2008年9月号
イベント・レポート
2008年第1回 名古屋大学起業家セミナー
大学発ベンチャーを中心とした産学官連携

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   写真1 本多電子株式会社
        本多洋介 代表取締役社長


名古屋大学は7月14 日、東山キャンパスで起業家セミナーを開催した。国際展開する研究開発型企業、本多電子株式会社(愛知県豊橋市)の本多洋介社長(写真1)が基調講演。名古屋大学発ベンチャー企業であるプロテウスサイエンス株式会社(名古屋市千種区)の澤田誠取締役が研究開発型経営の成功の秘訣(ひけつ)について講演を行った。155 名が参加した(写真2)。

本多電子株式会社は、1956 年に世界で初めてトランジスタ・ポータブル魚群探知機を開発した企業。1970 年代に米国に進出しバスフィッシングなどレージャーボートに広く使われ、一時は同国でシェアナンバーワンとなったが、急激に円高が進み不振に。その後、トランジスタ・ポータブル魚群探知機で培った超音波用の圧電セラミックス技術を核にさまざまな分野で産学の共同研究を実施し、世界最先端の超音波技術を世の中に提供し続けている。現在、音波による化学反応を研究するソノケミカルの分野や新医療への応用、さらに環境分野への応用などでも各大学や研究機関と共同研究を行っている。

写真2

写真2 セミナーの様子

本多氏は「産と学の人のつながりがイノベーションを生み、研究開発を促進した」「20 年前に始めた研究が今やっと実用化できた」などの体験談を語った。

共同研究は、1980 年に豊橋科学技術大学の榊米一郎学長(当時)の紹介で、超音波顕微鏡の権威である東北大学工学部の中鉢憲賢先生と始めたものが最初。研究は東北大学の西條芳文先生に引き継がれ、医療分野の細胞の観察に利用した。光学顕微鏡でできない観察を可能にしたが、細胞の画像化には丸二日かかった。この研究成果を学会で発表したところ、豊橋科学技術大学の穂積直裕先生(現、愛知工業大学)からこの対策に関する提案をいただいた。研究を重ねた結果、現在では数秒で観察できる。20 年を超える超音波顕微鏡の研究は両校の再度の出会いによって、2002 年組織音速顕微鏡として完成した。

「周辺技術の向上を他人任せにしないためには、人との出会い、異分野の方との出会いが非常に重要」という。

プロテウスサイエンス株式会社は、創業者である澤田誠氏(名古屋大学環境医学研究所 教授)が開発した株化ミクログリアを中心とした脳標的化技術により、薬剤の開発や改良、ドラッグ・デリバリー・システム*1の研究を行っている。講演では、資金不足により死の谷に陥った経験や、IPOを目指した事業戦略を聞くことができた。

参加者から「産学官連携のポイント等を多面的に聞くことができた」「開発型企業の進め方の一例を学んだ」などの感想が寄せられた。

(上井 大輔:名古屋大学 産学官連携推進本部 起業推進部)

*1
ドラッグ・デリバリー・システム(Drug Delivery System, DDS)とは、体内の薬物分布を量的・空間的・時間的に制御し、コントロールする薬物伝達システムのこと

2008年 第1回
名古屋大学起業家セミナー
開催日:2008年7月14日(月)
会 場:名古屋大学VBL
主 催:名古屋大学 産学官連携推進本部