2007年12月号
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産学官連携ジャーナル3年間を振り返る 記事に見る“連携人”の言葉

月刊「産学官連携ジャーナル」はおかげさまで3周年。2005年1月の創刊以来、変化の激しい産学官連携の動向をお伝えし、コーディネータなど携わる人々にオピニオンを発信してきました。これまでのジャーナルから、興味深い記述や、なるほどと思う提言などを拾いました。当誌の魅力の一端を感じ取っていただけると思います。(編集長:登坂 和洋)

[えき]する


中国の古典に工の字の上の横一本棒は天の与えてくれたもの;資源とか気象の雨・風・太陽光などを示し、下の横一本棒は地の上の人と社会を示し、この天の賜を有効利用して地の上の人と社会に幸せをもたらすのが工であるという意味を込めているという記載があると教えられた。

(西澤 潤一氏、06年7月号、巻頭言)

そもそも、科学技術の構造が変わって来たのである。ちょっと言い過ぎかもしれないが、科学と技術の位置づけの変化とも言える。従来の科学が求めてきたのは、真理の探究であり、実証論的帰納法に基づくアプローチ、すなわち、人類の未知の課題を「解く」ことが科学の目的であった。このアプローチは、社会がどう変わろうとも、科学の基本構造として変わることはない。/変わったのは、この構造そのものではなく、科学技術のもう一つの構造が必要になったことである。(石川 正俊氏、05年5月号、「産学連携の未来」)

技術移転の本質は、「より地域企業へ、より小企業へ(sell local, sell smaller)」が原則であり、一時的なイメージに踊らされることなく、技術を育てることが重要である。(森下 竜一氏、06年5月号、巻頭言)

革め[あらた]


日本はエネルギーや環境問題、少子化、高齢化問題など多くの課題を抱えている。これらの課題を解決していくことで新しい価値が生まれ、日本発のイノベーションにつながる可能性を秘めている。テーマによっては複合的な領域の研究者が共同で研究を行うことも必要となる。(山下 勝比拡氏、07年9月号、「産学の個々の研究者のつながりを重視する東芝の産学連携」)

世界一の研究をすることがあって、初めて、世界一の知財立国になれるのです。次は、その研究を世界一に役立てること、日本からいいベンチャーが生まれる、いい商品が生まれるよう進めることです。 そして、産学連携関係者の隅々にこの目標を浸透させるという「知財の風土改革」を起こすことです。

(荒井 寿光氏、07年2月号、「日本を知財立国世界一へと推進」)

興す


(フィンランドの)オウル市の人口は約12万人で、わが国ではむしろ中小の都市に匹敵する。25年前ここにはハイテク技術も大企業も資本もなく、激しい国際経済競争の中、経済状況は悪化するばかりだった。この時、「何とか北部圏の衰退の途をくい止めたい」という地域の強い声があがり、オウル大学はバイオとハイテクノロジーに特化した集中と選択の戦略的実践に踏み切った。

(坂田 敦子氏、05年5月号、「地域に根付くコーディネータを目指して」)

産学官連携を推進している一企業として、次のことを期待したい。まず、地域の活性化をあげたい。これは欧州の大学に多くの例が見られ、我が国でも京都、浜松の各企業群への、京都大学、静岡大学の長期にわたる技術的支柱としての役割が知られている。次に、我が国の産業振興への寄与をあげたい。このために、英国で始まった近代特許制度の理念であり、我が国の特許法第1条にも記載されているように、発明奨励の目的は、産業の発展であることを産学官ともに改めて認識したい。(庄山 悦彦氏、05年12月号、巻頭言)

究める


私はノウハウという言葉はあまり好きになれない。というのは、「ノウハウ」という曖昧な表現でいつもごまかされている気がするからである。我々研究者は本来、ノウハウとして片付けられていた技術や技能を科学的に解明し、さらにその対策を探ることを使命としてきた。つまり技術の研究は、言わばノウハウのような暗黙知を、形式知にいかに解き明かすかの仕事をやってきたとも言える。とはいえ、残念ながら依然として多くのノウハウは残されている。

