2009年3月号
特集  - 農の力 食の夢
霧島工業クラブ
異業種連携でワインづくり、人材育成
顔写真

朝倉 脩二 Profile
(あさくら・しゅうじ)

社団法人霧島工業クラブ
専務理事


宮崎県都城市とその周辺の企業22社で構成する異業種交流グループ「霧島工業クラブ」は、地元の都城工業高等専門学校、市、県の公設試験研究機関などと連携して、特産の農産物を利用した製品開発や農業技術の向上などに取り組んでいる。ラッキョウの自動切断機開発や木造畜舎のプレハブ化、新品種のブドウを使ったワインづくりなどだ。

霧島工業クラブの概要

社団法人霧島工業クラブは平成4年11月に設立、宮崎県都城市周辺の製造業を中心に建設業やIT関連企業など幅広い業種の22社で構成する異業種交流グループである。特別会員として都城工業高等専門学校(都城高専)や都城市をはじめ国・県の公設試験研究機関、支援団体なども加わって産学官のネットワークを実現している。特に都城高専とは設立以来交流を深め、共同研究や各種プロジェクトを推進してきた。

例会では外部講師による講演を取り入れたり、会員企業の見学会を行ったりすることで各企業の経営力向上に取り組んでいる。

都城市は人口17万人で宮崎県の西部に位置し農林畜産業が盛んである。特に牛・豚・鶏の飼育数はいずれも全国市町村別で1位の畜産王国である。市の製造品出荷額は2,924億円(平成18年度)と県内工業都市の延岡市を上回るが、産業分類別に見ると食料品・飲料・木材などの占める割合が大きく、農林業を基盤とした産業構造になっている。

そこで、平成14年から霧島工業クラブの活動方針に「農工連携による産業クラスターづくり」を加え、地場特産のラッキョウの自動切断機開発や木造畜舎のプレハブ化、ハイブリッド新品種のブドウを使ったワインづくりなどに取り組んできた。

また、平成18年度に中小企業庁より「高等専門学校等を利用した中小企業人材育成」の委託を受け「農商工連携をプロモートする技術者育成事業」をスタートした。さらに、会員企業の中からも農商工連携による事業を展開する事例も幾つかスタートしているので紹介したい。

都城ワイナリー

霧島工業クラブの例会終了後は、必ず懇親会を開き活発な意見交換を行っているが、その中から生まれたものが「ワインづくりプロジェクト」である。ある会員の「夢はワインをつくること」に賛同した会員有志により、平成16年に有限会社都城ワイナリーを設立し取り組んでいる。ワインは南九州でもつくられているが、高温多湿なのでブドウの栽培が難しい。病気や裂果などが起こりやすいからである。

そこで志村葡萄研究所の開発した、山ブドウと欧州品種から生まれたハイブリッドの苗を日本で初めて植え、収穫したブドウ(写真1)で試験醸造したところ、かなり期待の持てるワインが製造できる確信を得ている。

栽培に当たって会員企業はもちろん都城市や宮崎大学、宮崎県総合農業試験場など文字通り産学官で取り組んでいる。これからも醸造設備の建設・醸造・販売など、まさに農商工連携して事業を進め、平成22年にワインの販売を開始することを目指している。

写真1

写真1 有限会社都城ワイナリーのハイブリッド新品種ブドウ(大和撫子)

人材育成事業

農商工連携して地域の産業力を向上するためには、農業・工業・商業それぞれの現場で働く中核的人材が、お互いの分野のことを学び、技術や知恵を出し合うことで創造的なものづくりにつなげることが重要である。

平成18~19年度は大学・高専、公設試験研究機関、民間企業から広く講師になってもらい実習を含めた講座を行った。平成20年度は原油価格高騰によってビニールハウス等の燃料費が上がり、農業現場から暖房効率を向上できないかとの要望が多く寄せられた。そこで人材育成事業のカリキュラムの中でビニールハウスにおける「断熱素材の検討」と「暖房機の廃熱回収」を取り上げ、実習を入れながら進めた。

写真2

        写真2 人材育成事業の講義の様子
             (都城高専にて)

受講者は科学的な課題解決の手法を体験し、特に身近な課題だったこともあって、今後も継続して人材育成の取り組みを希望する声が多かった(写真2)。

下森建装ウィンウェル事業部

霧島工業クラブの会員である株式会社下森建装は総合建設業を本業とするが、平成17年に農商工連携を目的としたウィンウェル事業部を発足させた。宮崎大学農学部と機能性物質に関する共同研究を行いながら、農業生産で生じる地域農産物の未利用部分から機能性成分を抽出し、原料素材とする事業を行っている。

写真3

       写真3 株式会社下森建装が
            取り組んでいるスイートピーリキュール

一例として宮崎県はスイートピーの出荷量が全国一であるが、出荷量と同量が廃棄されている。この地域資源であるスイートピーの未利用部分に存在しているポリフェノールなどの機能性成分を、低コスト・高品質で抽出・精製する技術を確立した。この素材を利用しスイートピーリキュール(写真3)の製品化を目指す計画は「宮崎産スイートピーの未利用部分を原料とした機能性製品の開発」として経済産業省の平成19~20年度地域資源活用型研究開発事業に採択されている。

そのほかにもサツマイモやツワブキの葉茎など、大量に廃棄されている農作物の未利用部分に機能性成分が含まれており今後の開発が期待される。

今後の展開

平成20年に農林水産省および経済産業省が行った農商工連携88選に、霧島工業クラブの「農商工連携による人材育成及び新産業クラスターづくり」が認定された。また、平成20年9月には同じく両省から「農商工等連携支援事業計画」の認定を受けた。今後も産学官連携して地域産業発展のため活動を続けたい。