2008年5月号
特集  - 自然エネルギー
海洋温度差発電
30キロワット発電装置で出力を確認
顔写真

門出 政則 Profile
(もんで・まさのり)

佐賀大学 海洋エネルギー研究
センター長


海洋の表面の層の海水温度に比べ、深さ600~1,000メートルの海水温度は20数度低い。この差を利用し、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するのが海洋温度差発電である。

はじめに

海洋の表層海水と深層海水の温度差を利用して発電する海洋温度差発電は、自然エネルギーの中でもエネルギー賦存(ふそん)量の多さや安定性などの点で、最も有用なエネルギー源の1つとして実用化が期待されている。発電の原理自体は、火力や原子力発電などと同じ原理であるが、実用化に向けての最大の課題は、利用可能な海水の温度差がたかだか25 度程度であることから、エネルギー変換理論熱効率が最大でも数%であるということ、さらにはこの温度差を得るために1,000 メートルレベルの深海から深層海水をくみ上げる必要があることである。

海洋温度差発電はフランスのダルソンバールが1881 年に挑戦して以来、多くの挑戦が試みられている。特に、1973 年の第1次オイルショック時には、新たなエネルギー源として日本と米国で本格的な研究が行われ、実証プラントが、相次いで建設され、実験が行われたが実用化には至らなかった。佐賀大学での海洋温度差発電の研究もこれを機に開始され、以来30数年継続的に海洋温度差発電の研究を行っている。ここでは、海洋温度差発電に関する研究の現状と展望について紹介する。

海洋温度差発電と複合利用
図1 海洋温度差発電の原理

図1 海洋温度差発電の原理

海洋温度差発電は、表面層の温海水と深層約600~1,000 メートルの冷海水との20 数度程度の温度差から熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電方式である(図1)。このエネルギーの源は、地球の海面に注いだ太陽からのエネルギー(1日平均約160 ワット/平方メートル)である。この熱エネルギーを表層のポンプで熱として回収する。海の表面積は、地球の3 分の2 と膨大であるが、この希薄な表層の熱エネルギーを回収する必要があり、一方で1,000 メートルレベルの深海から深層海水をくみ上げることも必要となる。発電の原理から熱エネルギーの電気への変換効率が数%であることから、大量の温・冷海水を必要とすることになる。

このような状況から、海洋温度差発電では、発電とともに持続・並行的に海水淡水化や水素製造、リチウムなどの有用資源の回収などの複合利用をする必要がある。図2 は、海洋温度差発電を中心とした複合利用の可能性を示す。

図2 複合利用の原理

図2 複合利用の原理

海洋温度差発電では、年間を通して平均的に20 度程度の温度差が必要なことから、赤道近くの島しょ国(図3 参照)が最適となる。佐賀大学では、最適地にある島しょ国パラオやインドと学術協定を結んで海洋温度差発電と複合利用の研究を進めている。また、30 キロワット海洋温度差発電装置(写真1)が設置されている佐賀大学海洋エネルギー研究センターは、海洋エネルギー研究を専門とする国内で唯一の研究機関であり、海洋エネルギーに関する全国共同利用施設として、2005 年に運用を開始している。

最近の研究成果では、99%以上のアンモニア濃度で温度差21 度、温水流量111 キログラム/秒、冷水流量111 キログラム/秒で最大正味出力13.7 キロワットを得ている。また、温・冷海水を模擬した海水淡水化実験装置でも効率よく淡水化ができることを実証している。

図3 表層と深層1,000メートルとの平均温度差

図3 表層と深層1,000メートルとの平均温度差



写真1 30キロワット海洋温度差発電システム(佐賀大学)

写真1 30キロワット海洋温度差発電システム(佐賀大学)

海洋温度差発電の課題と今後の展望

海洋温度差発電は、熱エネルギーの変換理論熱効率が数%で海洋に降り注ぐ太陽の自然エネルギーを回収する必要がある点を考えると、数メガワット程度の分散型で、経済的には複合利用することが求められる。海洋エネルギー研究センターでは、30 キロワット発電装置を利用して、正味出力が得られることを実証した。今後、実用化に向けて必要となる要素技術の確立に向けてより一層の研究を進め、確固たる基礎技術の確立を目指す。これを基に、実用化に向けての国の支援、さらには企業の技術支援を受けて1,000 キロワット規模のプロジェクトが推進されることを期待している。