2007年4月号
巻頭言
顔写真

堀場 雅夫 Profile
(ほりば・まさお)

株式会社堀場製作所 最高顧問




ベンチャービジネスと産学連携

私の82年の人生のうち、62年は表題のベンチャービジネス(VB)と産学連携の歴史といっても過言ではない。この思い出を記して関係者の方々が何か得ていただくことがあれば幸いである。

厳寒のツンドラ地帯でも灼熱の砂漠地帯でも、元気で生き続けている植物もいれば昆虫もいる。もともとVBとはいかなる環境下にあっても生き抜く力がなければ熾烈(しれつ)な戦いに生き残れない。

年代・業種・地域によって戦う方法は異なっていても、その能力と情熱と行動力の限界に挑むことについては同じである。

近年の医学の進歩は目覚ましく、従来なら生存が難しかった幼児が元気で生まれ、生後短命である子が立派に育つ時代になった。

全く同様にVBの世界にあっても種々の支援施策によって多くのVBが誕生していることは喜ばしいが、中には本来なれば事業としてはとても継続不可能のような企業が生き永らえ、上場なんて考えられない内容の会社が堂々と取引所に名を連ねているのは問題である。

もちろん、まじめに生まれてくるVBをなんとか一人前にしようとする努力は社会全体が支援すべきである。日本の場合は限られた機関は支援するが、社会の風潮は冷たい。

その中にあって産学連携によるビジネスの創造は産にとってはもちろん、学にとっても生きがい働きがいのある仕事であり、社会がこれを高く評価し賛辞を贈るべきである。

しかし、生まれた企業がいつまでも保育器の中に入っておしめを着け、母乳を離さないようでは、激しい社会で一本立ちができず一生を親のスネかじりのまま送らねばならない。

こうして考えると人の一生涯の人生とVBは共通点が多い。よい親の愛情で育てられ、よい教育を受け、素晴らしい家庭環境で育つことは幸福なことであるが、その愛情が溺愛でしつけが甘ければ社会人になってから苦労が尽きない。VB支援も時期、内容等細心の注意が必要である。