2007年11月号
特集  - 中小企業の技術・経営をお手伝い
桐生市が拠点の群馬大学工学部の新学科を太田市が誘致 -地域産業活性化への期待広げる
顔写真

小林 豊 Profile
(こばやし・ゆたか)

群馬県 太田市企画部
政策推進室 室長


2007年4月、群馬大学工学部生産システム工学科が太田市に開校した。工学部の拠点は桐生市。桐生以外に置かれる初めての学科である。太田市は自動車・同部品製造業を中心とした北関東一の工業都市であるが、近年の中心市街地の空洞化が進む中、群馬大学の新キャンパス誘致を行うことにより、地域産業の活性化への期待が広がる。

はじめに

群馬県の南東部に位置する太田市は、平成の大合併で人口約21万人を擁する都市となり、2007年4月には特例市の認定を受けている。

写真1

写真1 「ものづくり教育研究施設」完成イメージ
     (2008年3月完成予定)

この太田市に2007年4月、群馬大学工学部生産システム工学科が開校した。工学部の拠点は桐生市にあるため、この新設学科は桐生市以外に置かれる初めての学科である。

太田市の施設である「ものづくり教育研究施設」(写真1)を舞台に、地場産業に根差した共同研究開発を行うことにより、人材の育成、地域経済の発展、さらには中心市街地の活性化を促すことが期待されている。

連携のきっかけと経過

今回の産学官の連携は必然的な成り行きであったといえる。団塊世代の有能な熟練工が大量退職し後継者不足に悩む地元産業界、独立行政法人となりこれからの運営・組織のあり方を模索する大学、シャッター通りが目立つ中心市街地を再生したい自治体-この3者の思惑が一致して連携が実現した。

経過は次の通りだ。2006年1月、太田地域に学科のキャンパスを設置すること等を目的として「地域ものづくり教育研究整備推進協議会」が発足。

同年4月、群馬大学が文部科学省と新設学科の設置に関して事前協議を行い内諾を得た。

太田市とその周辺の産業構造の特徴

太田市は工業、商業、農業のバランスのとれた産業構造を形成している。

2006年の製造品出荷額は1兆9,302億円で、29年連続して北関東の自治体中、第1位を誇る。自動車・同部品製造業を中心とした北関東屈指の工業都市である。

商業の代表的指標の年間商品販売額は6,564億円(群馬県第3位)。郊外型大型店(イオン等35店舗で売り場合計面積は約8万7,000m2)が、既存の旧商店街にとっては大きな脅威となっている。

また年間農業生産額が204億円(群馬県第2位)。大和芋は作付面積が全国一である。他に紅こだま西瓜、イチゴ、トマトなどの特産品がある。

市の産業で特筆すべき点は、群馬県東部地域(東毛地域)が世界的な金型産業の集積地となっていること。特に、戦時中「零戦」で有名な旧中島飛行機株式会社があり、その施設、人材、技術を引き継いだ富士重工業株式会社をはじめとする自動車産業や、これに関連する金型産業等の企業が立地している。

太田市と地元産業界の狙い

2007年問題といわれる団塊世代の退職や少子化の影響は、太田市周辺の「ものづくり企業」にとっても例外ではない。技術を継承する若い人材不足対策、金型をはじめとする高度な基盤技術を引き継ぐエンジニアの育成が喫緊の課題である。

「ものづくり立国」を目指す国の方針などでも示されているとおり、金型などの基盤技術は日本経済の成長戦略において極めて重要な分野であり、日本が得意とする世界に誇る技術である。しかし、現在は中国などのアジア諸国との激しい国際競争にさらされている。

本市に設置された生産システム工学科は、国際的に活躍できる生産技術者、研究者はもちろん、総合能力を身に付けた経営者の育成をも目的としている。同学科卒業生の地元企業への就職や、地元ものづくり産業発展への貢献を期待するものである。

同学科には、夜間主コースが設置され、夕方6時から3時間以上の講義が行われている。働く若い人材にとって貴重な教育の場である。同時に、企業にとっても自社の社員の技術力の向上を図ることができる。「企業の中に博士がいる、大学の中に企業技術者がいる」といった、産学連携の目的そのものの実践が期待できる。

生産システム工学科が入る太田キャンパスは、太田市の中心市街地に位置している。当市の中心市街地は、空き店舗の増加、居住人口の減少など空洞化が進み衰退している。この現状を何とか打開しようと、街中へ市営住宅を建設したり、東武鉄道の高架事業を推進したりして市街地の整備を進めている。

群馬大学の新キャンパスの開校がきっかけとなって、多くの学生、若者が街中にあふれ、地元商店街がにぎわいを取り戻すことを期待している。

おわりに

太田市における産学官連携の取り組みを述べてきたが、ここまで順調に推移してきている。2007年2月19日、群馬大学と太田市の間で「相互友好協力に関する包括協定」が調印され、協力連携を深めている。

この連携はまだスタートしたばかりであり、解決すべき課題は山積している。大学と地域産業界の共同研究開発、優秀な人材の輩出、商店街の活性化、さらに学生と地域の交流等を通じて、地域の発展に寄与できることを切に願うものである。