2007年12月号
連載  - 産学連携で世界に挑む
ナルックス株式会社
自由曲面加工技術でプリンターなどの光学部品に強み
産学連携で人材を育て付加価値向上、「改善」につなぐ
プラスチック光学部品メーカーのナルックス株式会社は、レーザープリンター用などで高いシェアを占めている。大学との共同研究などに積極的に取り組むことで製品の付加価値を高め、社員を育てている。

顔写真

北川 清一郎 社長

プラスチック光学部品メーカーのナルックス株式会社(本社・大阪府三島郡島本町)は大学の先端的な「知」を積極的に導入する一方、「官」を含めた連携にも取り組んでいる。新しいことに常に挑戦している。共同研究などの成果がすべて新たな事業に結び付いているわけではないが、製品の付加価値向上に寄与し、新しいことにチャレンジすることで社員も育つという。





写真1

写真1 すばる用に開発した188レンズアレイ

同社が手掛ける製品は多岐にわたるが、主な領域はレーザービームプリンター、光ディスク、フォトセンサーなど。特殊なものでは、わが国の国立天文台ハワイ観測所「すばる」光学赤外線望遠鏡に組み込まれたマイクロレンズアレイ(写真1)がある。同社が開発したマイクロレンズアレイは大気の「揺らぎ」に合わせて補正する装置のセンサーに組み込まれ、理論的に限界の範囲までの解像度を実現した。

形状の最適化範囲が広がる
写真2

写真2 レーザービームプリンター用レンズ

レンズの種類で見ると、回折格子、サブ波長格子、自由曲面光学レンズは得意分野。自由曲面光学レンズとは連続的で自由度が高い形状のことであり、3次元形状定義式で表される。従って、光学設計における形状の最適化範囲が広がり、性能が上がったり、コンパクト化が可能になったり付加価値が期待できる。応用例では、レーザープリンターの走査光学系やレーザービームを整形する光学系に用いられて産業応用を進めている。同社独自のナノメートルレベル制御の自由曲面加工技術を駆使し、従来数点のレンズで担っていた機能を単独で果たせるようになった。これにより、部品点数が削減でき、従来の3分の1へのコンパクト化が可能となった。この技術はレーザービームプリンターなどに用いられている(写真2)。

カラープリンター向けはトップシェア

レーザープリンター用の光学部品を供給するメーカーでは大手。カラープリンター用に限るとトップシェアだという。同社製品の輸出比率は20%だが、国内企業に販売する形のものでも、物流で見ると中国などへ向けられ現地で最終製品に組み立てられるものがほとんど。実際は出荷する光学部品の70~80%は中国やASEAN諸国に送られるという。

米アリゾナ大学博士課程に社員が在籍

これまで取り組んできた産学官連携事例をみよう。

1997~2002年、大阪府地域結集型共同研究事業(テラ光情報基盤技術開発)に参加。テーマは「表面無反射構造作製技術の開発」でサブ波長格子の金型作りやその光学設計を行い、基盤技術を構築した。
大阪大学レーザー核融合研究所(現、レーザーエネルギー学研究センター)と「エキシマレーザーを使った光学面の形成加工」の共同研究を行った。1995年特許出願、2000年特許登録。実用化にはなっていない。
1997年、米アラバマ大学ハンツビル校のラッセル・A・チップマン教授と2年越しで取り組んできた自由曲面光学設計のソフトウエア開発に成功。チップマン教授が米アリゾナ大学に移った今も、別のテーマで共同研究を進め、同社社員が同教授のもとで博士課程に在籍している。
2006年は、同志社大学の三木光範教授に指導してもらい、「最適化」を目的とするコンピューターの並列化処理の特殊プログラムを自社開発した。これによって、設計の演算速度は8倍になったという。

すり合わせ技術を生かせる分野

「レーザープリンターなど光学部品を多く使う製品は、まだわが国が得意とする “すり合わせ技術”を必要とする分野」。サントリー株式会社の山崎蒸溜所や技術開発センターに近いナルックスの本社で北川清一郎社長の話を聞きながら、同社がさまざまな産学官連携に取り組み、社員に勉強させている理由がわかったような気がした。学んだ成果がすり合わせ技術の「改善」に結び付き、製品の付加価値を高めているのではないだろうか。

ものづくりを「すり合わせ型」と「モジュール型」に大別する考え方がある。前者は、個別の部品の仕様を細かく決め、設計して、それらを組み合わせてつくるタイプ。自動車が代表的なものだ。後者は、製品を標準的なモジュラーの組み合わせで実現するタイプで、典型はパソコンだ。電機関係の製品はモジュラー化したことで日本のメーカーは急速に競争力を失った。

「カメラは組み合わせ型、米国型の製品になってしまったし、DVDなども補正機能をチップでできるようになった。しかし、当社が手掛ける製品の領域はまだ日本型の技術が生きている。とはいえ、将来をにらんで、違ったモデルのビジネスも探っていきたい」と北川氏は語る。これまでとは異なったモデルのビジネス、新しい産業への進出に、産学連携で学んできた周辺領域の知識が生かせるかもしれない。

(本誌編集長:登坂 和洋)



ナルックス株式会社の概要
(本社所在地:大阪府三島郡島本町、URL:http://www.nalux.co.jp
代表取締役社長:北川清一郎氏
設立:1948年7月
資本金:8,000万円
年間売上高:45億円(2007年度見込み)