2008年3月号
編集後記

「産学官連携」というコンセプトとその活動は、社会という「湖」に投じられた新しい色の水だった。新しい色は徐々に広がり産と学の色をゆっくりと変えながら、地方自治体の色を変え、金融におよび、住民の色をも変えつつある。「産・学・官・公・金・民」連携への広がりである。今、人材育成として教育の場へも浸透し始めた。思えば産と学との連携・相互作用は学問発生以来、本質的に備わっているものである。農業の効率を上げようとすれば幾何学的思考は必須であろう。

 産学官連携という新しい水が湖のすべてに広がったとき、新しい色は消える。そして湖全体が以前とは違う色になる。そのとき産学官連携は特別のものではなくなり、われわれはさらなる目標を掲げて社会の発展に努力していることだろう。

(編集委員・荒磯 恒久)

現在、グローバル企業を中心にインターネットを活用した「マスコラボレーション」と言うべき「知の連携」が急速に進展している。これは、ネットワークを活用して企業外の「知」を国籍、組織、個人を問わず世界中から集め、研究開発や生産に生かそうとするものである。例えばP&G社では、新製品アイデアの50%を外部から調達し、研究開発の生産性を60%向上させたという。また、ボーイング社の787型では、世界の100社以上の企業とのコラボレーションにより進められているという。

このようなグローバルな知の連携システムを運営するには、相当の経営力や運営ノウハウが必要と考えられるが、いずれにしても「連携」の姿はどんどん進化しており、目が離せない(「ウィキノミクス」読後感より)。

(編集委員・藤川 昇)

今月号は人材育成の記事が多くなった。大阪大学のものづくり高度人材講座は社会人向け、九州大学の情報通信技術トップ人材は修士課程専門コース、さらに立命館大学の松竹との提携は映像学部学生の質向上が狙い、と違いはあるが、それぞれの分野で産業界と連携した人材育成が深化しつつあることを示している。国を挙げて推進してきた産学官連携の成果の1つが人材育成ともいわれるが、それは変わる大学の姿をも映し出す。これらの取り組みは「産業界のノウハウを学ぶ」、「企業で役立つ実践教育」を標榜しているが、その産業界の技術経営志向のうねりを象徴的に表しているのが、永井明彦氏の「商社MOT(技術経営)人材」に関する論考。人材育成から「産学官連携」、さらには経済社会のトレンドが読み取れる。

(編集長・登坂 和洋)