2008年8月号
特集  - 食料供給と技術
サケ頭部の魚介類成長促進成分を飼料に活用
成長速度は1.3~1.5倍、将来はサケ、マス養殖に
顔写真

鈴木 康夫 Profile
(すずき・やすお)

社団法人東経連事業化センター
事業化コーディネータ
宮城県産業技術総合センター
副所長

北里大学の森山俊介准教授は、サケの頭部の未利用部分に魚介類の成長を促す成分があることを発見し、企業と共同で同成分を利用した養殖魚用飼料の開発を進めている。現在は、錦鯉を対象にした開発に取り組んでいるが、将来はサケ、マスの養殖につなげたい意向だ。

北里大学海洋生命科学部の森山俊介准教授は、魚類の成長のメカニズムを研究する過程で、サケ頭部の未利用部位に魚介類の成長、成熟を促進する機能性成分が存在することを見いだし**1 **2、企業と共同で同成分を利用した養殖魚用飼料の開発を進めている。現在、取り組んでいる錦鯉による研究開発では、従来の1.3 ~1.5 倍の早さで成長が促進されることを確認し(写真1)、将来は、サケ、マスなどの養殖につなげたい意向だ。

写真1

写真1 右側が機能性飼料を与えた錦鯉

森山氏は、これまで残滓(ざんさい)として処分していたサケ頭部からこうした成分を見いだすとともに、この含有部位の効率的な回収法とその自動高速採取装置を開発し、機能性成分の大量調整方法も確立している。液化状態での有効性も確認している。また、成長促進活性成分が魚の免疫力を高めることもわかった。

錦鯉用飼料ビジネス化へのシナリオ

森山氏の研究対象は現段階では錦鯉の稚魚。対象を錦鯉にしているのは、出身が新潟県魚沼市であり、中越大震災で錦鯉生産が大打撃を受けたことを目の当たりにしたこと、また、それに関連して新潟県長岡市の山源錦鯉の会長から錦鯉の成長を早める飼料開発に関する提案を受けたことが主な理由である。

錦鯉は真鯉の中からわずかな色彩を見いだし、江戸時代から長年にわたる選抜育種によって作り出された日本独自の観賞魚の1つである。

2006 年水産油脂統計年鑑によると、錦鯉用飼料生産量は7,884 トン、総養魚用飼料生産額は年間約1,000 億円規模と推定されている。また錦鯉は海外でも「世界最大のガーデンフィッシュ」として高い評価を受けており輸出が盛んである。

森山氏ら産学官連携の課題は、錦鯉の成長促進機構を活性化させ、錦鯉の生産性を向上させる技術の開発である。

これまで、株式会社丸辰カマスイ(岩手県釜石市)と取り組み、7月からは社団法人東経連事業化センターの補助を得て、山源錦鯉を加え、3者でフィールド試験を進めている。

実施中のフィールド試験では、成長促進活性成分を乾燥させて粉末化したものを使って、錦鯉の種苗、稚魚や成魚の育成応用を目指す。

食の生産性の観点から

錦鯉の成長促進を目的とした栄養価の高い餌は既に販売されてはいる。しかし、魚自身が持つ生理活性物質を活用して生体機構を直接活性化させて成長を促すタイプの餌はいまだ無い。

森山氏の研究は魚の食欲を増幅させるのではなく、魚の餌利用効率を上昇させて成長活性を高めようとするものである。飼料に要する費用を抑制できる。本活性成分は魚の免疫力を向上させるので、病気に対して抵抗力の強い、健康で大型の錦鯉を生産することにもつながる。さらに、本来なら捨てていたサケの頭にも付加価値が付く。

いま、飼料も主原料である魚粉が不足し相場が高騰している。石油製品も大幅に値上がりしており、ユーザーが要求する高タンパク質含有飼料を低価格で安定供給することが難しくなっている。また、コイのヘルペスウイルス病などの魚病問題を解決するための対策が強く求められている。このような状況下、短期間で魚介類を高成長・育成するための飼料および増養殖システム構築への期待は大きい。

●参考文献

**1 :森山俊介.海洋と生物.Vol.28, 2006, p58-68.

**2 :Moriyama, S. and Kawauchi, H.;Otsuchi Marine Science.Vol.26, 2001, p23-27.