2007年1月号
イベント・レポート
「全国知的・産業クラスターフォーラム」報告
-クラスター活動の成果をどのように評価したらよいのか-

2006年11月29日、東京ビッグサイトで「全国知的・産業クラスターフォーラム」(主催:文部科学省、経済産業省、日本経済新聞社)が開催された。また、同会場で、各地のクラスター活動の研究開発成果等を展示する「地域発先端テクノフェア」が「全国中小企業総合展」等と併催で開催された。本フォーラムは現在の開催形態としては2004年から毎年開催され今回で3回目になる。今回は、クラスター政策が政府の「経済成長戦略大綱」と「第3期科学技術基本計画」の柱の一つとして位置付けられている(渡辺博道経済産業副大臣、水落敏栄文部科学大臣政務官挨拶)ことが確認された上で、イノベーション、ベンチャー、地域経済をキーワードとしつつ、とりわけクラスター活動の成果をどのようにとらえるかといった観点からの議論が行われた。フォーラム全体として、わが国としてのイノベーション戦略構築の必要性を強調した黒川清氏(内閣特別顧問「イノベーション25戦略会議」座長、政策研究大学院大学教授)をはじめ示唆に富む話が多かったが、本誌では、特に、各地のクラスター活動のキーパーソンとして活躍されている5人の方を中心として行われたパネルディスカッションの議論を中心に紹介する(本フォーラムのプログラム詳細は、http://www.cluster.gr.jp/forum.html参照)。

パネルディスカッションは、「5年間の目に見える成果は何か」との司会者の問い掛けから始まった。産業クラスター計画は2001年度の発足から5年を経過して今年度から第2期中期計画にはいっており、知的クラスター創成事業も初年度の2002年度に採択された事業の多くが今年度で終了し新年度から新たなフェーズにはいる。そのような時期にクラスター活動の成果やその評価方法が論じられるのは自然な流れである。司会者の問い掛けに対する5人のパネリストの議論は、「各地に成果は出始めてはいるものの、結果のみを性急に求めてはいけない。特に、件数や売上高などの数値的な評価のみに偏ってはいけない。将来的に新事業が立ち上がる確率が高まるような仕組み作り、体制作りがより重要である」といったラインに集約される。各地のクラスター活動のリーダーの実体験に基づいた発言だけに納得できる意見が多かった。

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パネルディスカッションの模様

総括講演者の堀場雅夫氏(日本新事業支援機関協議会会長、株式会社堀場製作所最高顧問)は、このようなパネルディスカッションの議論の流れを受け、自社の経験としても、バブル期において当時の好調な業績がこのまま続くはずがないとの判断から始めた社内改革が昨年度あたりからはっきりした成果を上げ始めたことなどを紹介し、「クラスター政策も目立った成果が出るまでには最低10年は我慢しなければならない。ただし、着実に成果を出すためには中間評価が非常に重要であり、また、成果をアピールしたいあまりに過大な報告を行ってはいけない」との指摘を行った。肝に銘ずべき指摘である。

パネルディスカッションで指摘された「将来的に新事業が立ち上がる確率が高まるような仕組み作り」に関しては、筆者の個人的な解釈を加えておきたい。クラスター活動は、開発力のある主体が数多く担い手として参加することによって初めて自立的な活動となる。担い手たるべき主体としては、企業も大学等の研究機関も金融機関も行政を含む各種の支援機関も必要であるが、今、各地域でとりわけ求められていることは力のある地域企業(その多くは中小企業である場合が多い)ができるだけ数多く主体的に参加することではないだろうか。クラスター活動の中心的な担い手となれる企業は、どんな企業でもよいわけではない。開発力のある企業、より具体的には産学連携や他の企業との連携を製品開発や事業化に生かせる力を持った企業であることが必要である。そのような力ある企業を地域においてできるだけ数多く発掘し、クラスター活動への参加を促すことが各地域の共通の課題であろう。開発力のある企業が新製品の開発、事業化に成功すればその効果は、受託加工型の中小企業にも波及する。単に名前を連ねるだけでなく自ら活動の担い手として積極的に参加する企業がどれだけいるか、それによって、どのくらい活動の自立性が確立されているか、といった点が評価のひとつの視点になると考えられる。

最後に付言すると、本フォーラムの最後には交流会が設定されており、フォーラム参加者(その多くは、全国各地から参集したクラスター活動のキーパーソンやその下で活動に従事している人々である)が、相互のネットワークを広げるとともに、政策担当者と直接に意見交換することが可能な場となっている。政策担当者にとってもさまざまな地域の人の声に直に接することのできる価値ある場である。限られた時間ではあるが、より多くの政策担当者とフォーラム参加者が、この交流会を活用することが期待される。

(京都大学経済研究所 教授/本誌編集委員 児玉俊洋)

全国知的・産業クラスターフォーラム
日時:平成18年11月29日(水)10:30~17:00
会場:東京ビッグサイト
主催:文部科学省 経済産業省 日本経済新聞社