2006年6月号
編集後記

連載「産学連携と法的問題」が第7回を迎えた。産学連携の実績が華々しく報じられるなかで、産学間の軋轢(あつれき)や大学内の不祥事が気に掛かる。発明者(東工大教授)と、大学、企業の3者で、発明者の認定をめぐって訴訟に発展する事案もあった(東京地裁3月23日判決)。大学側の法知識の不足と不適切な対応に起因しているように見受けられる。神戸大学教授が実験していないデータを記載して特許出願したとして学内から内部告発を受け、大学が当該特許出願を取り下げたという報道もあった(4月27日)。産学連携が一部で利権化するという危険も指摘される。産学連携の健全な発展には、法知識のほか、産学双方の倫理観が重要となる。

(青山前委員)

本ジャーナルも通巻18号を迎え、産学官連携をテーマとするジャーナルとして、ある意味での個性が備わりつつあると思われる。ある意味とは、執筆者や対談者として登場される方々に恵まれていることである。しかしながら、編集委員としては、読者の方々が本ジャーナルの編集に間接的であれ参画していただけるような仕組みが必要かと考えている。本来、ジャーナルはヒューリスティックな論争的性格を有しているはずであり、読者の自発的参画を誘発するものである。この記事は良かった、参考になったという評価だけでなく、この点は考え方が異なるとか、検証したいから詳しく知りたいといった双方向のプロセスが機能するようになることを期待している。

(川村委員)

今月号は、京都で開催されます産学官連携推進会議に先立つ8日にウェブで公開いたしました。広く読者の方々にご高覧いただきたく切に願っております。  

日本は産業技術に関して、既にキャッチアップ型からフロントランナー型へと移行しています。そこでは、イノベーションが重要な役割を持ちます。そして、国際競争力を持ちうる人材の育成と確保が必要であると、第3期科学技術基本計画で言われています。本号では「第3期科学技術基本計画の展望」というタイトルで、推進方策として重要となる観点をお話しいただいた記事を掲載いたしました。また、国立大学が法人化したのち、産学連携に関する全学的な組織体制をとられた九州大学の例をインタビュー記事と執筆記事で掲載しております。知識基盤社会へと社会が変遷している中で、こういった記事は大変に示唆的であると思います。  

前者の記事の最後に「今後の科学技術政策のための社会科学の振興が求められ、社会科学と科学技術が理系、文系の枠を外して、コミュニケーションをする体制こそ今後の方向であり、そういった体制の構築が大切である」と書かれています。これはまさしく今後の方向であるといたく感じ入りました。  

(加藤編集長)