2008年6月号
特集  - 科学で地域を元気にする
知の拠点「高専」
産業界と連携し地域の人材育成・技術支援
顔写真

小田 公彦 Profile
(おだ・きみひこ)

独立行政法人
国立高等専門学校機構 理事


国立高等専門学校は地域ニーズ対応型の産学官連携活動を実施している。昨年度は科学技術振興調整費「地域再生人材創出拠点の形成」で奈良高専と阿南高専の2件が採択されるなど、地域の特質に合わせて取り組んでいる。

高専と産業界 ~産学共同教育(co-op)の推進~

国立高等専門学校(以下「高専」)は、高度経済成長期をむかえた産業界からの強い要望により、技術者養成の高等教育機関として創設された。その後40年以上にわたり、約35万人の実践的技術者を輩出し、企業からの高い求人倍率および就職率100%の実績を有するなど産業界を中心に高い評価を受けている。近年では、専攻科設置により、7年一貫技術者教育の実施と研究機能の充実が実現された。

また、高専は地域共同テクノセンターを核に、地方自治体や総数3,200社を超える地元中小企業が会員となる高専技術振興会等との連携基盤を持つ。共同研究の推進、経済産業省の「高専を活用した人材育成事業」による若年技術者の養成に取り組み、インターンシップ等の学生の参加を積極的に取り入れた「産学共同のものづくり技術者教育(co-op)」を実施している。

高専のミッション~規模的スケールメリットを活かした産学官連携活動の展開~

国立高等専門学校機構(高専機構)は産学官連携を、学生の教育という基本的使命に次ぐ第2の使命として位置付けている。全国55カ所に「知の拠点」を持つ規模的メリットと、高専・中小企業・地方自治体のそれぞれの特徴を活かした共同研究等(図1)により地域イノベーションの創出を目指している。

<高専機構の規模的スケールメリット>
図1

図1 地域と高専の特徴を活かした共同研究

[1]人材育成力: 55高専教員数 約3,870名(技術系博士取得率約80%)
[2]技術力       : 共同研究600件、受託研究245件、技術相談約3,000件、特許出願120件(平成19年度研究活動実績)

地域と高専の産学官連携活動

高専は、地域共同テクノセンターを窓口に、地域ニーズ対応型の産学官連携活動を実施している。昨年度は科学技術振興調整費「地域再生人材創出拠点の形成」で2件(奈良高専・阿南高専)が採択されるなど、地域の特質に合わせた多様な取り組みがある。

(1) 焼酎粕の活用による地域貢献&エコ活動(鹿児島高専)

平成19年度経済産業省「地域資源活用型研究事業」では、鹿児島高専が中心となる「きのこ生産を核とした焼酎粕乾燥固形物の多用途再生技術の確立」(管理法人株式会社鹿児島TLO)が採択された。鹿児島県では、近年の焼酎ブームにより、いも焼酎等の製造量が倍増。これによる焼酎粕(蒸留粕)の処理が深刻な環境問題となり、海洋投棄に代わる新しい処理対策を考案・実施している。鹿児島高専他4機関で取り組む本研究プロジェクトでは、いも焼酎粕乾燥固形物をきのこ菌床として活用し、焼酎粕の有する有機酸類、アミノ酸類、ミネラル等の成分により、うま味、歯応え等に優れた高付加価値のきのこ(エリンギ等)の安定生産技術を確立するとともに、きのこの生産過程で発生する使用済み菌床の飼料化技術を開発し、焼酎粕内の有用成分を最大限に活用した地域資源循環システムの実用化を目指している。

(2) 高専技術振興会との地域再生・経済活性活動(八戸高専)

八戸高専の産業技術振興会(会員数60社:平成20年3月1日現在)は、平成5年に教育研究の一層の充実と地元中小企業との技術交流会を目的として発足した。本技術振興会との産学連携は、「八戸高専シーズ集」の発行、「研究室めぐり」等による積極的な技術シーズの発信に始まり、共同研究等からの技術移転、地域イノベーションの創出に展開している。例えば、長谷川章准教授とアンデス電気株式会社との共同研究では、光触媒結晶の製造法を開発し、老人保健施設や病院等を顧客に年間5,000台以上を出荷する空気清浄機の製品化までに至るなど、高専の共同研究は実用化を前提としたものが多い。

また、昨年度は新しい試みとして、本技術振興会会員16社とのリクルート説明会「地域企業と取り組む八戸高専人材ネットワーク創出事業-地域企業と学生との懇談会-」(対象:本科4年生・専攻科1年生)を開催し、地元産業界へ学生を輩出することで地域再生・経済活性化を図る。

展望

高専機構は、高専の産学官連携活動を促進させるために、高専技術シーズ(知的財産権を含む)を全国的に発信することができる組織整備を行うことにより、「東北地区の中小企業のニーズに沖縄高専のシーズがマッチング」という技術移転が実現する全国規模の知的財産創出サイクルの構築を目指す。また、長岡・豊橋技術科学大学との共同研究(平成19年度140件)を拡大し、両技科大の基礎研究と高専の応用技術を融合させた「技術のつながり」による研究活動の強化を図る。

今年度は、全国高専テクノフォーラム(平成20年8月20日・21日:呉市)、全国高専シンポジウム(平成21年1月24日:高知市)、エコテクノロジーに関するアジア国際シンポジウム(平成20年10月18日・19日:金沢市:両技科大と共催)等の開催を予定している。