2007年7月号
海外トレンド
韓国・漢陽大学施設内にTAMAの活動拠点
双方のビジネスマッチングを目指す
顔写真

岡崎 英人 Profile
(おかざき・ひでと)

社団法人 首都圏産業活性化協会
事務局長


2005年に始まったTAMA協会と韓国・漢陽大学の産学・産産連携。同大学施設内にTAMA協会コーナーができるまでに拡大している。双方の狙い、今後の展望を述べる。

交流の経緯

社団法人首都圏産業活性化協会(TAMA協会)と漢陽大学との出会いは、2004年2月に同大学の柳 太洙教授がTAMA協会事務所を訪問したとき。柳教授は漢陽大学卒業後、韓国大手企業を経て慶応義塾大学で博士号を取得し、日本の大学でも教鞭をとったことがある好人物である。

その後、柳教授のコーディネートにより、同年6月にTAMA協会の古川勇二会長(東京農工大大学院技術経営研究科長)と私が漢陽大学の安山(あんさん)キャンパスを訪問するとともに、2005年3月には古川会長と金総長で双方の産学・産産連携を踏まえた協定書の締結に至り、交流が始まった(写真1)。

将来の技術開発センター
写真1

写真1 TAMA協会古川会長(左)と漢陽大学
     金総長

漢陽大学は1939年に技術者教育の東亜工科学校として2学部でソウルに設立されたのが始まりだ。1980年にはソウル郊外の安山にもキャンパスを設置した。現在19学部、8研究科、学生数2万6,000人の規模で、卒業生は産業界の技術者、技術系役員として活躍中である。同大学は産学連携による地域産業振興を目的に、1997年に独自の産学連携機構(Education-Research-Industry Cluster Ansan=ERICA)を提唱、2002年には安山キャンパスが将来の韓国の技術開発センターと認定された。2004年から5年間、韓国政府から毎年約6億円のクラスター予算の支援を受けている。同大学が中心となり、大学のリソースを最大限に活かして、地域の中小企業(京畿道安山市西部地区工業団地には約6,300社の中小企業が立地する)との産学・産産連携を推進しながら産業クラスターを形成することを目指している。

TAMA協会のノウハウを取り入れる

漢陽大学がTAMA協会との連携を積極的に進める理由は、韓国政府の支援を受けている期間中に、地域の中小企業や他の大学を巻き込んで会費制による地域産業振興支援機関の立ち上げを目指していることに起因する。すなわち、支援機関の立ち上げに際しては、同大学はTAMA協会やTAMA-TLOの具体的な事業運営のノウハウや、TAMAに対して関連大学や中小企業がどのようにコミットしているかについて非常に関心があり、できればそのノウハウを取り入れたかったのである。

図1

図1 漢陽大学・安山キャンパスレイアウト

積極的な連携の意思は、2005年8月にキャンパス内に整備した4階建てのERICAセンタービルの一部スペースをTAMA協会に無償提供していただいたことに表れている。このビルには大学のリソースを活用して地域の中小企業を支援するリエゾン機能に加えて、同センターの日、米、独の3カ国に留学した経験のある3教授を窓口とした国際連携機能もある。この機能の一環として、同センターから約60m2のスペースの無償提供を受け、同センターの支援を受けながら韓国における産学・産産連携を希望するTAMA企業のサポートをしている(図1)。

漢陽大学生が日本で就職

協定内容を実施に移すために、次のような交流を行ってきた。双方の具体的な連携案件も生まれつつあるが、特筆したいのは、インターンシップに参加した漢陽大学の学生が、2008年4月にTAMA企業に就職が内定したことである。採用難の日本にあって優秀な学生であれば国籍を問わず採用したいのが、中小企業の現状である。これも、交流の成果ともいえる。

1. 漢陽大学3年生のTAMA企業でのインターンシップの実施(2005年1月~)

夏・冬休みの4回、延べ12名の学生をTAMA企業9社が受け入れた。インターンシップ後は成果報告会を実施しており、特に7名のインターンシップ生を受け入れた2006年7月には、柳教授も参加していただき「日・韓・伊のミニ国際交流 in TAMA(インターンシップ成果報告会)」を開催した。

2. TAMAコーナーの活用(2005年8月~)

韓国における市場調査や連携企業の発掘を目的に現在まで2社が活用している。

3. TAMA企業7社の安山先端EXPOへの参加(2005年10月27~29日)
4. 漢陽大学の家族会社(漢陽大学との関係が深い韓国中小企業)5社の東京都産業交流展への参加(2006年10月19・20日)
5. 双方の活動内容を紹介する3回のシンポジウムの開催(漢陽大学2回、TAMA1回)

これからの交流
写真2

写真2 国際交流会の様子(正面右から2人目)
     が柳教授

TAMA企業は、既に漢陽大学の研究者や韓国中小企業との連携を行っているが、この連携は柳教授のコーディネートをはじめとした大学の積極的な関与の結果ともいえる。海外との交流を行うに際しては、適切なコーディネート機関やコーディネータの存在が必須であると考える。その意味からもTAMA協会-漢陽大学の交流は成果が出やすいシステムが出来上がっているといえる。

交流も本年で4年目を迎えた。今後は、双方の交流の幅を広げて、[1]TAMA地域内大学の研究成果の韓国企業への技術移転、[2]漢陽大学の研究成果のTAMA企業への技術移転、[3]漢陽大学家族会社とTAMA企業のビジネスマッチング会の開催などに加え、[4]ERI Cluster-TAMA技術フォーラムの開催、[5]TAMAの大手企業OB技術者のERI Clusterへの派遣等を通じて、双方にメリットがあり、具体的な成果につながりやすい交流を行っていきたい。