2009年3月号
特集  - 農の力 食の夢
津山特産の農産物を原料に26の加工品
顔写真

坂本 定禧 Profile
(さかもと・さだとみ)

つやま新産業創出機構
産業活性化アドバイザー
農業担当)

顔写真

近藤 浩幸 Profile
(こんどう・ひろゆき)

つやま新産業創出機構
産業活性化アドバイザー
(マーケティング担当)

岡山県津山市は産学官連携により地域の農業および食品の新商品開発を支援している。その1つが自然薯を含む山芋の活用。これまでに地域の業者が山芋入りのお好み焼き粉など20を上回る商品をつくり「つやま夢みのり」ブランドで販売している。

はじめに

津山市は平成8年に半官半民の「つやま新産業開発推進機構(平成20年に「つやま新産業創出機構」と改称)」(以下、機構と略称)を設立し、産学官連携により当地域の産業を支援している。そのなかで、食品の新商品開発は平成11年7月から、農業支援は平成18年からそれぞれ取り組んでいる。

本稿では、自然薯(じねんじょ)を含む山芋の商品開発を例にしながら、当地域の産学官連携の実際とその評価(効果と課題)について紹介する。

産学官連携の契機とその実際

津山市は岡山県北東部に位置した人口約11万人の地方都市であり、基幹産業は農業と電子機器製造業等の内陸型工業である。当市には「日本さくら名所100選」の鶴山公園があり、シーズンには10万人の観光客が訪れている。

図1

    図1
         山芋(自然薯を含む)の商品化のフロー
         注) 人見哲子. 美作大学技術交流プラザ
         の展開と方向. 平成の大合併と地域社会
         再編・活性化—岡山県の事例.明文書房.
         2007. の図を基に筆者が加筆修正した。

農業では米を中心に酪農、特産物の山芋(自然薯を含む)、新高梨、ショウガ、ピオーネ、西条柿等がある。特に、自然薯は小面積(3ha)ながら県内では1番大きな産地となっている。

山芋の商品開発のきっかけは平成12年7月ごろ、当機構のアドバイザーからの「津山の特産の山芋を原料にした特産品(加工品)開発はできないか」という提案であった(図1)。当時、山芋、特に自然薯は贈答中心に販売されており、売り物にならないB級品は廃棄されていた。「B級品を何とか利用したい」というのは生産者の悩みでもあった。

この提案を受けて機構は、地元の美作大学、機構会員企業、生産者が参加した「美作大学技術交流プラザ」(事務局は機構)に検討を依頼し、山芋を原料にした新製品開発のプロジェクトが始まった。この検討には、フリーズドライ技術を持った企業、酒造業者、製麺業者が参加し、山芋の形を変えた(フリーズドライによる粉末化、液体窒素による急速冷凍技術、加工段階で発生する山芋の皮の再利用など)新たな商品開発について議論した。

そして、山芋の粉末加工を業者に依頼する一方、生産者からの原材料提供と各加工企業の技術を応用して、製麺業者、酒造業者等がそれぞれ特産品づくりを目指した。

まず、「山の芋入りお好み焼き粉」「津山らーめん」「冷凍すりおろし自然薯」「山の芋焼酎」等の試作品ができた。

商品化に当たっては、毎月開催の定例会での試作品のプレゼンテーション、参加者(大学、学生、消費者、会員企業、生産者)による試食と評価、その結果を基にした商品の改善、ネーミングの募集等が行われた。これらのなかで1番の苦労は「消費者ニーズのある味覚に近づける」ことと加工企業のモチベーションの維持であった。

写真1

        写真1
           「つやま夢みのり」ブランドの商品群

これらの開発商品は、つやま夢みのり認証制度*1による認証を得て販売を開始し、現在も販売されている(写真1)。

商品化の過程で産学官それぞれの果たした役割を整理すると、当機構が商品化に関係する開発企業、関連企業(製麺業、酒造業等)、生産者、大学等を一同に会して検討する機会をコーディネートした。また「美作大学技術交流プラザ」では、試作品の試食や学生の評価を受けるなど、これら商品の改善を具体的に検討した。さらに、この会は開発商品の検討だけでなく、行政の施策、補助金等の情報提供、バイヤーも交えた開発商品のプレゼンテーションによる販売チャネルの開拓等も行った。なお、この会は平成15年に「つやま夢みのりグループ」に改称し、現在も活動している。

生産面では、生産者の高齢化等で自然薯栽培のネックとなっていたパイプ栽培用土の粉砕処理を建設業者に委託して、栽培労力の省力化を図る農工連携にも取り組んでいる。

連携の効果と今後の課題

山芋関連の商品化をきっかけに、ほかの加工品開発にも取り組み、これまでに地元産トマトを活用したトマトゼリー、果樹リキュール等合わせて26商品(表1)が誕生。つやま夢みのりブランド(26商品)の出荷額も年間約7,500万円になっている(平成19年実績)。

このように当機構では、産学官民連携と農商工連携というスキームを早くから構築し、アイデアから素材提供、加工、販売チャネルの開拓までの一貫したサポートを実施してきた。その結果、特産物の生産拡大、加工企業の新商品開発と出荷額の増大等の効果が徐々に表れている。しかし、各商品の販売金額にはバラつきがあり、今後、これら開発商品のブラッシュアップによる販売量の拡大や「プロダクトアウトからマーケットイン」への変革が課題となっている。そのためには、地域の特徴を活かした商品のブランド化を一層進めると同時に、行政的・財政的支援も重要である。

表1 「つやま夢みのり」ブランドの商品一覧

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*1 :つやま夢みのり認証制度
売れる商品づくりのために、開発した商品を外部に委託した認証委員(マーケティング、ブランディング、バイヤーなど7人)によって、市場性など11項目について審査・認証する制度であり、認証された商品には「つやま夢みのりマーク」を添付している。認証期間は2年間で、その後は更新する。

●当機構の活動については、次を参照されたい。
・ 日本立地センター編集部. 地域の話題を訪ねて第4回[1]岡山県津山市. 産業立地. Vol.44, No.6, 2005, p.38-41.
・ 目瀬守男;富樫穎監修. 美作大学地域生活科学研究所編. 平成の大合併と地域社会の再編・活性化-岡山県の事例. 東京, 明文書房, 2007, p.151-158.
・ 目瀬守男;富樫穎監修. 美作大学地域生活科学研究所編. 平成の大合併と地域社会の再編・活性化-岡山県の事例. 美作大学技術交流プラザ(食品グループ)の展開と方向. 東京, 明文書房, 2007, p.159-162.
・ 近藤浩幸. 岡山県津山市における食料産業クラスター形成について. 食料産業クラスター. 2008.
・ 社団法人食品需給研究センター. 津山の食料産業クラスター推進概況~つやま新産業開発推進機構の取組み. 食料産業クラスターの波動. 2008, p.41-43.
・ つやま新産業創出機構.“つやま新産業創出機構の概要”.(オンライン)入手先<http://www.t-shinsan.com/summary.html>,(参照 2009-02-02)