2008年6月号
特集  - 科学で地域を元気にする
中小企業の技術的課題に応える共同研究を支援
起点は企業の「ニーズ」 調整役の公設試の機能に着目

独立行政法人
科学技術振興機構
産学連携事業本部
地域事業推進部
事業推進課

独立行政法人科学技術振興機構(JST)が取り組んでいる「新技術の企業化開発」事業の1つに「地域イノベーション創出総合支援事業」がある。20年度からそのなかで「地域ニーズ即応型」という企業支援をスタートさせた。従来の新技術の企業化開発は、初めに大学の「シーズ」がありきで、それをいかに活用するかという考え方だったが、「地域ニーズ即応型」は文字通り、企業の技術に関する「ニーズ」を起点にしている点が最大の特徴である。

独立行政法人科学技術振興機構(JST)は、国の科学技術基本計画を実施するうえで中核的な役割を担う機関であり、わが国のイノベーションの源泉となる「知」の創出から、その研究成果を社会・国民へ還元するまでを総合的に推進する等、わが国の科学技術の振興を図ることを目的に活動している。こうしたJSTの事業は「新技術の創出に資する研究」「新技術の企業化開発」「科学技術情報の流通促進」「研究交流・支援」「科学技術理解増進」の5つの柱に大別できる。

このうち「新技術の企業化開発」事業は、大学・高専等の優れた研究成果を企業などに技術移転し、将来的には実用化してもらうことが目的である。大学・高専等が生み出した新しい技術は、企業が製品やサービスの形で事業化することによって初めて、社会・経済の発展、国民生活の向上に寄与するものがほとんどである。

この事業段階でJSTは複数のメニューを用意しているが、その1つ「地域イノベーション創出総合支援事業」では、JSTが全国各地に展開している「JSTイノベーションプラザ・サテライト」を拠点として、地方において「研究成果(シーズ)の発掘」から「実用化」にいたるまでの一連の研究開発を切れ目なく支援する。

この地域イノベーション創出総合支援事業の中に平成20年度から、新たな支援制度である「シーズ発掘試験(発展型)」および「地域ニーズ即応型」を展開するが、今回はこのうち「地域ニーズ即応型」について、詳細に説明する。

3つの特徴

今回創設した「地域ニーズ即応型」は3つの特徴がある。

まず第1の特徴は、企業の技術に関する「ニーズ」を起点にしていること。「新技術の研究が進展しているが、部分的に壁を突破できない」「要素技術の応用がうまくいかない」「自社技術のみでは最適化に限界が来た」といった企業の技術的課題を引き出し、これに適した大学や公設試験研究機関(公設試)、高等専門学校(高専)等の技術シーズを探し出し、共同研究してもらう。JSTは企業および大学・公設試・高専等の双方を資金的に支援する。

これまで地域イノベーション創出総合支援事業では、起点は大学・高専等のシーズ(研究成果)であり、これを企業等に「技術移転」するという観点だった。

「地域ニーズ即応型」も大学・高専等のシーズと企業とをマッチングさせるという部分は既存制度と同様であるが、マッチングさせるベクトルが全く逆である。

第2の特徴は中堅・中小企業が研究開発実施主体となること。地域活性化、新産業創出に対する地方の期待は強く、その支援が求められている。

第3に、研究開発の推進に当たり、プロジェクト運営の調整役として地域の公設試等の参画を必須としていることである。地域密着でフットワークのいい公設試等の機能(情報、人材)が再評価されており、それを活用することで地域イノベーション創出を実現させる。

研究開発の規模は以下の通り。

採択数:70課題程度(平成20年度)
委託費:200~500万円/年度
実施期間:1~2年度(原則1年度)

「地域ニーズ即応型」は立ち上がったばかりの制度のため、皆さま(特に中堅・中小企業)に広く活用いただくとともに、制度改善に向けて忌憚(きたん)ないご意見をお待ちしている。

図1

「地域ニーズ即応型」のスキーム