2008年6月号
特集  - 科学で地域を元気にする
文部科学省
地域科学技術の振興に向けて当面取り組むべき事項等について

文部科学省
科学技術・学術政策局
科学技術・学術戦略官付
(地域科学技術担当)


文部科学省科学技術・学術政策局では、地域科学技術施策推進委員会(座長:清水勇 独立行政法人工業所有権情報・研修館理事長)において、今後の地域科学技術振興施策の在り方について検討を行い、当面取り組むべき事項について取りまとめた。以下にその概要を示す。

地域の活性化は国の最重要課題の1つであり、地域活性化のために政府一丸となった取り組みが進展している。また、地域の自立的な発展を実現する上で、科学技術が果たす役割に対しても、ますます大きな期待が寄せられている。

文部科学省では、平成14年度から知的クラスター創成事業(第Ⅰ期)、都市エリア産学官連携促進事業、平成19年度から知的クラスター創成事業(第Ⅱ期)(以下、知的クラスター創成事業等という)を実施する等、科学技術駆動型の地域活性化を目指した施策を展開しており、地域における産学官連携のネットワーク形成や、コーディネート人材の育成、研究開発成果の事業化等の成果を挙げている。しかしながら、大きな経済効果を創出している地域がある一方で、試作品段階にとどまる地域や、事業終了後、持続的な地域イノベーション・システムの構築に至っていない地域も少なからずある。

このような状況を踏まえ、一定の成果を挙げている地域についてはさらに発展させることが重要であるが、クラスター形成に関して課題を抱えている地域に対する支援策を中心に議論を深め、当面取り組むべき事項について取りまとめた。

(1) 長期的な視野と戦略に基づいた、地域クラスター形成等に向けた地域における持続的な取り組みの促進

地域クラスターの形成には数十年単位の期間を要することから、長期的な視野と戦略に基づいた地域の持続的な取り組みが不可欠である。しかしながら、5年間や3年間といった知的クラスター創成事業等の実施期間では、持続的な地域の取り組みを促す上では不十分であり、事業終了後、直ちに地域の自立化を期待することが難しいケースも少なくない。また、人材空洞化の問題も、地域における持続的な取り組みを阻害する一因となっている。

このため、国においては、地域が自立することを政策の最終目的としつつも、地域における長期的な視野と戦略に基づいた取り組みを促すために、各地域のニーズに応じた支援を行う必要がある。

(2) 各地域が主体的に策定する構想・計画への柔軟な対応

各地域が目指す地域イノベーション・システムの在り方は多種多様であり、産学官連携基盤の構築やクラスター形成の進捗状況も地域によって大きく異なる。

このような地域の多様性を踏まえ、国においては、定型的・各地域一律の施策ではなく、地域の構想に柔軟に対応した施策を講じることが必要である。例えば、クラスター形成の進捗状況等に応じて、実施期間・予算規模等の柔軟な設定を可能とすることは、各地域が主体的に策定する構想を実現する上で有効であると思われる。

(3) 地域イノベーションの構想の策定やその実現に必要な優れた人材の育成等への支援

地域によっては、地域構想自体の企画・立案や実施計画の作り込みなど、地域クラスター形成に取り組むための準備段階での取り組みが不十分である。これは、主として地方公共団体における地域科学技術政策の企画・立案体制の脆弱(ぜいじゃく)さや地域における科学技術にかかるリソースの不足に起因する。

このような地域に対しては、地域構想の企画・立案やマネジメント体制の整備等に主眼を置いた支援を行うことが望ましい。

(4) 戦略的な地域間連携やクラスターのグローバル展開の促進

地域クラスターの形成は、当該地域内の取り組みのみで完結することは多くない。地域が目指す地域クラスターの規模にかかわらず、地域が競争力を強化するためには、戦略的な他地域との連携を促進することが必要である。

例えば、大学等の研究成果の受け皿となる企業が地域内に存在しない、企業のニーズに応えるシーズを地域内の大学等が有していないといった、産業界と大学等研究機関のポテンシャルのミスマッチが生じている場合などは、地域内に不足するリソースを積極的に他地域との連携により補完する、といった取り組みが求められる。

(5) コーディネータ人材やマネジメント人材の育成等に向けた取り組みの強化

地域における産学官連携の推進には、異なるセクター間の活動をつなぐコーディネータ機能の強化が重要であり、その支援体制やコーディネータ間のネットワーク形成等への支援が必要である。

近年では、各種のコーディネータが全国に配置され、地域における産学官連携活動は大きく進展したが、質にばらつきがある、キャリアパスにつながりにくい、若手人材の確保が困難等の課題がある。

このような状況を踏まえ、国においては、地域におけるコーディネータ人材の養成等のため、例えば、実践的研修と研修講座等を組み合わせた体系的な人材育成プログラムの作成、文部科学省やJSTのコーディネータと他府省所管の支援人材等との連携促進等を行うことが求められる。

この他、経済産業省等をはじめとした関係府省との連携の一層の強化、大学における地域貢献活動の推進、成功・失敗事例やマネジメントにかかる課題等を共有できる仕組み作り、情報収集・発信等の充実についても、今後取り組むべきである。