2008年9月号
巻頭言
顔写真

佐伯 浩 Profile
(さえき・ひろし)

北海道大学 総長




産学官連携の現状

わが国において、産学連携、産学官連携は1990 年代から活発になってきた。当時は、経済情況の見通しが定まらない時期であったが、米国における産学連携や大学発ベンチャービジネスの成功例が報告されたことにも刺激されたのであろうか、日本の各大学で地域連携や産学官連携組織の設置が始まった。その後、平成16 年度からの国立大学法人化移行を見据え、大学自らの組織的な知的財産戦略・産学連携の推進体制の構築が始まった。

本学においては、平成15 年度に知的財産本部が設置され、ほぼ時を同じくして、北海道の自治体、産業界と本学が連携し、本学北キャンパスを中心に一大産学官連携拠点の形成を図ろうとする「北大リサーチ&ビジネスパーク構想」が本格的に動き出した。そのことを踏まえ、創成科学研究機構が、学内における中核機関として位置付けられ、企業等との包括連携や研究成果の事業化に向けたさまざまな取り組みを行ってきた。

しかしながら、組織的な知的財産戦略・産学連携推進を担う組織運営は、文部科学省からの時限付き事業を受けて運営されていたのが実状である。これらが平成19年度で終了することになっていたことから、自立した組織として、新たに平成19年10月より知財・産学連携本部として再構築し、産学官連携、知的財産それに技術移転を一元的にマネジメントし、知的財産の創出、権利化、活用にわたる一連のワンストップ・サービス窓口機能を提供している。産学官連携については、10年の歴史と経験を踏まえ、ようやく完成に近い型となりつつあるところである。

さて、産学官連携をより強化するためには、いまだ多くの課題を残しているのも事実である。1つ目は、本州に拠点を置く大企業や研究型独立行政法人との連携は年々強まっているものの、産業基盤の弱い北海道内の企業との連携の実績が増えないことである。本学のミッションの1つである地域経済強化の駆動力になることについては、残念ながら、成果はこれからに期待するしかない。

2つ目は、地元自治体との連携強化である。国のプロジェクト等については協力して獲得し、その成果は上がっているが、地元産業への貢献にまで至っていない。

3つ目は、知財に結び付くまでの研究には、大学院生、ポスドクの研究者が数多く携わっていて、企業への就職を希望している者も多いが、博士課程修了者の企業への就職情況は厳しいのが現実である。

前述した「北大リサーチ&ビジネスパーク構想」も、しっかりと本学北キャンパスに根付いた。3つのインキュベーション施設、本学の主要な研究所等も創成科学研究棟を中心に設置された。また、今年はシオノギ創薬イノベーションセンターも建設され、産学官連携強化に向けたハード面での対応も型を成してきたといえる。産学官連携の成果としての果実を得ることができるか否かは、これからのわれわれの努力にかかっている。