2009年1月号
海外トレンド
米国リサーチアドミニストレーターの協議会の50周年大会
「研究者支援」の原点回帰も
顔写真

高橋 真木子 Profile
(たかはし・まきこ)

東北大学
研究協力部(特定領域研究担当)
総長室付 特任准教授

2008年11月2~5日に開催されたリサーチアドミニストレーター(RA)全米組織の大会のレポート。RAは大学で産学連携を支える業種で、同組織には6,500人ほどの会員がいる。50周年を迎えた今年の大会では、科学と研究者のナビゲーターという使命をあらためて確認する原点回帰の動きが見られた。

米国の大学等において研究協力支援・外部資金獲得管理を担う“リサーチアドミニストレーター(Research Administrator、以下RAと略す)”*1。その全国組織National Council of University Research Administrators(NCURA)の大会が11月2~5日、米国ワシントンで開かれた。同大会は今年創設50周年を迎えた。1940年代マンハッタン計画等の連邦政府系大型研究プロジェクトの推進支援業務から始まり、第1回をわずか27人で始めたこの大会は今年、米国のみならずオーストラリア、ベルギー、英国、フィンランド、アイルランド、日本、シンガポール、南アフリカ、スウェーデン、ザンビア等18カ国から計2,300人が参加した。

今年の大会テーマは“Celebrating the Science, Supporting the Scientist”。記念すべき今大会のプログラム企画委員長を務めたメリーランド大学のDenisに今年のプログラムのコアは何?と聞いたところ「1年前から始めた企画委員会の議論を通じ自分たちの仕事を今一度見直そう、RAは何のために居るか、という原点に帰り着いた。その視点でこの4日間のすべてのイベントを企画した」とのことだった。NCURAの活動に貢献した“今年のキーパーソン”の受賞者も、「これまでのすべての経験をもって、これからも研究者をナビゲートするこの仕事を楽しみたい」とあいさつし会場を沸かせた。

大会テーマの変遷から読めること

50年の歴史を振り返るさまざまな仕掛けの中で、昼食時に紹介された大会テーマの変遷は興味深かった。RAの業務をプロフェッショナルとして確立すること自体が目標になっていた1970年代後半~80年代前半は“プロとして活動するために”というようなタイトルが並ぶ。

90年代後半~2000年代前半は“多様性を越えた統一性”など職域と職名がある程度確立した上で、RAの一体感醸成への模索が感じられる。そして50周年の今年は原点回帰的なタイトルで、あらためて科学と研究者のナビゲーターとしてのRAのミッションを明確に打ち出したわけである。

RAのプロフェッショナリズムとは

初日の全体セッションでは、NASAの火星探査プロジェクトリーダーを務めたコーネル大学教授のプレゼンテーションがあった。国家を挙げた研究開発プロジェクトの成果、夢と魅力をジョークを交えながら紹介し、その中でRAの貢献にも附言した。「多くの研究者は研究をやりたくて、RAが誰であろうと問題無くやってくれればそれでいいと思っている。でもそれを越えた関係が築ければ幸せだ」という彼の言葉は力強かった。参加者の中には、大きな研究大学だけでなく小規模大学、カレッジの担当者も多く、外部連携の仕方、資金源もさまざまである。

火星プロジェクトのような研究者との幸せな関係ばかりではないはず、と思い「“Supporting the Scientist”というテーマに違和感は無い?」と会場で聞いてみた。企業から転職しRA歴4年目という女性は「火星探査の教授とのような関係は正直まれ。でも研究者が研究資金を獲得してくれなければ大学の活動が止まり、自分たちの仕事が無くなる」と答えてくれた。研究者とペアで大学の研究活動を担っているという意識は現実的な認識をもって浸透しているようだった。

RAをめぐる今後の動き
写真1

NCURA国際委員会のミーティングで集まった
     メンバー

会期中NCURA国際委員会の夕食を兼ねたミーティングに招かれた。日本では国際産学連携事業が幾つかの大学で動いているが、国際委員会で何か実質的なトピックがあるのか、正直若干の疑問があった。が、参加してみると想像以上に真面目で実質的な議論で驚かされた。詳細な内容は割愛するが、発展途上国とのクリニカルリサーチの連携方法、EUとの学術協定に基づく研究体制と知的財産等の扱い、予算執行の連携等、日本でも重要な話題が楽しくピザを食べながら語られていた。

このミーティングにはNCURAのEU版にあたるEURMAからも事務局長らが参加しており「昨年、EURMA創設15年を迎えやっと参加者200人の大会を開けた。これからはアジアとの連携も進めたい」という。

来年の大会プログラム企画委員長は「国際連携、機関間連携は重要。国際連携関係のセッションは参加者も増え、National Science Foundation(NSF)等は機関連携を基盤とした公募プログラムを増やしている。当面この話題は大会の柱の1つとなる」と語った。日本の大学でもいろいろなレベルで国際連携は進められている。このような動きを発信していくことも重要ではないかと思う。

もう1つ、Pre-award*2の役割については昨年より議論が深まった印象をもつ。小規模大学では外部資金とは主に私立の研究財団からの資金を指し、各研究者に最適な公募情報の提供が最も重要な仕事である。一方、研究大学では知財、契約条件の調整・交渉、研究体制づくりの重要さが増し、TLOと連携した研究プロジェクトマネジメントに近い性格を帯びている。昨年に比しこのような性格の違いを前提にした議論があり、日本の産学連携・研究協力にも、とても近い議論であると感じられた。

くしくも大会開催中の11月4日は大統領選。会場内に設置された開票速報のテレビの前で、研究開発に関する両党の方針を自分の身近な問題として意見交換するRAの存在はとても頼もしく感じられた。


謝辞

RAの活動調査は、科学技術振興調整費先端融合領域イノベーション創出拠点の形成「マイクロシステム融合研究開発拠点」事業における調査活動の一貫で行われたものである。この機会を頂いたことを感謝する。

*1
University Research Administrator(略してURA)と呼ばれることもある。

*2
競争的研究資金獲得までの申請支援業務を指す言葉。採択後の経費管理等を含めた支援業務Post-awardと対をなす。詳細は産学官連携ジャーナル2008 Vol.4. No.5の記事を参照。