2007年7月号
単発記事
産学官民連携はコミュニケーションからはじまる -関西ネットワークシステム(KNS)-
顔写真

遠藤 達弥 Profile
(えんどう・たつや)

財団法人 全日本地域研究交流協会
事業部次長


産学官と民間の人々でつくる関西ネットワークシステムの発足過程と活動を紹介する。会合が終わったあとは必ずお酒の入った交流会。このコミュニケーションから連携が生まれる。

「必ず(K)飲んで(N)騒ぐ会(S)」、関西ネットワークシステム(KNS)の別名である。この言葉を見て読者の多くは、とある組織を思い浮かべたのではないだろうか。そう、岩手ネットワークシステム(INS)、「いつも(I)飲んで(N)騒ぐ会(S)」である。

KNSは、INSのようなフラットな関係をぜひ大阪でもつくりたいという強い思いから、(財)大阪市都市型産業振興センター扇町インキュベーションプラザ所長である堂野智史氏らを中心として立ち上げられた産学官民のコミュニティである。堂野氏は「大阪は閉鎖的で、それに嫌気がさしていた」という。

KNSの発足

2003年6月に正式発足し、現在、関西の2府4県を中心に、北海道から沖縄まで約220名の会員が、所属する産学官の肩書から離れ個人として参加している。活動は、年4回の定例会と発足当初からある6つの研究会*1、さらにミニ井戸端会議などがあり、少人数のものから100人を越えるものまで年間でのべ約80回、週1回以上関西のどこかで開催されているという感じである。

KNS設立のきっかけは、2001年10月、初めて大阪で行われた「第1回INS in おおさか」にさかのぼる。その事務局として参加したことをきっかけに、その後、大阪の人たちを事務局として開催することを考えるが、当時INS事務局長の岩渕 明岩手大学教授から、「やるのであれば、きちんとやるように」との言葉を受ける。「それでは」と、産学官連携推進会議に参加していた岩渕教授を京都まで追いかけ、会談後準備会を発足させた。

その結果、翌年11月には第2回を三重県大阪ベンチャーサロン事業と共催で開くことになる。いかにも大阪らしい道頓堀にあるくいだおれの宴会場にパソコンとプロジェクター、スクリーンを持ち込み、岩手と関西からの報告とその後交流会が行われた。80人の会場に120人もの人が集合し、大いに盛りあがり、参加者の中から関西でもINSのようなコミュニティを立ち上げようという機運が高まった。堂野氏はこのとき以前の失敗から躊躇(ちゅうちょ)していたが、後の発起人であり、現在のコアメンバーとなる人たちから背中を押されるようにして、KNS設立準備会が発足した。

その後、INSと交流を重ねながら、KNSの発足へとつながっていくわけだが、一方で、INSの関西支部としても活動しており、現在までに計6回、昨年11月には大阪を出て神戸で開催、第3回には増田前岩手県知事が参加している。

KNSの目的と活動

KNSは、産学官民の会員同士が互いにフラットな関係性を構築し、フェースツーフェースのコミュニケーションを深め、顔の見える関係を築くことを目的にしている*2。また、会則にも、「代表者は会員全員とします。」としてあくまでも会員すべてが主役、自主的かつ積極的に交流・協働して活動していくことを求めている。では、実際にどのような活動が行われているのであろうか。

定例会は原則会員全員の参加で開催されるもので、シンポジウムやフォーラムなどを通して参加者の双方向コミュニケーションを深めることを目的にしている。昨年度を例に取ると、メビック扇町、阪南大学、神戸市産業振興財団、同志社大学においてさまざまなかたちで開催されている。ここでユニークなのは、定例会については会員全員が「参加・不参加の意向」と「近況」の2つをメーリングリストに流すことを求められており、このときにはすさまじい数のメールが届くことを覚悟しなければいけない。

6つの研究会は、それぞれの研究会の主査を中心に企画が練られ、ワークショップなど自主的にさまざまな活動が行われているが、講演などをただ一方的に聞くのではなく、積極的な参加が求められている。また、ミニ井戸端会議は会員相互の交流を深めるために、会員が話題提供をしたり、会員同士がテーブルを挟んでお互いに自己紹介のプレゼンテーションをしたりするなど、会員限定でより密な関係になっていくことができる。

写真1

写真1 交流会風景

KNS全体の事務局および運営を行っているのが世話人会議である。世話人はコアメンバーである20名から構成され、毎月1回、原則第3週の平日の夜に開催し、運営企画や活動全体の方針などを決定する。

そして、これらの活動に共通するのが、冒頭に書いたとおり、毎回必ずお酒の入った交流会を行うことである。会の終了後には参加者がグラスを片手に、いつも参加する会員と、また、初めての参加者とまさしく飲んで騒ぐ。ここでは、肩書など全く関係ない。話の内容は世間話から仕事のことまで広範にわたり、毎回、本音の話が終電まで続き、話は尽きずに惜しみながら一人、二人と消えていき、最後には解散ということになる。このようなことだから、交流会から参加などという人も多くいる。

KNSの仕組み

KNSの会費は無料、活動参加時に運営協力金を徴収しており、定例会と研究会については会員以外でも自由に参加できる。また、ミニ井戸端会議は会員のみの参加であるが、会員に同伴してオブザーバーとして、会員以外でも参加することは可能である。なお、交流会費は別途、徴収している。

非常に気軽に参加することができるが、同時に、それぞれが主役であり積極的に参加して楽しんでもらうために、会員には年2回以上の参加が再更新のためには義務づけられている。また、毎年、会員となるためには、メールでの再更新の意思表示が必要になる。それから、会員はメーリングリストに登録されて案内が流れるが、定例会についてはかならず返事をしなければならない。さらに、新しく会員になるためには、2回以上のオブザーバー参加と会員2人以上の紹介者を得ることで、世話人会議のメーリングリストで情報が流され、3日間クレームがなければ会員として承認される。このような仕組みによって、見掛けの会員数ではわからない、産学官民のコミュニティとともに切磋琢磨(せっさたくま)して成長をしていこうとするモチベーションの高い人のみが残るわけである。

このような中から、多くの人と知り合い、顔の見える信頼と困ったことがあれば教えてもらえる関係が生まれ、新しいビジネスや企業にもつながっていく。そして何よりも元気をもらうことができるような関係がつくられていくのである。

関西方面の人は、あまり難しく考えずに、KNSのホームページをのぞき、興味のある会議に一度参加してはどうだろうか。

*1
インキュベート研究会、産業クラスター研究会、中国ビジネス研究会、循環型社会研究会、営業販売研究会、まちづくり研究会。

*2
パンフレットには、目的として「KNSでは、地域の自立のために重要な産学官民の有機的なネットワークを形成するため、広範な交流を図り、社会に貢献する関西の科学技術と産業の振興を図るとともに地域経済の活性化に寄与することをめざします」とある。