2008年9月号
編集後記

平成22年度以降、厚生労働省の科学研究費の申請は、申請者の所属の研究・教育機関に利益相反のマネジメント体制がないとできなくなる。一部の研究機関は数年前からこれを構築しつつあるが、ライフサイエンス系の専門分野を持つかなりの割合の大学や研究機関は、慌てて今その準備を始めている。この分野の専門家と言える人は日本ではほとんどおらず、人命を扱う臨床研究の利益相反の問題となると話が複雑化してくる。とは言っても、申請できないとなると、研究活動の死活問題となるところもあろう。大規模の研究機関は、事務的な支援体制も潤沢であろうが、そうでないところは、その負荷にあえいでいるという感は否めない。もちろん、“備えあれば憂いなし”ではあるのだが・・・。

(編集委員・伊藤 正実)

北京オリンピックが幕を閉じた。北島康介選手ら多くのアスリートたちが私たちに元気を与えてくれた。想像を絶する努力のあとの栄光がドラマを生み世界中を感動させた。順位を競うスポーツと異なり、先端技術を実用化しようとする研究の成果は簡単には数値で表せない。それでも、ゆっくりではあるが着実に進展している例が私の周りにもある。産学連携で開発している難病に効く薬、日本人の得意な精密機器と医療とのコラボレーション・・・。人知れず、黙々と課題に向かう研究者たちは、患者さんの生活の質向上に寄与することが自らの喜びであり、それによって達成感を得る。華々しくはないが、実を結ぶこと、達成感の喜びをたくさん味わって、産学連携をプロデュースする人材が多く輩出されることが望まれる。

(編集委員・前田 裕子)

8月17日から18日にかけて当編集部に、原丈人氏の記事「コンピュータの次の世代の基幹産業は何か?」(2005年11月号)を読んで「わが意を得た」といった感想が多数寄せられた。17日朝、原氏がテレビ出演し、興味をもった視聴者がネットで情報を探した結果らしい。その著書『21世紀の国富論』は、同日のネット通販大手の総合ランキングで1位だった。私も番組の終わりの10分ほどを見たが、アフリカへの食糧援助に関して「スピルリナ」という藻類のプロジェクトを喜々として語っていた。ベンチャーキャピタル会社経営だけでなく、多くの顔を持つ原氏。挑戦し続ける「夢」が多くの人を引きつけたのだろう。同番組での言葉。「何かを思い立ち、それが実現するまでには多くの階段がある。まず、初めの1段に踏み出すことだ。」

(編集長・登坂 和洋)