2007年6月号
特別寄稿
知的財産検定のこれまでの歩みと国家検定への移行について
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杉光 一成 Profile
(すぎみつ・かずなり)

知的財産教育協会 専務理事



2004年から実施している知的財産検定。当初の受検者は知財に直接かかわる人が中心だったが、今では研究者・技術者や学生の方が多くなっている。2008年度から予定されている国家検定への移行に伴い、どう変わろうとしているのか。

知的財産検定実施の背景

知的財産教育協会(以下、当協会)は、知的財産に関する知識の普及と啓蒙を活動趣旨としており、「知的財産検定」(以下、当検定)を主催・実施している。

学生・社会人の知財マインドの高揚
研究者(エンジニア)の知財マインドの高揚
知財部(法務部)スタッフの能力評価の一指標の創出
(知財マインドの高揚:知的財産に関する関心・意識を高めること)

を検定制度の目的とし、2004年に日本弁理士会の後援を受けて開始した。

当検定は、「企業活動における実際の知的財産関連事例から課題(問題)を発見し、解決するために必要とされる能力(知識等)について評価基準を設定し、受検者の知的財産に関する問題発見・解決能力を段階的に認定する検定」である。企業などのユーザーの意見が反映されている点や、実務で実際に必要とされる実践的な知識を客観的に評価し、認定する点が当検定の特徴である。

本稿では、当検定のこれまでの歩みと試験結果分析に基づくデータ紹介、2008年から開始を予定している国家検定への移行について紹介させていただく。

知財戦略強化の機運の高まりと知的財産検定の活用

   表1 2004年第1回~2007年第1回の受検申込者数累計

   表1

当検定は、2004年第1回(2004年3月実施)から2007年第1回(2007年3月実施)までで延べ9回試験を実施し、累計受検申込者数が2万5,000人を突破した(2万5,069名。表1参照)。

受検者層については、開始時当初と現在とでは、いくつかの変化が見られる。

表2 2004年第1回~2007年第1回の2級受検申
     込者の属性(職業)

表2

例えば、実施回数および受検者数の多い2級を分析してみる。全受検申込者における割合の多い「職業ベスト3」を挙げてみると、2004年第1回では、[1]知財、[2]研究開発・エンジニア、[3]その他、であったのに対し、2007年第1回では、[1]研究開発・エンジニア、[2]学生、[3]その他、と、知財を研究開発・エンジニアおよび学生が上回るという現象が起こっている(表2参照)。

実施開始当初は、「『知的財産』の検定」ということで、知財実務に直接携わっている「コアな知財人材」による受検が中心だった。しかし、国による「知的財産推進計画」*1の策定をはじめとした、わが国の知財戦略強化の機運が高まるにつれ、知財部門だけに限らずありとあらゆる部門によって、知財知識の習得および知財実務強化が重要視されるようになった。その結果、「知的財産の実務能力を測れるツール」として、当検定の活用に注目が集まり、幅広い受検者層による受検が活性化していったものだと考えられる。

団体受検増加の傾向と活用例

表3 2006年第1回~2007年第1回までの団体受
     検申込者・団体数 *2

表3

当検定では、「個人受検」と併せて、企業や大学等団体ごとに受検申込を受け付ける「団体受検」も実施しており、多くの企業・大学により活用いただいている(表3表4参照)。団体受検を活用する理由として、「部署全体および個々人のスキルアップのために、知財関連部門全員の受検を義務づけている」「知的財産検定の受検対策勉強会を自社内で定期的に開いている」といった企業の声が数多く寄せられている。



表4 これまでの主要な団体受検企業・大学(50音順)

旭化成株式会社、味の素株式会社、株式会社アドバンテスト、アルプス電気株式会社、石川島播磨重工業株式会社、大阪工業大学、大阪工業大学大学院、国立大学法人大阪大学、キヤノン株式会社、京セラ株式会社、國學院大學、四国大学、国立大学法人静岡大学、シャープ株式会社、JUKI株式会社、職業能力開発総合大学校東京校、住友電工知財テクノセンター株式会社、セイコーエプソン株式会社、積水化学工業株式会社、大日本スクリーン製造株式会社、田村プラスチック製品株式会社、TDK株式会社、東京電力株式会社、東芝インフォメーションシステムズ株式会社、国立大学法人徳島大学大学院、獨協大学、国立大学法人名古屋工業大学、パイオニア株式会社、松下電器産業株式会社、三菱マテリアル株式会社 ほか多数。

