2008年12月号
巻頭言
顔写真

庄田 隆 Profile
(しょうだ・たかし)

日本製薬工業協会 会長
第一三共株式会社 代表取締役社長
兼 CEO


創薬基盤整備における産学官連携

薬草など天然物を用いた薬物治療の歴史は紀元前にまでさかのぼるが、合成技術など近代的な創薬技術を用いた医薬品が初めて登場したのはわずか100年余り前の19 世紀末のことである。それから今日までの間に医薬品の創製にかかわる研究・技術は飛躍的な進歩を遂げ、多くの疾患を克服することを可能にしてきたが、依然として治療法のない疾病や十分な治療効果が得られない疾病が数多く存在する。これらの疾病に対して医薬品を開発し続けていくことが製薬企業に課せられた使命である。

しかし、近年の医療ニーズの高度化と多様化とによって新薬開発の困難性は確実に増しており、このことは、開発にかかる費用の増大、開発期間の長期化、成功確率の低下に顕著に現われている。このような環境の中で製薬企業の新薬開発の方法は、ベンチャー企業の買収、他社とのアライアンス、アカデミアとの連携など、外部ネットワークを活用し、多様化している。

一方、新薬開発を加速するためには、個別企業では困難な研究開発における共通のプラットフォーム技術の開発や臨床研究実施施設の整備など、創薬基盤の整備も重要な課題であり、このようなインフラ整備には産学官の連携が不可欠である。

1995 年に制定された科学技術基本法と5カ年ごとに策定される科学技術基本計画に基づき、産学官の連携が促進される枠組みができた。しかし、創薬基盤の整備に関しては、研究成果の帰属の問題や公的資金の配分方法、事業化のための知財戦略などの要因によって十分な成果が見られないのが現状である。

こうした問題を解決し、革新的な医薬品を早期に日本で創出するための意見交換の場として、政府は2007年1月に文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣、アカデミア代表、製薬業界代表をメンバー*1とする「革新的な創薬のための官民対話」を設置した。これまで既に5回の会合が開催され、日本製薬工業協会としての具体的な提言を行ってきたところである。今後の産学官の連携をさらに促進し、日本での創薬基盤の整備に果たす大きな役割を官民対話に期待したい。

*1
2008年4月より、新たに内閣府科学技術政策担当大臣、医療機器業界代表もメンバーに加わった。