2008年6月号
特集  - 科学で地域を元気にする
なぜ今、科学技術による地域活性化か

総合科学技術会議
基本政策推進専門委員会
地域科学技術施策ワーキン
グ・グループ事務局


現在のわが国を取り巻く経済環境を見ると、グローバルな競争が激化する一方、少子高齢化による社会構造の変化、団塊世代の大量退職による技能や知識の消失、環境・エネルギー制約の高まり等さまざまな成長制約要因が顕在化している。その中で、地域間に差があるものの、地方においては、人口の減少が地域経済の低迷、地域の魅力の減少につながり、さらなる人口減少を招く悪循環に陥っているとの指摘もある。こうした状況に対処するためには、研究・技術開発による起業・雇用の創出、技術・地域資源等の新たな組み合わせによる新製品・サービスの創出により、地域の内発的・自立的な発展を図ることが重要である。

地域の科学技術を振興し、地域の発展を図るため、17の地域科学技術施策が8府省により進められている。平成14年度から開始された知的クラスター創成事業については、平成19年度から、これまでの成果を踏まえて、地域の自立化を促進しつつ、「選択と集中」の視点に立ち、世界レベルのクラスター形成を強力に推進するために、第Ⅱ期事業を実施している。また、平成13年度から開始された産業クラスター計画については、平成18年度からイノベーションの加速と新産業・新事業創出の具体的な成果の達成を目指す「成長期」たる第2期計画を推進している。一方、総合科学技術会議においては、これらの地域科学技術クラスター施策を「連携施策群」の1つとして位置付け、府省を越えた施策の補完・連携強化に取り組んできた。その結果、具体的な研究開発成果が生み出され、ベンチャー企業や雇用の創出等の成果が現れている。

しかしながら、地域による違いはあるものの、試作までこぎ着けた技術を事業化する主体が地域内に存在しない、先端的な技術に取り組んだが市場が開拓できない、さまざまな地域施策の相乗効果が発揮されていない、といった課題が依然として存在する。結果的に、地域に集積するさまざまな組織体が連携しつつ、また域外のリソースも有効に活用しながら、持続的なイノベーション創出の好循環が形成される、という段階には至っていない地域が少なからずある、とういうのが現状である。

総合科学技術会議有識者委員は、地域科学技術に関して、平成19年11月28日開催の第71回総合科学技術会議において「科学技術による地域活性化~地域の自立と共生に向けて~」という政策提言を行った。

すなわち、各府省、地方公共団体、独立行政法人などが推進する地域科学技術施策全体を俯瞰(ふかん)しながら、地域イノベーションの創出を強力に推進するための、国としての総合的、戦略的な対応が不可欠であるとし、これからの地域科学技術に不可欠な視点として、次の3つを示した。

[1] 地域の主体性と自立へのコミットメント
[2] 地域の独自性と多様性の確保
[3] 地域ニーズ対応型の拠点とグローバル志向の拠点の共生

その場において、議長である福田総理大臣から、「地方の再生は内閣の最重要政策の1つ。さまざまなアプローチから総力を挙げて取り組みたい。科学技術による地域活性化についても、地域活性化統合本部とも連携しながら、早急に実施できるものについては直ちに取り組みを始めるとともに、今後さらに具体的な戦略作りを進めてほしい」との指示があり、これを受けて、総合科学技術会議基本政策推進専門調査会に地域科学技術施策ワーキング・グループを設置し、検討を開始した。