また、団体受検の動きとしては、大学による活用にも注目している。産学連携を推進する部署の職員による団体受検を実施している大学が毎回あり、大学が知財教育推進の重要性を認識しており、学生に知財教育を行うためにも大学職員の知財知識向上を図ることの重要性を感じているのではないかと推測される。

そして、上記大学の取り組みと並行するように、学生による受検が増加している。実際に、「知的財産検定対策講座」を開講し、毎回200人以上の受講者および当検定受検者を集めている大学もあり*3、大学を挙げての知財教育推進の成果が出ているものと思われる。学生にとって、検定受検で知的財産の知識を身に付け、知識の到達度を検定制度で認定されることで、就職活動でアピールでき、社会人になってからも、身に付けた知識を実務に役立てることができると認識しているのではないかと思われる。

知的財産マネジメントに関する国家検定について

当協会では、厚生労働省所管の国家検定である「技能検定制度」*4において、知的財産マネジメント業務が検定の対象職種として追加されることを要望し、関係団体と協調・連携しつつ、2008年から新制度の下での試験の実施を目指し、準備を進めている。

当検定を公的検定化することにより、学習者および企業等において知的財産スキルの重要性がより認知されることが期待され、知的財産に関して学ぶということを幅広く意識付けることが可能になり、ひいては国が推進している知財人材の育成と国民意識の向上にさらに貢献できるものと確信している。

現在、技能検定の内容等について次のとおり構想している。(※以下、「知的財産検定」は「現行検定」、「技能検定」は「新検定」と表記する。 )

現行の知的財産検定制度は、新検定の開始をもって全面的に新検定へ移行する予定である。現行の知的財産検定の合格者については、新検定への移行後も、認定は有効であり、現行の知的財産検定の合格者については、なるべく簡易な移行措置で、新検定の合格者と認定されるように、現在調整中である(なお、以上はすべて厚生労働省に要望中のものであり、確定したものではない。詳細が固まり次第、当協会ホームページ上などで発表する予定)。

おわりに

当検定の国家検定への移行を2008年に控えてはいるが、今年の試験はあと2回*5を予定しており、引き続き個人および企業、大学等の団体での積極的な受検が期待される。

当検定がより多くの方に活用され、国が推進している知財人材育成によりいっそう貢献できるものになるよう、ますます努めていく所存である。

*1
知的財産戦略本部が推進する、知的財産の戦略に関する推進計画。内閣官房知的財産戦略推進事務局“知的財産推進計画”
http://www.ipr.go.jp/suishin.html#2

*2
その他、知的財産検定の詳細な実施結果データについては、知的財産教育協会HPを参照。知的財産教育協会“知的財産検定 実施結果データ”
http://www.ip-edu.org/exam/jisshikekka.html

*3
「知的財産検定対策講座」の一例として、國學院大學「知的財産検定2級対策講座」がある。
國學院大學“知的財産検定2級対策講座(知的財産教育協会公認)”
http://www.kokugakuin.ac.jp/syusyoku/skill/kouza/IntellectualProperty.php

*4
技能検定は、労働者の有する技能を一定の基準によって検定し、これを公証する国家検定制度。厚生労働省“技能検定制度”
http://www-bm.mhlw.go.jp/general/seido/syokunou/ginou/index.html

*5
2007年7月8日(日)ならびに11月に実施予定。
知的財産教育協会“知的財産検定年間実施予定”
http://www.ip-edu.org/exam/schedule.html

〈知的財産検定に関する問い合わせ先〉
知的財産教育協会 検定運営事務局
〒105-0002
東京都港区愛宕1丁目3番2号14階
電話:03-3438-2147
E-Mail:kentei@ip-edu.org