(中川 威雄氏、05年3月号、巻頭言)

欧州は、今までは基礎研究偏向で、産業化は遅れがちでした。一方米国は産業応用が優先です。こういった価値観の違うものがうまく新しい理想的な生産をやるには、共創なのです。(佐々木 正氏、06年12月号、「共創こそ事業化の要」)

大学が実際に大規模な臨床試験を行うのは非常に難しいのではないかと思います。治験に近いところまでインキュベーションして、高額で企業が引き取ってくれるところまでは大学の先生がボランタリーワークで行う、あるいは川上の段階から大学と企業の共同研究テーマにする、といった方法があると思います。

(秋元 浩氏、07年3月号、「医薬品の研究開発から製品化まで:産学連携で学に何を期待するか」)

連ねる


日本人には“宮大工技術”、“たたら製鉄技術”、“西陣織”、“漆塗り”など、元来新しい技術に興味を持ち自らの工夫で丁寧なものづくりをし、さらにはきめ細かなサービスを提供するDNAが宿っている。このように考えると、これまで産業界で愚直に築き上げてきたものづくりの能力と、大学の高い研究能力がうまく連携することにより、特徴ある「日本型産学連携社会」が醸成され、グローバルに日本がリーダーシップを発揮できるのではないかと、勇気がわいてくる。

(古池 進氏、06年9月号、巻頭言)

中小企業は、わが国産業の競争力を支える役割を担う。その分、技術進歩や環境変化に高度な対応を要するが、産学官連携は十分活用されていない。その理由は、これまでの連携が、大手企業向けが中心だったことにある。

(後藤 芳一氏、07年10月号、巻頭言)

最近、産学連携の一つの形態として、プロジェクトベーストラーニング(Project Based Learning:PBL)が盛んとなってきた。日本のPBLは、どうすれば成功するかを常に目指している。しかし、アメリカでは、PBLは、いかに失敗から立ち上がるか、予想もしない困難に立ち向かえるかの能力開発の方法として理解されている。(福田 収一氏、05年4月号、「産学連携についての一つの私見 ―東京都産学公連携推進準備室室長としての2年間から―」)

失敗を恐れずにチャレンジする人たちが、国内外から参加して生き生きと仕事ができるか、そのような「場」を作れるか、これこそが日本の「産学官連携」の課題なのである。

(黒川 清氏、06年1月号、巻頭言)

「産学官連携」の特徴の1つにスピルオーバー(波及効果)がある。「産」と「学」が当初の目的を達成すべく「連携」する際に、経済的、社会的、ひいては文化的な付加価値が派生的に生み出されることがしばしばある。一部を「産」あるいは「学」が回収することもあるが、多くの場合、受益者は社会全体であり、公共経済学で言う外部性の問題が発生する。またこれらの派生効果を事前に特定することは難しい。それがゆえに、個々のアクターの最適化の解と社会的最適の間に相違が生じるのである。/そこで登場するのが「官」である。

(原山 優子氏、05年7月号、「産学官連携とは?」)

産学連携のポイントは、複数ディシプリン融合型のイノベーションを推進する型の研究開発と、担う人材の育成にあります。なぜかと言えば、産業界における研究開発は、基本的にほとんど融合型です。例えば自動車1台製造するのにどのくらいの要素技術が必要かを考えればよく分かります。

(山野井 昭雄氏、06年10月号、「産学連携による人材育成の必要性」)

起こす


セラドン社から、我々の特許の実施権をすべて買い取りたいという申し出が突然舞い込んだ。当時の我々には米国スタイルの分厚い契約書を取り扱うことができる人材も経験もなく、目の前の大金に目が眩み(?)、正常な判断ができなかった。この経験から、我々は早急に企業体を形成しなければいけないと判断し、2002年の(株)ビークル起業に結びついた。

