2007年12月号
特集2  - 八尾のものづくり
八尾市の中小企業は「バリ」「レーザ微細加工」の産学官の研究会で技術を高める
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宮崎 剛直 Profile
(みやざき・たかなお)

八尾市 中小企業サポートセンター
産業振興アドバイザー


工業都市・大阪府八尾市の中小企業は金属材料の加工工程で生じる「バリ」や「レーザ微細加工」について産学官連携で研究会に取り組み、技術力を高めている。

八尾市は大阪市の東部に隣接する人口27万人の工業集積地である。製造品出荷額は1兆1,107億円で大阪府下4位、製造業の事業所数は3,300で同3位である。工場の業種別構成は金属関連の割合が28%と最も多く、次いで一般機械器具である。

八尾市中小企業サポートセンター*1設置

八尾市は平成13年4月に産業振興条例を施行。その趣旨に沿って、平成14年6月「八尾市中小企業サポートセンター」を設置した。個々の企業の相談に対応するほか、企業に共通する技術課題解決のため産学連携を進めている。そのひとつが「八尾バリテク研究会」である。

八尾バリテク研究会(平成15年12月~平成18年12月)

八尾バリテク研究会(第1期)は平成15年12月、八尾市と関西大学(先端科学技術推進機構)の産学連携協定第1号の事業として発足した。金属材料のプレス成形・切断・切削・研削等の加工工程において生じるバリをいかに抑制するかは企業にとって永遠の課題。指導者はバリテクノロジーの第一人者である関西大学システム理工学部機械工学科の北嶋弘一教授。これに大阪府立産業技術総合研究所の支援を求め、中小製造業9社が参加。油剤メーカー、工具メーカーも協力企業として参加した。

研究会は隔月の頻度で開き、参加企業の工場現場を持ち回りで見学し助言しあう方法をとった。現場を「見て」「聞いて」「触って」意見交換。成果の一例を挙げると次のようなものである。

A社: 100μの穴加工で生ずるバリ対策と微細溝加工で発生するバリ対策
手作業に別の手法を付加して50%~90%に縮小、バリ処理時間も大幅短縮。微細溝加工で発生するバリはMD処理で完全除去。
B社: 半導体用部品に3,108個の穴加工をする際に断面に発生するバリ対策
裏面から小穴加工、逃げ加工のあと工具で逃げ穴と小穴の境界のバリをとる方法でうまくいった。
C社: 単車のブラケット製造工程で発生するバリ対策
関西大学にプレス用パンチのDLCコーティングを依頼→関西大学より神戸製鋼を紹介→神戸製鋼にてTIN処理したものをテストした結果良好な成果を得ている。約4,000パンチで刃先欠け。パンチ刃先形状を変え再トライ。その後、当社知り合いの会社に依頼。現在6,000~8,000パンチまで耐久性向上(材質HTP60、材厚10ミリ)。
D社: ガス器具部品加工で発生するバリ対策
バリテク研究会の協力企業(工具メーカー)の提案を受け、先行刃付きのドリル試作を依頼。

第1期バリテク研究会に集まった9社が3つのプロジェクトチーム*2を編成して研究開発に取り組んだことがあった。関西大学北嶋教授を中心に大阪府立産業技術総合研究所の藤原研究員が指導助言を行った。

平成17年6月、第1期とは別の8社が参加する第2期研究会が発足した。この研究会でも、相互に工場現場を訪問見学することで現状を認識し、メンバー間の連携意識が高まった。

平成19年度からの研究会活動

平成19年6月からは第1期、2期研究会のメンバーと、新たに参加を希望する企業とで装い新たな「八尾バリテク研究会」をスタートさせた。これに参加する企業は、例えばアルミ超精密加工を専門とする株式会社中田製作所、エッチングダイの製造でトップシェアを有する株式会社塚谷刃物製作所、精密切削加工を得意とする山本精密株式会社などそれぞれの専門分野で高い技術力を有する22社。これまで通り北嶋弘一教授の指導、府立産業技術総合研究所の支援を得て実践的な研究会を進めている。

同研究会の合言葉は「バリのことなら八尾に聞け」である。バリ対策に関する技術・ノウハウを蓄積し、それを全国発信できるようにとの参加企業の熱い思いがある。

「八尾レーザ微細加工研究会」

産学連携による共通課題への取り組みの2つ目が「八尾レーザ微細加工研究会」である。大阪大学接合科学研究所の阿部信行准教授の指導のもと、15社(すでにレーザ装置を導入している企業が3社)が参加して平成17年10月に組織された。これを大阪府立産業技術総合研究所が支援。大学や研究機関等を訪問し、実習も兼ねた体験学習を通じてレーザ技術の開発・応用利用の動向を学ぶ。

この2年間に11回開催。基礎知識、技術の進歩、応用利用の現状に対する理解が深まった。その間、メンバーの株式会社レザックが経済産業省の平成18年度地域新生コンソーシアム研究開発事業に採択され、また、大阪府の基盤技術高度化支援事業に2社が認定を受けた。今後の活動について会員にアンケート調査した結果、[1]微細穴加工の実験、[2]精密溶接、[3]精密切断、[4]肉盛りの順で希望が多かった。

大学の研究を支える産学連携

大学の先生の研究を、ものづくりを得意とする中小企業が手助けする「中小企業が無理なくできる産学連携」の橋渡しも行っている。これまでに奈良先端科学技術大学院大学(ロボットハンドの小型軽量化、ウェアラブルコンピュータのナビゲーション用電源)、奈良工業高等専門学校(介護用移乗機)、京都大学医学部(小動物の脳内電位測定のための電極移動・固定装置)等で実績を挙げている。活動を通じて中小企業の技術開発力は着実に向上している。本年11月27日には企業が立命館大学草津キャンパスに出かけて製品・部品の展示およびプレゼンテーションを行う。

*1八尾市中小企業サポートセンター
センター長(産業振興課職員)1名、事務補助員1名、アドバイザー1名、コーディネータ6名(アドバイザー、コーディネータは企業および公的機関のOBが非常勤で交代勤務)。製造現場に積極的に出向き、当該企業の課題解決にもっともふさわしいと思われる専門機関や専門家との橋渡しをする。平成18年度の相談件数は332件。このほか、現場の製造技術向上に役立つ技術セミナーを土曜日に開催、これまでに延べ1358社、1,899名が参加。平成13年2月、公的支援制度活用のための学習会から異業種交流グループ「MATEC YAO(八尾経営・技術交流会)」(会員37社)が誕生、当センターがその活動を支援。

*2
プロジェクトチームの編成(平成17年4月~平成18年12月)
[1]バリ抑制・加工技術の研究開発
(例えば、ドリル穴の抜け際で超音波を発生させてバリを除去する方法)
[2]計測・評価技術の研究開発
(バリに関して制定されたJIS規格に対応する観察評価装置)
*試作機は完成
[3]バリ取り装置の研究開発
(切断した鉄板の端面に生ずるバリの簡易除去装置)
*試作機の一部を完成
参加企業間の信頼感と連携意識が高まり、業種や技術が異なっても技術開発の方向性や考え方を理解し合えたことは大きな成果だった。