2007年7月号
編集後記

「産学官連携のキーワード表を作りたい」。それを使えば読者の検索に役立つに違いない。そう思ってもう半年以上も編集委員会で議論しているが、やればやるほど産学官連携の範囲の広さを思い知らされることになる。本号の産学連携学会大会レポートにセッションの分類概略が出ているが、これは申し込まれた演題をもとにセッションで議論がしやすいようにと分けたもの。産学官連携の実務者には違和感はない。しかし、例えば「知財」と「地域連携」という2つのセッションを見ても、知財の関連しない地域連携はまれだろう。どこで線を引くか難しい。分類表を作りたいという一つのことからも、産学官連携が複合した、重層性のある、極めて多くの要素から成り立っていることが浮かび上がる。

(荒磯委員)

本誌の編集体制では、私を含めた各専門分野の編集委員等が記事企画を提案するが、執筆を依頼し、時に取材し、記事を仕上げていくのは編集部の人たちである。各種事例の単なるPR記事に終わってはいけないとの反省から、最近、執筆者や取材対象者のご協力の下、編集部によってメリハリをつける工夫が強められている。先月号の「設立相次ぐ大学発ベンチャーをJSTが調査」は、内部の執筆で協力を得やすい事情もあったが、分析の追加も行われた例である。「平均年商は5,000万円と伸び悩む」との副題によって重要論点が浮き彫りになるとともに、対象ベンチャーを3タイプに分類し、具体的データで経営的に自立性の高い企業とそうでない企業がどのくらいあるかを示す興味深い記事に仕上がった。今後、編集委員としても見所のある企画の提案に一層力が入る。読者の皆さまの忌憚のないご意見をお願いしたい。

(児玉委員)

山形県米沢駅から乗ったタクシーの女性運転手。助手席前の名札に「ホームヘルパー2級」と記されていた。独り住まいや車いすのお年寄りを家の中から車まで介助することもしばしば。「支える時、どのくらい力を入れていいか、勉強してわかった」。その会社では三十数人の運転手のうち6人がヘルパー。「ヘルパー指名のお客さんも多い」という。地方ではタクシーという民間の力がなければ地域社会を維持できない。同市で開かれた産学連携学会で、地方国立大学が製造業、農業、医療、福祉などさまざまな分野で企業、行政と連携している事例が発表された。ある研究者は「消えようとしている大学、地域社会」と言ったが、活路を探る各様の試み。京都の産学官連携推進会議とは顔つきの異なる“もう一つの産学連携”と映った。

(登坂編集長)