2008年5月号
イベント・レポート
全国イノベーションコーディネータフォーラム2008
科学技術駆動型の地域発展を目指して

(1)産学官連携支援活動の課題を共有

平成20 年4月24 日、甲府市において独立行政法人科学技術振興機構(JST)主催による表題のフォーラムが開催された。“科学技術駆動型の地域発展を目指して” と題した同フォーラムの目的は、全国のコーディネータらが一堂に会し、それぞれの産学官連携支援活動における課題や解決策を共有しながらスキルアップを図ること。さまざまな立場や領域、地域を越えたネットワーク形成を促進することで地域におけるイノベーションの創出に役立てる。

出席者は産学官から、また北海道から沖縄まで、全国から270 名を超える人々が参集し、熱気のあるフォーラムとなった。

まず北澤宏一JST 理事長から「日本は200 兆円を超える世界第一の累積貿易黒字を持つ国であるにもかかわらず、国内は元気とは言えない状況。大学の知力というリソースを活用し地域経済を活発にする必要がある」との趣旨の主催者挨拶があった。

続いて貫井英明山梨大学学長、佐伯浩治文部科学省科学技術・学術戦略官、古瀬利博経済産業省地域技術課長から、それぞれの立場で地域イノベーションの重要性とそれを核となって取り進めるコーディネータへの期待が述べられた。

全国的視点に期待

柘植綾夫芝浦工業大学学長・前総合科学技術会議議員は、特別講演で「少子高齢化、人口減少社会が確実な中で国力を発展させ、迫っている地球規模の危機を解決するのはこの10 年が勝負であるが、いまだ産学官にこの危機意識が希薄と思われる」として、科学技術革新による社会・経済的価値の創出にはイノベーションが必須であり、そのためには科学技術の幅が広がっている現在、それらを統合する能力が必要で、それこそがイノベーション・コーディネータに求められる能力であること。また、日本の行政構造は、「知の創造」への投資は文部科学省が中心であり、「社会・経済価値創造」へはそれぞれ出口責任を府省が担っている。それらを垂直・水平に結び付けるオープンなイノベーション・パイプライン・ネットワークが必要であり、全国区的視点を持ったコーディネータにこの役割を果たすことが期待された。

梶川義実財団法人日本立地センター新事業支援部長からは「地域事業化支援人材実態調査」の結果が説明された。職名(制度名)別にはほとんどの調査項目で差は無いが、地方圏での人材不足等が指摘され、位置付け強化、ネットワーク形成、人材マッチングシステム構築等が提言された。

(菅原 幸雄=山梨大学 産学官連携・研究推進機構
文部科学省 産学官連携コーディネーター)

(2)成功・失敗事例の紹介とコーディネート活動についてのパネルディスカッション

本フォーラムでは、各コーディネータの産学連携・技術移転活動における成功・失敗事例を紹介し、これを共有することで今後のそれぞれのコーディネート活動に活かすことを目的としており、今回は株式会社山梨中央銀行の「『産学官+金』連携の取り組み」、三重大学の「地域に生きる大学の活用のすすめ」、同志社大学の「人文社会系産学連携の試み」と、大変ユニークな事例紹介がなされた。また、各パネリストのコーディネート活動事例の紹介後、「産学連携における大学(シーズ)と企業(ニーズ)の不整合の顕在化」、「地域で企業を育てる仕組み」、「地域振興の礎、人材育成、MOT 教育」をテーマに参加者を含めて討論が行われた。


1. 事例紹介「コーディネート活動の成功・失敗事例」
紹介者
込山 紀章

 松井 純
 南 了太
(山梨中央銀行 営業本部 公務・地域開発室 調査役
  山梨大学客員社会連携コーディネーター)
 (三重大学 文部科学省産学官連携コーディネーター)
 (同志社大学 リエゾンオフィス・知的財産センター
  NEDOフェロー)

3者の中で私がもっとも興味深いと感じたのは山梨中央銀行の事例であった。地域経済の活性化のために行員がコーディネータとなり、山梨大学等の研究機関と企業との橋渡しを行うことで、新事業・新産業を創出しようとするさまざまな取り組み例が紹介された。その中で特に関心を持ったのは、行員の視点での技術シーズ集を作成・情報発信していることだった。行員が自ら大学等の発明者にインタビューし、技術の内容、強み、県内企業との連携状況等について、その分野の専門家でなくとも理解できるようにかみ砕いて説明している。行員ならではの情報収集能力、コミュニケーション能力を活かし、地域経済の活性化のためにうまく大学等と融合ができていると感じた。

その他、三重大学の医食連携、防災に強いまちづくり連携や、同志社大学の映像作品プロジェクト連携などの事例も大変興味深い内容だった。

地域の企業とビジネスパートナーとして連携するため、3者それぞれの熱意、心構えが本フォーラムの参加者に十分に伝わったと思う。

2. パネルディスカッション
「地域活性化に向けたコーディネート活動について」
モデレーター
谷口 邦彦     (文部科学省産学官連携コーディネーター
 (広域・西日本担当))

パネリスト
佐藤 亮 (花巻市起業化支援センター 主任コーディネーター)
岡田 基幸 (浅間リサーチエクステンションセンター(AREC)事務局長
 兼産学連携コーディネータ)
山本 外茂男 (北陸先端科学技術大学院大学 文部科学省産学官連携
  コーディネーター)
北村 寿宏 (島根大学 産学連携センター 専任教員)
鈴木 康之 (JSTイノベーションサテライト静岡 
 科学技術コーディネータ)


地域の企業・人材を育成するために、共同研究・MOT 教育を1つのパッケージにして連携を図ることや、企業が大学等と連携することで多くのメリットが生まれることのPR活動、多様な仕掛け、アフターフォロー等の実例が示された。

冒頭の3つのテーマで私がもっとも関心があったのは「産学連携における大学(シーズ)と企業(ニーズ)の不整合の顕在化」。これが地域イノベーションの実現につながっていないことの大きな原因だと感じている。地域経済の活性化のために地元の大学等の研究機関と企業が連携して新事業・新産業を創出し、それによって雇用の増大、地域内の人口増加等につなげることがもっとも理想的であるが、実際、全国の多くの地域が前述の問題に直面している。コーディネータとして、自分たちのシーズの強みと地域内の産業分野を十分に把握しつつ、その結果として不整合であるならば、他地域のコーディネータと連携を図って解決する仕組みやネットワークの形成が必要であり、それが問題解決の糸口になるのではないだろうか。

次回は「産学連携における大学と企業の不整合の顕在化」の議論をもう一度取り上げ、かつ、深く議論がなされることに期待したい。

(照沼 秀文=(独)科学技術振興機構 産学連携事業本部
産学連携推進部 人材連携課 係長)

全国イノベーションコーディネータフォーラム2008
開催日:2008年4月24日(木) 25日(金)
会場:甲府富士屋ホテル
   (山梨県甲府市)
主催:(独)科学技術振興機構