2007年1月号
巻頭言
顔写真

慶伊 富長 Profile
(けいい・とみなが)

独立行政法人 科学技術振興機構
研究成果活用プラザ石川 総館長



「産学官連携ジャーナル」創刊号の尾身現財務大臣の巻頭言は、「フロントランナー時代に入ったわが国は」から始まり、「今後の産学官連携の方向を示すいくつかのキーワードを挙げてみたい。まず大学改革である。(中略)人材育成も重要なテーマである」と続き、「関係者が情報交換を密にして、より一層産学官連携を進めるために、この産学官連携ジャーナルが活用されることを期待」と結ばれている。

要するに、科学技術基本法・基本計画第2期10年間を成功裡に終え第3期に入る。その産学官連携(特に大学)についての政府方針の周知徹底のためにジャーナルを創刊する、と読める。従って、創刊以来2年間このジャーナルは、その役割を立派に果たしてきたと言ってよい。

「大学の社会貢献不足を難ずるのみ」の従来の議論から、大学本務の教育と研究についての積極的提言を引き出した。PhDやMOTコースなどでの高度人材育成、基礎研究の堅守など、大学側に分かりやすく大学側に向けた巻頭座談会「産学官連携による人材育成」(Vol.2 No.4, No.5)から「産業界に聞く産学連携」山野井昭雄氏(前 日本経団連 産学官連携推進部会長)に聞く-人材育成(同No.10)、柘植綾夫氏(元 三菱重工業代表取締役・常務取締役、現 総合科学技術会議)に聞く-日本のとるべき科学技術立国への道は(同No.11)、の記事が官と産の一致した主張の裏付けとなっている。

科学技術基本計画第1期17兆円、第2期24兆円、そして第3期25兆円と支援を継続している官、「いざなぎ」景気回復に入り法人減税を目前としている産、ともに学に寛容たる余裕が生じたのかもしれないが、批判にあらざる学への的確な提言が公表されたのである。

「一国が繁栄したときそこに優れた大学があった」(ホワイトヘッド)は大学人に有名だが、歴史は「一国が経済競争に敗れたとき、そこの産官こぞって大学を攻撃する」と教えている。景気後退となればまた大学批判が始まる、というべきところだが、日本だけは今後そうはならぬという可能性が現在生まれている。それは、科学技術振興機構(JST)が全国に張り出した地域産学官連携組織、研究成果活用プラザとサテライト群の存在であり、それによる地域中小企業を含めた全国の産学連帯の形成が進み産学官の日本型が生まれる可能性がある。

科学・技術の評価は世界共通。基礎科学研究力は発表論文、技術力は出願登録特許のそれぞれ量と質によって測られる。ただし、これらは出来上がったモノについての評価である。創り上げるプロセス、すなわち、実際の研究現場は国により、大学により、驚くべく違う。日本の大学の研究スピードはおそらく世界トップであろう。ただし、テーマ選定が後追いの癖が抜けない。全く逆なのがドイツの大学、という具合である。従って、さらなる発展のためには強力な日本型の建設が必須であり、そのためには地域産学官連携に性急な数値目標を達成させるよりも相互連帯強化のための息の長い施策が望まれるのである。