2008年11月号
イベント・レポート
UNITT2008 第5回産学連携実務者ネット
ワーキング
企業の視点を聞き、幅広く議論

今回で5回目となるUNITT(産学連携実務者ネットワーキング)は東洋大学白山キャンパスで9月5・6の両日開催され、約500名の大学やTLO、政府、企業の産学連携関係者が参集した。全体セッションと3トラック×4セッションのほか、日本弁理士会との共催も加わり、過去最高の合計14セッションとなった。

全体セッション「iPSケースから考える 複数大学で行う研究の知財マネジメント」では、山本貴史モデレーター(株式会社東京大学TLO)から、「今後盛んになる複数大学の共同研究では知財マネジメントのコンフリクトが予想されるので、事前に十分検討する必要がある」との課題提起があり、小蒲哲夫氏(東京大学)から5分類した具体的課題の詳細な検討結果の報告、寺西豊氏(京都大学)から発明~チームジャパン構想までの経緯と課題について、小谷和浩氏(文部科学省)からは学学連携への積極的な取り組みについて報告があった。

三尾美枝子弁護士から、各大学のポリシーは良く似ているので、コンソーシアムを組んでもうまくやっていけるのではないかとの発言があった一方、会場との議論の中で、企業ごとにポリシーが異なっているので企業が入ったコンソーシアムの困難さが指摘された。また、日本弁理士会セッション「iPS の研究開発と知的財産権」では万能細胞技術解説や関連特許の体系説明、研究成果の実用化を担うiPSアカデミアジャパン株式会社の紹介があり、全体セッションと補い合ってiPS 細胞研究・事業の全体像を把握することのできた構成は好評であった。

それでは、幾つかのセッションについて概要を報告する。

バイオ・医療のライセンス

杉本直樹氏(株式会社リクルート)のモデレートにより、吉村忠司氏(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)の守秘義務契約を締結する前に提示する"ノンコンフィデンシャルデータで差を付けろ" や、薬師寺秀樹氏(シグマアルドリッチジャパン株式会社)の技術移転の基点となる論文が重要な評価基準であるとの貴重なプレゼンテーションがあった。

またS. Andersen 氏(ワイス社)の発表が注目を集めた。P2X4 受容体の拮抗薬開発を目的とした九州大学とのパートナーシップは、知的財産やノウハウの取り扱いについて定めた契約を締結し、両者の役割分担や作業場所を決定し、共同研究におけるすみ分けを明確化した協力であるとの内容であった。会場からワイス社と九州大学の提携に関して質問が集中した。パネリストの回答やアドバイスで共通していたことは、質の高いジャーナルで発表された論文がキーであるという"論文" の重要性であり、参加者には視点の広がる貴重な議論であった。

企業との共同発明の取り扱い

オープンイノベーションが進展するのに伴い、産学連携スキームがより複雑化する傾向をとらえ、そのときの共有知財のマネジメント方法について活発な議論が行われた。複数企業と大学の共有知財が生じる場合、研究室の知財が"虫食いリンゴ" となり研究成果をパッケージできなくなる、という大学側からの課題指摘に対し、実はその点は企業でも同様の課題という認識があり、シナジー効果を出すためのマネジメントが要請されているとの報告があった。

また製薬業界の観点からは、日本では標準化(プラットフォーム)技術が少ないので、オープンイノベーションが機能するには至っていないとの提起があり、大学側からは特許法第73 条に触れながら、産学連携における企業のNIH(Not Invented Here)問題、共有知財を第三者に実施許諾する場合の問題、複数企業との連携下で大学の研究継続を担保するための特許法第69 条や、研究ライセンスに対する考え方など問題点が指摘され、認識が幅広く共有された

上記のように、産学連携が深化する中で起こる多様な課題への活発な議論とともに、日本の産学連携活動が本格稼働して10 年を経て、新たにこの業務に携わる人材層が現れてきたのも喜ばしいことである。UNITTでは、3トラックのうちの1つを昨年から「基礎講座」と位置付け、初心者がこの2日間でしっかりとした基礎体力をつけるための講座も実施している。今年の「共同研究契約講座」では、スピーカーに小川隆氏(九州大学)を迎え、日々の実務で積み上げた"定番業務をいかに効率よく正確にこなすか" という、地味ではあるものの、とても重要なノウハウを参加者に提供し好評を得ていた。また、UNITT の企画運営にも積極的に携わろうという新たな参加者が出てきたこともうれしい変化の兆しである。

「企業サイドから見た産学連携」や「ベンチャー企業が大学に求めること」では、企業側から大学に必要な戦略的な知財形成等の厳しい指摘もあった。産学連携のパートナーである企業側の率直な考えを聞くこともUNITT の大きな目的の1つであり、多様なテーマ、登壇者と会場参加者の活発な議論とともに印象に残った。

(福田 猛:有限責任中間法人 大学技術移転協議会 事務局長)

UNITT2008 第5回産学連携実務者ネットワーキング
日時: 2008年9月5日・6日
会場: 東洋大学 白山キャンパス(東京都・文京区)
主催: 有限責任中間法人大学技術移転協議会