2009年2月号
単発記事
科学技術振興機構
研究開発支援制度の統合と、イノベーション創出、若手アントレプレナー排出に向けた新制度

野口 義博 Profile
(のぐち・よしひろ)

独立行政法人科学技術振興機構
産学連携事業本部 産学連携推進部
産学連携推進課 課長


独立行政法人 科学技術振興機構(JST)では、これまで、大学等の研究成果の実用化を促進するため、研究開発のさまざまなフェーズに応じた支援プログラムを整備してきた。平成21年度においては、これまでの支援プログラム運用によって得られた知見、改善点等を事業スキームに反映すべく、既存プログラムの有機的統合に相当する新規の「研究成果最適展開支援事業」のほか、イノベーション創出に向け、基礎研究段階から技術の確立に至るまでの過程をシームレスに支援する「戦略的イノベーション創出推進事業」、若手アントレプレナー輩出を目指す「若手研究者ベンチャー創出推進事業」を創設する。

研究成果最適展開支援事業
図1

図1 現行事業との関係

従来のJST企業化開発プログラムを有機的に統合した形態の新規事業として再構築(図1)することで、より柔軟な運用を可能とし、研究開発課題の内容に応じた最適な支援を目指す事業である。対象は、大学・公的研究機関等の成果に基づく課題であり、大学・公的研究機関等と共同で研究開発を行う企業の実用化に向けた研究開発を中心に支援する。

この事業の大きな特長の1つは、課題の特性や研究開発のリスク・フェーズに応じ、グラント、マッチングファンド、実施料納付、返済の支援タイプ*1を組み合わせた、最適と思われる長期的な研究開発の推進計画を提案できる点にある(図2)。

図2

図2 複数の支援タイプを組み合わせた課題の設定例

大学等と企業のマッチングの段階から、企業との共同研究開発、大学発ベンチャー創出に至るまでのさまざまなフェーズに対応しており、どのフェーズからも研究を開始でき、また、事業化のめどが立った等の理由で独自開発に取り組む場合には、どのフェーズで終了することもできるほか、本格的な研究開発に移行する前のフィージビリティースタディー(最長1年間、上限1,000万円程度の規模を予定)も可能である。

研究開発リスクが高い研究開発の初期フェーズにおいてはグラントの資金を活用し、研究開発の進捗に従い技術の実現性が高まるにつれ、マッチングファンドや実施料納付、返済といった研究開発リスクの漸減に応じたふさわしい支援タイプを活用した提案を期待している。

戦略的イノベーション創出推進事業

JSTは、国の戦略目標に沿った基礎研究を重点的に支援する「戦略的創造研究推進事業」を実施している。この事業により、大学等研究機関で多くの進歩的、創造的な研究が展開され、今後の発展が期待される研究成果が数多く得られている。戦略的イノベーション創出推進事業は、これらの成果の中から技術の重要性、イノベーション創出の可能性等の視点から重点的に推進すべき技術テーマを設定し、これに沿った研究課題を公募するものである。応募者は、産学官の研究者から構成される研究チームを想定しており、技術テーマごとに複数研究チームを採択することでコンソーシアムを形成し、コンソーシアム内での相互協力の下、研究開発を一体的に長期一貫して進めることにより、産業創出の礎となる技術の確立を目指すものである。

若手研究者ベンチャー創出推進事業

本事業の目的は、大学発ベンチャーを起業する意欲のある若手研究者による研究開発を支援することで、研究者からアントレプレナーへのキャリアパス形成を促進することにある。研究開発の実施にあたっては、大学等が設置しているベンチャービジネスラボラトリー(VBL)の教育、人材育成、研究開発推進機能の活用を前提としている。このため、VBL、あるいはこれと同等の機能を有する機関と、アントレプレナーを目指す若手研究者との連名による応募を条件としており、若手研究者は採択後VBL等に所属し、その教育や支援を受けつつ、ベンチャー創出に向けた研究開発を推進することを想定している。支援期間は最長3年で、若手研究者自身の人件費、研究開発費等を支援する。

おわりに

ここで紹介した3つの新規事業については、できる限り速やかに、大学や公的研究機関、企業の方々に向けて、その詳細内容をお知らせできるよう準備を進めているところである。公募開始は、平成21年4、5月ごろを予定している。

*1
支援のタイプによって金額、期間の上限は異なり、総額2,000万円で最長2年程度のグラントタイプから、総額20億円で最長7年程度の返済タイプまで幅広く取りそろえ、研究開発の出口に近いタイプほど、高額、長期間をカバーすることを想定している。