2009年2月号
編集後記

産学連携は一般に「大学などのシーズと企業のニーズの結合」といわれる。しかし、理屈通りの結合は簡単でなく、特に中小企業の産学連携が難しい。そこで逆転の発想「大学などのニーズと企業のシーズの結合」で連携を推進しようという動きが広がり始めた。代表例が信州大学繊維学部(長野県上田市)内の連携組織「ARECプラザ」。150社以上の地元企業が参加し、成果も出始めている。研究成果を実用化するため企業にある技術シーズを求めるということで、大学側の主体性の発揮でもある。連携促進の起爆剤として、大いに注目されるところだ。

(編集委員・鈴木 博人)

企業で新しい研究を開始するとき、研究中に不足技術が明らかになったとき、外部技術の導入が時間的に有利な場合が多い。かつて旭化成では、エクスターナル テクノロジー室なるものを本社に置いて、導入業務を行った。世界でベストの技術を探すと、海外の技術になることが過半を占める。世界の研究者・研究費の分布を考えると当然かもしれない。海外の大学の先生とコンタクトを始めてみると、しばしば先生は大学発ベンチャーをつくっており、契約は大学発ベンチャーとする場合が多かった。大学発ベンチャーで実用化を想定して技術をつくり上げたものは企業にとって役立つ場合が多い。少々、金額が高くても成功確率の高い技術の方が企業にとってありがたいのではないだろうか。

(編集委員・府川 伊三郎)

革新的技術の事業化は文字通り、すぐれて経営の問題である。特集でリポートしたシャープのテレビの場合、1998年夏、町田勝彦社長(現会長)が「2005年までに液晶に置き換える」と宣言。社内もメディアも「夢物語」と揶揄するなかでのスタートだった。テレビは家電の華だが、同社は自前のブラウン管を持たず、しかも業界の下位でブランド力も弱い。そこでオンリーワンを目指した。町田氏は9年間社長として液晶などに経営資源を集中させ、業界地図を塗り替えた。シャープだけではない。ソニーの日本初のトランジスタラジオも類似の例だ。トランジスタ技術を学んだ米国技術者の「ラジオには無理」との忠告を受け入れず、当時の井深大社長が開発に打ち込んだ。夢のある経営者と巡り合えるかどうかも、独創的技術の命運を左右する。

(編集長・登坂 和洋)