーナルのジャンルについて基本的視点から書かれています。本ジャーナルは産学官の間の連携にかかわる諸氏の仕事に役立つ情報を提供します。科学、技術をベースとしますが、産学官の連携という社会科学的な課題にフォーカスする、というユニークで斬新なジャンルを切り開きながら進めたいと考えています。

(加藤編集長)