2008年4月号
編集後記

2005年の創刊号とその後のいくつかを読み直した。当初意図したところを果たして満たしているのかどうかを点検するためだ。創刊号を飾った当時の相澤東工大学長と沖村JST理事長の対談には、その方向として産学官連携活動を推進する側からのみでなく、広い意味で産学官連携につながりのあるコミュニティーに対してメッセージを発信し、相互の対話を通じてそのコミュニティーを広げていくべきとの教示があった。2006年ごろまでは前者の記事が多くみられたものの、それ以後は後者が多くなり、少しずつではあるが、本ジャーナルを通してひとつのコミュニティーが創造されつつある。しかしながら、当時と比較して一段と流動化した社会的背景の中で、いかに効果的に記事を発信、対話を促進するか、その編集企画力の質的向上が問われていることを肝に銘じている。

(編集委員長・藤井 堅)

産学官連携の成功のひとつの象徴は、大学発ベンチャーの株式公開ではないだろうか。だが今年に入り、わが国の株式市場は低迷し、時価総額も中国市場に抜かれた。兜町に古くから伝わる相場格言に「子は繁栄」とあり、今年は株価が上昇する年に当たるはずなのに……。

こうした中、私は政府に対して基本に立ち返った政策の実践を期待する。つまりイノベーションの源泉である大学発ベンチャーの支援の重要性の再認識である。もちろん大学発ベンチャー自身が知財やマーケティング等の成長志向の戦略を作ることが基本だ。しかし、あえてここで「ベンチャーファンドをはじめ大学発ベンチャーへの資金供給システムの堅持は、アジアの中で日本が生き残るためのクルーシャルな課題」と問題提起したい。

(編集委員・西山 英作)

政府が司法試験の年間合格者数増加にブレーキをかけた。弁護士会の反対によるが、法曹の質も課題。だが、出口が細くなれば有能な人材は法科大学院を目指さなくなり質はますます低下する、との懸念も。この閣議決定はキャリアパス多様化を取材中のこと。「いずこも同じか」と思った。その旬日ほど前、新聞は、大学院博士課程が相変わらず定員割れであることを小さく伝えていた。しかし異なる点がある。司法改革については、メディアが国民生活に関係するととらえ多角的に報道しているのに、ポスドク問題への関心は低いこと。国民の反応が少ないからだ。科学技術立国を掲げる足元で理学、工学の博士課程の定員充足率が3分の2。これが10年後、20年後のわれわれの生活に影響しないはずはないのに・・・。何が問題なのか。

(編集長・登坂 和洋)