(黒田 俊一氏、05年6月号、「産学官連携によるバイオベンチャー設立まで」)

米国で技術力のあるVB(ベンチャービジネス)が勃興したのは官の掛け声や補助金ではなく、マイクロソフト、インテルなどの成功が次の起業家たちを鼓舞したからである。彼らを鼓舞するのは起業呼び掛けのイベントでも補助金でもなく、過去の成功事例であることを肝に銘じるべきである。

(西岡 郁夫氏、07年2月号、巻頭言)

人の一生涯の人生とVB(ベンチャービジネス)は共通点が多い。よい親の愛情で育てられ、よい教育を受け、素晴らしい家庭環境で育つことは幸福なことであるが、その愛情が溺愛でしつけが甘ければ社会人になってから苦労が尽きない。VB支援も時期、内容等細心の注意が必要である。(堀場 雅夫氏、07年4月号、巻頭言)

学ぶ


大学は従来タイプの教育・研究にとどまらず、社会的な問題解決のための教育・研究を積極的に進めなければならない。大学は、「象牙の塔」から「開かれた大学」へと転身しなければならない。(清成 忠男氏、07年3月号、巻頭言)

若い方々の育成で調査してみますと、ポスドクや博士課程院生の99%は依然として大学でのポストを志向しているようです。でも私は残りの1%に期待しています。(齋藤 省吾氏、05年8月号、「今日までの産学官連携の総括とこれからのビジョン」)

当たり前だが産業界は自らが持っている機能と同じものを大学には期待はしていない。もし大学が産業界と同じ発想やレベルや意識で研究開発をしても無駄になるか、単なる下請けで終わることを示している。

(出川 通氏、06年8月号、「産学連携でのWIN-WINを得るには」)

(米国では)大学を中心とする学術界は日本以上に厳格なものとして存在する反面、多様な経歴や文化を背負う者が出入りし、自由な討議が行われる。こうした側面があってこそ、大学の異質な科学的知見の幅が広がると考えるようになった。(岡田 依里氏、07年7月号、「大学の科学研究と産学のマインドセット」)

伝える


専門性は非常に重要ですが、コミュニケーション能力やマネジメント能力など総論的に広く浅く係わる人に必要な資質は、いわゆる人間力という学位とはまた別の資質です。(門田 淳子氏、05年3月号、対談「女性とリーダーシップ―変革期における産学官連携の苦と楽とは何か?―」)

異分野融合による研究開発を進める場合、必要なことは説明責任だと思います。まあ、それほど堅苦しく考えなくてもいいのですが、要は自分が考えていることを、分野の違う人にちゃんと理解してもらえる言葉で話せなければいけません。(田中 耕一氏、05年9月号、対談「質量分析計をめぐるノーベル化学賞受賞エンジニアと医師の産学連携の実際」)

研究成果をスムーズに社会に技術移転していくために、次に掲げるキーワードを大事にお付き合いして、良いヒューマンネットを作ることを心掛けている。それは、

親しき仲にも礼儀あり
雑用は引き受ける
面談のアジェンダを準備してメールで先行送付する
研究の邪魔をしない、面談は短時間(15分目標)で終わらせる

などである。/CD(コーディネーター)はヒューマンネット・ビジネスなのである。(平野 武嗣氏、06年1月号、「ヒューマンネット・ビジネスの創造」)

今、われわれがパソコンに期待しているのは演算能力のスピードではない。多くの機能の中で、最も利用頻度が高く、重要視されているのは、インターネットやEメールに代表される快適な相互通信の環境、コミュニケーション機能である。しかしながら、計算機能中心で進化してきたコンピュータは、コミュニケーション機能を最適化する道具ではないのである。(原 丈人氏、05年11月号、「コンピュータの次の世代の基幹産業は何か? そして世界のどの国が主導するか?」)