2009年1月号
単発記事
損保ジャパン リスクマネジメントで大学と連携
顔写真

足立 尚人 Profile
(あだち・なおと)

株式会社損害保険ジャパン
企業商品業務部
リスクソリューショングループリーダー
東京大学 公共政策大学院
非常勤講師

損保ジャパングループは、リスクマネジメントについて複数の大学と連携している。東京大学公共政策大学院との連携は寄附講座と共同研究の2本柱。寄附講座で目指しているのは、高度な専門的知識と実践的な問題解決能力・政策立案能力を身に付けた人材の育成である。

なぜ、大学と連携か?

社会経済のグローバル化・高度化に伴い、企業を取り巻く環境は大きく変化しており、そのリスクは大規模自然災害や新型インフルエンザなどのように多様化、巨大化、複雑化する一方、企業価値を向上していく上では、事業に伴うさまざまな不確実性に適切かつ積極的に対応する姿勢が求められる。このようなリスクマネジメント戦略の必要性は、民間企業のみならず公共部門や非営利組織にも共通するものであり、公共政策的見地からも、社会全体の安全と安心を確保する上で不可欠な視点である。

ここでは、損保ジャパングループが、2006年度以降リスクマネジメント分野において連携を進めている東京大学および福井県立大学との取り組みについて紹介する。

東京大学公共政策大学院との連携

東京大学公共政策大学院と損保ジャパングループとの連携は、2006年10月から3年間の予定でスタートした。

東京大学公共政策大学院は、広く公共政策にかかわる政策プロフェッショナルを養成する大学院修士課程(専門職学位課程)として2004年4月に創設された専門職大学院であり、

[1] レベルの高い法律学、政治学、経済学についてのバランスの取れた教育
[2] 実務家教員による授業など、内外の具体的なケースを素材とした実践的教育
[3] 世界トップクラスの研究実績を有する東京大学法学部、経済学部の教授陣による授業

という3つの特色を有している。

本連携では「リスクマネジメント政策研究ユニット」を構成し、具体的活動は「寄附講座の設置」と「共同研究の実施」という2つの柱で成り立っている。このほか年1回の「公開フォーラム」を開催し、研究成果を広く社会に発信する場としている。

寄附講座では、同大学院生を対象に「リスクマネジメントと公共政策」にかかわる講義と「リスクマネジメント事例研究」を各年度にそれぞれ1学期ずつ行っている。目指しているのはリスクマネジメントに対する高度な専門的知識と、実践的な問題解決能力・政策立案能力を身に付けた人材の育成。講義では、具体的なリスクマネジメント手法を具体的事例も交えながら理解、修得した上で、効果的・効率的なリスクマネジメントの実現に向けた公共政策の在り方を検討する。損保ジャパングループのほか、各種事業会社、中央官庁等からも外部講師を招き、実践的な内容としている。

また、保険と金融の統計学、自然災害リスクマネジメント、リスクファイナンスに関する法制度、公共政策におけるリスクマネジメントなどをテーマとした研究活動も行っている。

一方、共同研究では、日本企業における効果的なリスクマネジメントの在り方や、自然災害のリスク評価・リスクコミュニケーションなどをテーマにしている。

今後、両者は本連携を通じてリスクマネジメント分野での専門性を一層向上させるが、特に東京大学公共政策大学院においては、教育分野の充実を図るとともに社会との連携を積極的に進めていくことが期待される。損保ジャパングループは、この連携の成果を活かして官公庁・企業分野の個別ニーズにかかわる先進的な解決プランの提供を目指している。

福井県立大学地域経済研究所との連携

2007年4月、福井県立大学と当社は「産学連携基本協定書」を締結し、翌月より連携業務の運営を開始した。本連携は、それぞれの企業経営リスクに関するノウハウを持ち寄り、中堅・中小企業を支援し地域の経済活性化に貢献しようとするものである。

2007年度においては、福井県下の中小企業1,367社を対象に、今後起こる可能性のあるさまざまなリスクに対処するための取り組みと、その体制に関する調査を実施した。この結果は、中小企業のリスクマネジメントの在り方を検討し、方向性を示唆していく上での資料として活用される。また、9月に開催した「地域経済研究フォーラム」において、「福井県下企業のリスクマネジメントの課題と対策」について議論され、企業が今すべき事項、持つべき意識の報告があった。

2008年度は、中堅・中小企業に対し、BCP(事業継続計画)への取り組みの実態や課題をヒアリングし、共通する課題と対策についてまとめ、参考となる取り組み事例やノウハウを紹介していく予定である。