2008年6月号
特集  - 科学で地域を元気にする
北海道における科学技術振興の戦略的取り組み
-「北海道科学技術振興条例」の制定により北海道が目指すもの-

北海道 企画振興部
科学IT振興局
科学技術振興課

北海道が全国に先駆けて科学技術振興に関する条例を制定し、4月に施行された。厳しい道経済を活性化させるため、産学官連携を推進し持続的なイノベーションをつくり出す必要があるためだ。そのポイントを解説する。

北海道では、他の都府県に先駆けて、科学技術振興に関する条例を制定した(平成20年4月1日施行)*1。この条例制定の背景とポイントについて説明したい。

これまでの科学技術振興の取り組み

道においては、大学や企業、個人の研究者を対象にした北海道科学研究費補助金の交付(昭和26年~、現在は財団法人北海道科学技術総合振興センターが実施)、科学技術審議会の設置(昭和27年~)、北海道科学技術賞の贈呈(昭和35年~)など、早い時期から科学技術振興を重要施策の1つと位置付け、さまざまな施策に取り組んできている。

また、科学技術の振興に向けた総合的な推進方策として、平成3年4月に「北海道における科学技術振興の基本方針」を、平成12年3月には「北海道科学技術振興指針」を策定した。

条例制定の背景

道では、上記の推進方策に基づき、北海道産業クラスター創造活動などによる産学官連携の強化や、北大リサーチ&ビジネスパーク構想による研究開発拠点の形成、地域結集型共同研究事業をはじめとする国の各種大型研究プロジェクトの導入、そして道立試験研究機関の機能充実などに重点的に取り組んできた。

また、平成16年7月には北海道、北海道大学、札幌市、北海道経済産業局、北海道経済連合会の5者による「地域連携協定」を、平成17年10月には道と科学技術振興機構との連携協定書を締結するなど、産学官連携による科学技術の振興を、厳しい状況にある本道経済の起爆剤とするため、全国に先駆けた条例制定に向けて、平成19年春から検討を始めたものである。

なお、平成7年に制定された科学技術基本法に地方公共団体の責務が定められたことや、その後3期にわたる「科学技術基本計画」において、地域イノベーションの重要性が位置付けられるなど、国の科学技術振興に向けた大きな流れも本条例検討のきっかけになったことは言うまでもない。

条例のポイント
1. 制定の狙い

本条例は、北海道における科学技術の振興を通じて、科学技術の水準の向上と持続的なイノベーションの創出を目的とし、北海道経済の自立的発展、安全・安心な生活基盤の創造および環境と調和した持続的な社会の実現を目指している。

2. 基本理念

科学技術の振興を図る上での基本理念として、[1]経済の活性化や道民生活の安定向上、環境と調和した社会の実現に重要な役割を果たすとの認識、[2]研究者・技術者の創造性の発揮と広範な分野での基礎・応用・開発研究の調和、[3]産学官および金融機関等の適切な役割分担による協働、[4]地域の特性や潜在力の活用、[5]道民の理解と協力の下、活力を持って持続的に実施、という5つの考え方を掲げている。

3. 道の責務と関係者の役割

道の責務としては、国・市町村・関係者との連携による総合的かつ計画的な施策の実施や市町村への助言等による支援を行うことを定めている。また、関係者の役割としては、大学等には地域貢献と地域における知の拠点としての機能充実を、事業者には事業活動の高度化と地域経済への寄与を、支援団体には道民への理解増進や研究成果の事業化等に向けた支援等を、金融機関等には意欲ある取り組みの発掘・育成や事業化に向けた助言等を、道民には科学的なものの見方・考え方を育むことなどを定めている。

4. 基本計画、基本的施策、科学技術審議会

総合的・計画的な施策推進のための基本計画を策定するとともに、道が取り組む基本的施策として、研究開発の充実と研究成果の移転促進、道における試験研究の推進、人材の育成や道民の理解増進などを定めている。

また、科学技術審議会は、基本計画の推進に関する調査審議など機能を充実することとしている。

まとめ

道では、科学技術の振興に関する新たな推進方策として、本条例に基づく基本計画である「北海道科学技術振興戦略」の策定に向けて検討を進めている。この振興戦略においては、オール北海道の産学官および金融機関等の関係者が本道経済の活性化などの基本目標を共有し、将来にわたり推進・支援すべき「推進研究分野」での取り組みを進めること、さらに、「リーディング戦略」「地域戦略」「橋渡し戦略」による施策の集中的・戦略的な展開を図ることなどを中心とするよう検討中である。

経済や暮らし、地域づくりという多くの課題に直面する中、「ふるさと」北海道のあるべき姿を道民とともに共有し、この厳しい現状を乗り越え、より豊かな地域を築き上げ、未来を担う子どもたちにしっかりと引き継ぐためにも、本条例を北海道からのメッセージとして道内外に発信し、本道におけるさらなる科学技術の振興の契機にしたいと考えている。

*1
「北海道科学技術振興条例」について http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sk/kgs/jourei.htm